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アリアンロッド・トラスト第十二話「災厄の時」 今回予告 学友たちと力を合わせ、エルクレスト祭を見事盛り上げて見せたシャルリシア寮生達。さらに、彼らはそれだけでなく、エルクレスト・カレッジ学生の期待に応え、闘技場での特別パーティー戦に挑むことも了承して見せていた。この闘技大会も大喝采で終わらせることができれば、彼らのエルクレスト祭は全て大成功で成功すると言っていいだろう。 ……しかし、ダバランが伝えた、謎の「不安」について。それに近しい現象を彼らシャルリシア寮生達が実際に感じているのにもかかわらず、いまだそれに対する答えを誰も出せていない。 ……それは本当に気のせいだったのか?……本当に、陰で何かがうごめいていたりはしないのか? ……本当に、君達はそのままでいられるのだろうか? アリアンロッド・トラスト第十二話「災厄の時」 来るべき時が……君を待つ。 登場人物 ▼PC ミルカ・ハミルトン プリンセス・ミト クレハ レシィ・マナリス ジャック・アルマー ラピス・カルパンディエ ▼NPC ダバラン・テレミナス アルゼオ・ヴェルダース その他大勢 セッション内容 場所はエルクレスト・カレッジ学長室。そこの主であるエルヴィラは、アルゼオと会話をしていた。エルヴィラはそこでアルゼオに対し、「以前聞かされていたこと」についての報告を求めていたが、アルゼオは目を伏せつつ、特に進展できていない、と答える。どうやら、ダバランがそれに気づいたことに始まる、ダバランとシャルリシア寮生達にとっての「違和感」について(第十一話参照)のことを言っているようだ。 エルヴィラは憂いを帯びたものに表情を形作りつつ、ダバランとシャルリシア寮生にだけ感じられる「異端」は、自身らにとっても不安になるものだという。アルゼオはそれにうなずくも、現状では手だてはないとし、近日戻ってくるはずのエンザの報告も待ちたいという考えを述べ、エルヴィラもそれに頷き返した。 しかし、エルヴィラの表情はむしろ、さらに憂いを濃くしているかのようだ。そしてエルヴィラは、「なぜ子供たちだけに、このような運命を負ってもらわなければならないのだろう」という言葉を口にする。それを聞いたアルゼオは、それに対して深く考えていたかのように重みのある言葉で、アルヴィラの憂いを肯定しつつも、「エンザ先生の考えは正しかった」ということ、そして「いつかその時が来ても、彼らならきっと」と答える。その言葉に、エルヴィラは深くうなずき、自分も、少年少女の持つ意志の強さと可能性を信じたいと思っているというのだった。 アルゼオはエルヴィラとの会話を終えると部屋を出て行ったが、その先で「悪い予感……か」と独り言ちると、懐の中に忍ばせているらしい「何か」を手でまさぐってその存在を確認し、そして、何か覚悟を決めている表情で歩み去って行った。 一方。シャルリシア寮全体としてマクール祭予行となる闘技大会への出場を決めたジャックのところに、ナタフがやってきていた。ナタフは、ジャックにシャルリシア寮生達がこれからの闘技大会に出ることと、そのための仲間を寮外から募っていることをまず確認すると、続いて、エルクレスト祭でのシャルリシア寮生の活動が素晴らしい物であり、それを築き上げることに協力できたことを嬉しいと言った。 そして、ナタフはその闘技大会に、自分を仲間として加えてほしいとジャックへ告げた。どうやら、それを言いに来たようである。 ジャック達シャルリシア寮生に対して、もっと何かをしてあげたいという気持ち、そして、戦いならば得意分野であるというナタフの実力をむげにするつもりはジャックにはなかったようで、ジャックがそれを認めると、ナタフはわずかにだが嬉しそうな表情を浮かべ、恥じない戦いをして見せると宣言したのだった。 さらに、ナタフはその会話の後、何やら小さな包みのようなものを取り出して、それをジャックに受取ってほしいと手渡した。ジャックがその中身を確認すると、そこにあったのは小さな鍵であり、それが一体どこで使用する者であるのかジャックには見当もつかず、またナタフもそれには答えなかった。しかし、ナタフは「あなたたちが困った時に役に立つかもしれない」とだけ言い残し、また闘技場で、と去って行ってしまった。 かなり意味深な形で謎の鍵を手に入れたジャックではあったが、それについてはナタフの言葉をある程度素直に信頼することにしたらしく、鍵を懐にしまい、保管することにしたのだった。 その後、シャルリシア寮生一同のところにジャックが戻ると、一同はこれから始まる闘技大会において誰を誘うべきか、どのようなパーティーを組むべきかということに関してを議論し始めた。そしてそこに、扉からではなく壁の向こうから突如来訪者が現れる。ウィルテールと「赤い服の」マリーである。どうやら二人ともこれからシャルリシア寮生が特別ルールで闘技大会に出場することについては知っているらしく、ウィルテールはそれに関して興味津々と言った風で話しかけてきたが、一方「赤い服の」マリーはあまりいい気分ではないようだった。どうにも、闘技大会という必要もない戦いに一同(あるいはジャック)が赴くことについてあまり納得していないらしい。 そんなマリーに対し、ウィルテールは学生のみんながシャルリシア寮生の活躍を見たがっており、そんな人々に活力と喜びを与えられるのだから、意味がないということはないということを言う。それを聞いたマリーがジャックに、あなたもそういった戦いができることを楽しみにしているのだろうかと問いかけると、ジャックもまた、この闘技大会が無意味だとは思っていないという見解を示す。そこで、マリーも一応は納得したようだった。 そんなマリーの様子にうなずきつつ、ウィルテールはシャルリシア寮を応援していると上機嫌に語るのだったが、不意にレシィの傍へ近づくと、「こっそりと協力する」ということを持ちかける。レシィは何と答えたものかわからず少し引きつった笑みを浮かべ、マリーはそんなウィルテールの囁きを不審がっていたが、彼は素知らぬ顔で通していた。 そういった会話があった後、ウィルテールと「赤い服の」マリーは去って行ったのだったが、その時、シャルリシア寮生一同の視界の中、一つの窓に、謎の影が垣間見える。それは以前ダバランより報告を受け、彼らの周りにも現れていた謎の影と同一のものだと感じられたが、今回は一同の中でも比較的察知能力は低いと言えるジャックやラピス、ミルカといった面々にも確かに気付けるほどであり、どうやらレシィやクレハ、ミトがようやく気づけていた当初の状態に比べると、日増しに謎の影は存在感を増しているようだった。 一同全員が同様に気付いたその現象に対し、彼らは改めて意見を交わそうとするが、そこにさらなる来訪者が現れた。それは特別教導実践部の4名、チーフ、イッシー、フェイエン、エンジェである。 思わぬ揃っての来客である特別教導実践部を迎える一同。そして、チーフらはそれぞれ挨拶を述べた後、これからの闘技大会にシャルリシア寮生が出るというのは本当だったらしいということを確認する。 それに頷いた一同に対し、エルクレスト祭で高まった学生達の満足感をより高次なものとして終わらせるためにも、闘技大会は全力で戦い、しっかりと盛り上げていかなければならないということと、シャルリシア寮生達が他寮のメンバーを誘致して組むパーティー戦とは別に、彼ら特別教導実践部4名にもまた、パーティー戦での出場依頼(フェイエン曰く、特別教導実践部の活動はあまり表に出ていないため、この4人の実力を直接見たいという声が多かったらしい)があったため、残念ながらシャルリシア寮生達の戦いに手は貸せないということを彼らは言い、戦場は別なれど、共に力を尽くそうと最後にチーフが結ぶ。そんな特別教導実践部の気持ちを無碍にする理由もシャルリシア寮生達にはなく、むしろ他の学生たちのためにも、と同意するのであった。 だが、彼ら特別教導実践部の用件は、それだけではなかった。そのことを告げつつ、チーフがエンジェの方を見やると、エンジェは、自身の額に浮かぶ紋章……ドラゴネットのアンスロックである証を指しつつ、アンスロックは軽い予知能力のような力を持ち合わせた種族であること、そして、自身はセフィロスの加護のおかげか、アンスロックの中でもそういった力がより強いらしく、人に迫る凶兆を敏感に感じ取れるようなのだということを一同へ伝えた。 そして、エンジェはその自分の能力が、シャルリシア寮生達の将来に、何らかの危機が迫っていることを感じているのだと告白する。エンジェはそれがいったい何なのか、そして何が原因であるのかは知りうることはない。だが、この学園においての仲間であり、また、多くの学生や人を救って希望となっているシャルリシア寮生達に本当に危機が迫っているということがあるならば、それを放任することは自分たちの使命ではないとエンジェは語り、チーフはそれを肯定して、特別教導実践部はシャルリシア寮生達に対する救助や援助を惜しまないという考えをあらわにする。 そして、チーフ達はシャルリシア寮生達に対し、エンジェが感じたという「凶兆」にあたるようなことは最近ないだろうかと確認しようとする。その意向を受けたミルカ達は、今自分たちだけが感じられているという謎の「影」の存在を、包み隠さず語ることとしたのであった。 しかし、もともとその結果自体はシャルリシア寮生各人にとっても十分に予想しえたことではあるが、彼らにだけ見える影、という現状に関して、特別教導実践部の4人が特別な解決方法を持ち得ることはやはりなかった(見られている当人達にしか気づかれえないほど巧妙に、何かがシャルリシア寮生達を監視しているのではないかという説もあがったが、特別教導実践部が入室してくる直前に、部屋の窓に見えたにもかかわらずその傍を通ってきた彼ら4人が全くその存在に気づいていないことから、その可能性は極めて低いなどは判断されたが)。イッシーをはじめ、危機の予兆らしきものを確かに感じておきながらどうにもならない状況に憤る一同だったが、それでも、シャルリシア寮生がそのように証言するのであれば、確かにそういった現象はあるに違いないと、特別教導実践部はそれを信じて警戒し、いざ何かあった時には、最善を尽くすとシャルリシア寮生達へ約束する。その申し出を快く受けつつ、最後にもう一度、まずはこの後の闘技大会で互いに全力を尽くそうと言う形で、特別教導実践部は去って行ったのだった。 これで訪問客は終わりかと思われ、闘技大会開催への時間も迫る中、自分達と共にパーティーを組んでくれる友人たちとの作戦もほぼ決定してきたところである。そこに、最後の訪問者がやってきた。アルゼオである。しかし、彼には珍しいことにアルゼオは多少あわただしい様子であり、そんな彼を迎えたシャルリシア寮生達も、何があったのかと思わずにはいられない。そんな一同が6人全員そろっていることをアルゼオは確認すると、闘技大会まで時間がない事は承知しているが、すぐに自分についてきてほしい、とアルゼオは言った。そしてその理由は、ダバランがあるもの……まるで「入り口」のように見える「何か」を発見したからだと。 その「入り口」は、やはりアルゼオには見えない物であったらしい。しかし、ダバランにそれが確認できているというならあるいは、シャルリシア寮生達にとっても同様ではないのか。アルゼオはそう考えて、その確認のためシャルリシア寮生を呼びに来たのである。想わぬ時にやってきた謎の影に対する新たな手がかりとなるかもしれないその現象を聞き、一同はアルゼオに意向を確認されるまでもなく、アルゼオの先導でダバランの元へ向かうことを決めたのだった。 アルゼオに案内されるまま、人気のないある校舎の一角にやってくると、そこにはダバランがいた。そして彼の横では、本来校舎の壁であるはずの場所に、まるでちょうど切り取られているかのような穴が開いており、それをシャルリシア寮生の6人はそれぞれが見た。 ミルカ達シャルリシア寮生6人がやってきてくれたことにダバランは安堵したかのような声をあげる。もちろん、彼にもその穴は見えているに違いない。しかし、ダバランの元にやってきたアルゼオは、今ダバランやシャルリシア寮生の見えているものについてを確認する。やはり、アルゼオにはそれは見えない物のようだ。 先にその「穴」を発見したのは、アルゼオの言っていた通りダバランであったようだが、ダバランにとってもたまたまここを通りがかった時にこの穴……いや、「入り口」は現れていたとしか言えないということを彼は語り、また、根拠はなく、さすがに試してはいないが、自分ならそこに入っていけるような気がする、ということも加えた。そして不思議なことに、その見解はシャルリシア寮生それぞれのものとも一致するのである。 しかし、あまりに不可思議、かつ今までの一瞬の影や違和感といったものとは異なり、確かにそこに存在し続ける謎の現象に、さすがに自分の体を中に入れるといったことまでは行わなかったものの、一同は様々な検証を行い、例えば自分達(シャルリシア寮生+ダバラン)が投げたり魔術で転移させたりした物質はその穴の中へと消えていくのだが、その様はあくまでそれ以外の者(アルゼオ)から見ると壁の中に突然物が消えていくようにしか見えず、また半分だけ外に出す、というようなことをすると、まるで壁から半分だけ生えているかのように見えるというようなことを確かめる。 これらの検証は、この穴がどうやらシャルリシア寮生とダバラン、そして彼らが中に入れようと意図するものにとって、中と外の行き来が可能らしいことを裏付けるような結果をもたらしたわけであったが、それ以上のことを調べるにはあまりに不確定な要素が多いというダバランとアルゼオの見解には、一同も同意するところである。 アルゼオは、自身には見えていないながらも、確かにそこにあるという謎の怪異に対し、もはや今までシャルリシア寮生とダバランが感じていたものとはレベルを画するものとする明らかな「異質」と判断したようで、それまでの懸念や不安といった段階で片づけてよいものではないと語った。すなわち、これまでは自分とダバラン、そしてシャルリシア寮生というわずかな人員で調査を続けてきたわけであるが、もっと調査を大がかりにするべきなのだろう、と。 しかし、アルゼオはその考え……自分たち以外のものにも大々的に危機を呼びかけ調査してもらうということ自体が、なんら意味をなさないことに終わる可能性も高いことは理解していた。そもそも、自分やミルカ、ダバランといった魔術要素の察知能力がある程度は高いと言える人間であってもそういった要素を感じ取ることはできないのであり、であればシャルリシア寮生とダバラン以外の誰がどのようにして、この「入り口」に気づくことができるのかと。 それらのことから、一応教師と言った人員に動いてもらうことにはしつつも、結局最後には、そもそもシャルリシア寮生とダバランにしか解決し得ない問題であることである可能性を、アルゼオはむしろ濃厚に感じていたらしい。彼はそのことを語りつつ、ゆえに、と続ける。 シャルリシア寮生達には、今は闘技大会の方に戻ってほしい、と。現時点でうつべき有効な手立ては発見できず、また、闘技大会にシャルリシア寮生が参加することを学生たちは楽しみにしている。 ……これから何があるかわからないなら、せめて、エルクレスト祭を、みんなにとっていいものとして締めくくる手伝いをしてもらいたい、アルゼオは、そう考えていた。 そのアルゼオの……あるいは学生たちの願いに対し、それを成就させることを決めていたシャルリシア寮生達は、アルゼオの言葉通り、今は闘技大会に戻り、ひとまずはそのイベントを終わらせること決意する。そんなシャルリシア寮生達に感謝しているかのような安堵の表情を向けつつ、アルゼオは、自分とダバランはここで、その「入り口」に対して何をしていくべきかをより深く考えるという方針を伝える。 そして、闘技大会の参加へ向かうシャルリシア寮生達に対して、今度はダバランが言葉を投げかけた。それは、先ほどのアルゼオの懸念通り、最終的には自分たちの誰か、あるいは全員が「入り口」の中へと入っていくしかないかもしれないということについてであり、そのことを考えれば、闘技大会においては可能であれば、その後にまで引きずることのあるような無茶な戦いはなるべくしないべきなのではないかということだった。 それで闘技大会に用意された相手を破っていかなければならないのは大変なことではあるかもしれないが、ダバランはきっと、シャルリシア寮生達にはそれだけの力はあるはずだという見解を語る。そんなシャルリシア寮生達の持つ力についてを口にした彼は、なぜか少し物悲しそうであった。 続いてアルゼオは、教師や自分を含めた「他人」にあまり期待はできそうにないとはいえ、エンザ先生は、シャルリシア寮生達が感じている怪異について何かを調べに行ったらしく、エンザが戻ってきた際の報告如何では、すぐに動いてもらうようなことも十分ありうるとして、ダバランの言葉を補足する形で支持する。そして最後に、シャルリシア寮生やダバランの力になるといっておきながらも、実質的に何もできていないことをアルゼオは詫びつつ、しかし、今は真に、シャルリシア寮生達の力がこの学園に必要とされているのかもしれない、と語った。 そんな申し訳なさそうなアルゼオに、そんなことはない、と答えつつも、シャルリシア寮の6人はまずエルクレスト祭を最高の形で終わらせるため、闘技大会にと改めて向かっていったのだった。 そして迎えたマクール祭予行、闘技大会。事前に生徒達からの要望をのんでいたことにより、シャルリシア寮生は3チームに分かれ、シャルリシア寮生2人に、他寮からの任意の協力者3名を加えた5名パーティーを結成して戦闘に赴くことが求められていた。 シャルリシア寮生内での相談の結果、そのパーティーは ミルカ、クレハ、ガイブ、サイオウ、部長 ジャック、ラピス、ドゥーラ、シズナ、マゼット ミト、レシィ、ナタフ、セイ、ハルー(メギアム) といった形で結成されることになったのである。彼らに相対するために用意された敵の豊富さはもはや不可思議なほどのバリエーションではあったが、シャルリシア寮生にその能力を見込まれた学生達の実力もさることながら、的確な戦略とチームワークで彼らは次々と対戦相手を下し、ダバランに言われていた通り、余力を十分に残しつつも大会を大喝采で終わらせることに成功したのである。 戦闘終わり、同じチームで戦ったジャックとラピスは同室で一息ついていたが、そこへ、同じ戦闘を乗り越えたチームメイトであった、シズナがやってきた。何の用事だろうかとシズナを迎えた二人に対し、シズナは突然、聞きたいことがあるのだ、と言葉を発した。 「あなたは、人の子の平穏のためにその身をささげる覚悟があるか」 と。 それに対し、ラピスはすぐにうなずいた。自身の存在が軽いものとしか思えない彼女にとって、そう答えることに、特別な覚悟は必要としていないようであった。 しかし、シズナはそれを聞いても、どこか怪訝そうな表情をしている。そして最終的には、ラピスのその考えがまだ不十分であるかのようなことを言った。すなわち、自分の存在だけでなく、自身にかかわるものを全て捨てることでこそ、真の献身は達成できるものであると。 一方、ジャックはラピスのようにその問いかけをすぐ肯定することはなかったが、状況によってである、というような答え方をする。そして、シズナはそれに対しても不満そうであり、かつてのジャックならば、もっと気高い答えを出せたはずだが、シャルリシア寮での日々が、そのジャックの心を変えてしまった。そのようなことを言いだす。 なぜそのような言葉を投げかけてくるのか、二人にはまるで理解することはできず、それゆえかそれに対する答えを確かに返せないままに、シズナはその場を去ろうとしてしまう。そこに、後の試合を終わらせてきたナタフが、どうやらジャック達へ終了の報告をするためやってきたらしく入室してきたのだが、場に何やら重い空気が流れていたことと、そこにシズナがいたことで、その動きを止めた。 やってきたナタフを見たシズナは、そこで事情を説明するようなことはしなかったが、闘技大会で「本気」を出そうとしていたというナタフに対して後で聞きたいことがあるとだけいい、今度こそ部屋を出て行った。そこに残ったナタフは、ジャックとラピスの二人に対して、シズナがどんなことを言っていたのかを聞き、二人がそれに答えると、いかにも何かの心当たりがある、というような反応をしたのだったが、シズナのその問いに何の意味があったのか、それについては何故か、語ることはできないという対度を貫いていた。 しかし、その一方で、ナタフは自分の考えとして、ジャックやラピス達がシャルリシア寮で日々を過ごし、人々を救ってきた今までの行動とその心は意味のあることであり、自分はそれを支持し、協力していきたいと考えている、ということも口にした。そしてシズナの後を追ってか去って行ったナタフのあと、二人は結局多くを知ることはできずながらも、それぞれの思惑を巡らせるのだった。 何にせよ、闘技大会は終了した。こなすべき試合をすべて、見事勝利で終わらせたシャルリシア寮生達は、今は全員が控室に集まっていた。……いや、シャルリシア寮生だけではない。その中には闘技大会でパーティーとして参加した生徒達も一緒であり、彼らは互いに健闘を讃えあっていたのだった。……しかし、そこにナタフとシズナの姿はなかった。 そんなところに突然、さらに何者かが訪れてくる。ダバランであった。彼らしかぬ大声でシャルリシア寮生達を呼ぶその様子は明らかに平常ではなく、まるで何か大きな事件が起こったと言わんばかりである。 そして、ダバランは言った。「アルゼオさんが、あの穴の中に引きずり込まれた」と。 それを聞くがいなや、ジャックは真っ先に動き出し、部屋を出て行ってしまう。例の「入り口」のところに向かっているに違いない。 先に行ってしまったジャックのことは気にかかったが、それをレシィが追いかけていき、残った4人はダバランから今の事態の詳細を聞く。 事態が事態なだけに手短にではあったが、ダバラン曰く、「入り口」が突然まばゆく光ったかと思うと、謎のモンスターが突如現れて、抵抗できぬ間にアルゼオを連れて入り口の中に戻っていってしまったのだという。 その入り口の中に何があるのか、それは結局、全く不確定のままである。しかし、ダナランにとってアルゼオは、道を示し、導いてくれたまさに恩人であるという。いや、学園の者は多かれ少なかれ、アルゼオには恩を受けており、敬愛すべき人物だと。 だからこそ、どれだけ危険でも見捨てるわけにはいかない。そして、危険があるかもしれないからこそ、備えを持たなければいけない。自分一人で戦う能力を持たないダバランは、だからこそまず、シャルリシア寮生を呼びにきたのである。 その事情を聞いた残りのシャルリシア寮生達4人は、ダバランの言う「危険」を恐れず、アルゼオを救出する決意を固めた。……それはきっと、この話を聞いていないはずのジャックとレシィも同じであっただろう。 だが、彼らシャルリシア寮生と共にいた者達もそれを聞いており、学内でも有名かつ功労者として知られるアルゼオの身に何かあったとなれば、無関係と言うわけではない。また、なにより彼らは、少しでもシャルリシア寮生達の助けになりたかったのだ。 だから、彼らはシャルリシア寮生達に対して、自分達もついていくと申し出た。だが、その入り口が恐らく見えないのである以上、彼らが共に来たとしても何もできないであろうことは、シャルリシア寮生一同にとって察することのできたことである。 しかし、あえてミルカは、彼らの同行の願いを受け入れることを決意していた。そのことに行為的な意味はないことになってしまうとしても、その気持ちを無碍にはできなかったからだろうか。 かくして、大所帯となりつつも一同は再度、入り口の前へ赴いた。 なんとかジャックをとどめていたレシィにダバラン達が追いつく形で合流し、そして一同は、その入り口の前に立つ。 だが、そのうちの大多数……即ちシャルリシア寮生とダバラン以外の者達にとっては、その場所は何もない、単なる壁としか見えていない。闘技場の控室の時点で、自分達には見えない可能性がある、ということは予め聞かされていた生徒達ではあったが、いざその現象を目の前にして困惑しない者はいなかった。だが、壁の中にまるでめり込むように(見えて)未知の世界へ向かおうとしているシャルリシア寮生達の姿を見て、彼らはそれが現実だと認めざるを得なかった。 シャルリシア寮生達の力になろうと思っていたものの、今そこで何もすることができない残酷な現実に打ちひしがれる学友たちに対し、シャルリシア寮生達は、自分達の帰るべき場所で待っていてほしい、と願いかけ、彼らは震えながらも、それを了承し、シャルリシア寮生達を送り出す決意をする。そして、ついに7人はアルゼオを救うべく、入り口の中へ入って行ったのだった。 その中は、あまりに不思議な空間だった。 まるで無尽に入り組んだ黒い壁。しかし、そこにはまるで模様のように、様々な光が走っている。 燃えるような赤、沈んだ青、明るい黄色、暖かなオレンジ、情を掻き立てるピンク。その他にも、様々だ。 しかし、その様相は迷路のようでありながら、なぜか一同は、進むべき道を知っているような気がした。そのことを不思議に思いつつも、他にあてもないためその通りに進んでいくと、その通路上で、まるで光の塊のような謎のモンスター一体と出くわした。ダバランはその姿を見て、とっさにアルゼオをさらっていたモンスターと同じものであることを見抜き、シャルリシア寮生達へ伝えたのであったが、それと同時に、モンスターはおそいかかってきた。そして、戦闘が始まる。 謎のモンスターは強力な連続攻撃、及び範囲攻撃の使い手であり、容赦なくシャルリシア寮生達を狙ってきていたが、もはや百戦錬磨といって過言ではないシャルリシア寮生達にとってはそこまでの苦とはならない相手であった。いつもの連携で相手を難なく打ち倒すと、そのモンスターはまるで壁の光りに吸い込まれるかのように掻き消えてしまう。 その戦いの中で、シャルリシア寮生達の戦闘力を仲間と言う立場で間近に見たダバランは、そのあまりのレベルの高さに驚愕している。彼は、謎の空間での謎の存在との交戦になっても、シャルリシア寮生達の力は通用する相手であるらしいことに安堵しつつも、改めてシャルリシア寮生達の力を讃え、今はその力に頼らせてほしいと願うのだった。……その表情は憧れを持っているかのようなものだった。 さらに先に進むと、ダバランが突然、一同に止まるよう指示する。フォーキャスターとして優れた察知能力を持つダバランが、いち早くその先の異変を感付いたようだった。 壁に身を隠すようにしつつ、ダバランは通路の先の広間を除く。そこには、何やらまるで魔力でできた檻のようなものが宙に浮いており、そしてその中に、確かにアルゼオはいた。そしてその周りには、先ほど見たモンスターと似ている存在が3体。まるで、檻を警護しているようだった。 だが、囚われているアルゼオを含め、その広間にいる者達はまだシャルリシア寮生達には気づいていないようだ。相手の目的は全くわからないが、気づかれれば戦闘が起こるであろうことは想像に難くない。 しかし、その広間にはどうやら、裏手より回る道があるようだ。そちらにも人員を送り、挟み撃ちの形で奇襲すれば有利な展開になるかもしれないということをダバランは提案し、一同はそれを受け入れる。そして、合図を送るダバランはその場に残し、一同の中では次いで高い察知能力を持つクレハとレシィが、見事気づかれることなく裏手へと回った。 作戦通りの位置へクレハとレシィがついたのを見て、ダバランは合図を送る。そして、一同は勢いよく飛び出し、先手を打たんと駆け寄ろうとする。 そして、それにより牢の中にいるアルゼオの視界に、一同の姿が初めて映ったらしい。特に音や視界を遮断する機能は牢には無いようで、その瞬間、アルゼオは大声で、あることを叫ぼうとしていた。 ……時をさかのぼり、それは、シャルリシア寮生達が闘技大会に参加していた時のこと。 ダバランは例の「入り口」を見張っており、アルゼオもそれに付き添っている。しかし依然として何か変わったことがあった訳でもなく、闘技大会も終わろうとする時間になっていた。 エンザはまだ戻ってこないようではあるが、ひとまずはシャルリシア寮生を迎えに行こうというアルゼオ。ダバランはそれに同意しつつも、ところで、とアルゼオにある質問を投げかけた。 「アルゼオさんは、何を知っているのか」と。 唐突な形の質問ではあったが、ダバランは言葉を続け、あの夜、初めてダバランとシャルリシア寮生にだけ見える「何か」があることが確認できた時、アルゼオは普段の様子からは考えられないほどに明らかに驚愕していたとダバランは指摘した。その時から、アルゼオはダバランとシャルリシア寮生達、計7人の間に何かがあることを知っているのではないかと、ダバランは考えていたようだ。 ダバランがそういう根拠はそれだけではない。かつて、シャルリシア寮ができる少し前のこと、アルゼオが……エンザが、そしてあるいは少なくともアルヴィラ学長が、ダバランへ新しくできる寮、シャルリシア寮のプリフェクトをやってもらえないかという頼みを持ちかけて来たことがあるという事実をダバランは思い返し、つまり、アルヴィラやアルゼオは何らかの理由で、自分と現シャルリシア寮生の合わせて7人を、シャルリシア寮というひとところに集めようとしていたのだと推測をたてる。それらのことが、アルゼオは何かを知っていながら、自分達へ話していないことがあるということを、もはや確信させていた。 だが、一方でダバランは、アルゼオが何か隠しているらしいことについて、別に憤りなどは感じていない、という。何故なら、自分にとってアルゼオは心の底より信頼できる人間であり、もし本当に語っていないことがあったとしても、相応の理由があると感じているからと。 しかし、このように実際、明らかに何らかの怪異が迫っている状況に置いては、もはや自分達が「それ」を知らずにいることが最善の策ではないと判断せざるを得なかったのだ。 ダバランの核心をついたというべき質問に、アルゼオは少し目を伏せ、わずかに沈黙するも、改めて口を開いたときは、ダバランのその懸念……アルゼオがダバランとシャルリシア寮生達について、彼ら自身ですら知らない何かを知っているということを、肯定した。 アルゼオは、確かに、自分はあることについてを聞かされている、と語る。そして、生徒という立場の者でそのことを知っているのは、自分だけであるとも。……その理由をアルゼオは、エンザ達が自分の事を、ダバランやシャルリシア寮生達を「見守る」のにふさわしい人物と考えてくれたからだと語った。 そしてアルゼオはさらに続ける。自分や先生たちがダバランとシャルリシア寮生達へそれを語れなかったのは、「そのこと」による大きな影響を恐れていたからだと。 ダバランとシャルリシア寮生達が不用意に「そのこと」を知れば、あるいは不特定多数の人間が「そのこと」を知ってしまえば、シャルリシア寮生達とダバランの健全な成長を、そして人生を妨げる可能性があった。……「可能性」というのも、「そのこと」について本当に詳しく知るものは、少なくとも今この地上にはいないからゆえの不確定なものであるともアルゼオはいい、だから、自分達はあえてそれを口にはしなかった。 しかし、ダバランがそこまで気づいていたことも含め、このような状況になってまで、それを秘匿し続ける必要は、確かにもうないのかもしれないと、アルゼオは答えた。 今のシャルリシア寮生達は、寮の開設以来多くの困難を乗り越え、その結果多くの信頼し、信頼してもらえる仲間を手に入れることができたはず。その、今なら、と。 ……もうすぐにエンザも戻ってくるはず。この問題については、エンザから語る責任のあることのはずであるとアルゼオはいい、自分もその場に居合わせ、ダバランたちの納得の済むまで説明をしようと考えていることをアルゼオは伝える。 だが、その時、ダバランとシャルリシア寮生達には、……そしてその7人を信じる人々には、真の試練が待ち受けることになるのかもしれない。 アルゼオは確認する、お前に、その覚悟はあるか、と。 ダバランは少しの静寂の後、頷いた。今の自分は、エルクレスト・カレッジから、シャルリシア寮生達から、強さを教えてもらったから、と。 その答えを聞き、アルゼオはきっと、シャルリシア寮生達も同じように、恐れることはないだろうと感じ、少しだけ、柔和な表情を見せた。 ……そこで、ダバランはなぜか、もう一度アルゼオに語りかけた。 それは、さきほどアルゼオが言った、「そのこと」について詳しく知るものは今この地上にいない、ということについて。 それについて、アルゼオが何か補足をしようと思ったのか、答えかけたところで、ダバランは突如、「それは間違いです」と言った。なぜなら。 すでに、知ってしまった者はこの地上に、今いるのだから。 その言葉を聞いた瞬間、アルゼオは何かを感付いたようだった。咄嗟にダバランより距離を取ろうとしたようだが、ダバランは恐るべき速度と力でそのアルゼオを抑え込んでしまう。 ダバランは、かねてから自分でも口にしていたように、決して力はない。魔力も腕力も敏捷性も戦闘で才覚を見出しうるほどのものではないのだ。だが、今のその速度と力は、どう考えてもすでに学生レベルではない。それどころか、もはや人間離れしていると言っても過言ではないだろう。 ダバランに拘束されつつ、「まさか、屈したのか」とアルゼオはダバランに呼びかけた。それに対し、ダバランは笑みを浮かべつつ、屈した、という言葉に対して、確かに、抗っていた時期もあった、と、まるで何も知らない少年時代を思い返すかのような言葉で答える。 ダバランは言う。自分は抗い続けていた。しかし、「彼ら」の策略はとても巧妙であった。 ダバランの深層心理の世界へ住み込んだという「彼ら」は、表で日常生活を営むダバランへその記憶を残させることなく、まるで悪夢のように、日に日に、ダバランの持つある「欲求」を刺激し続けていた。 ……それは、「力が欲しい」という気持ち。彼がかつて生まれた村で、戦いの力を増幅させた種族……ドラゴネットのメディオンでありながら、自身の力のなさのせいで、戦士として成長することすら認められなかったこと。そして、そのためにやってきたはずのこのエルクレスト・カレッジでも、それをあきらめざるを得なかったことから、ずっと、消せずに彼の中にあった気持ちである。 そして、今の自分はついに目覚めた、とダバランは語る。自分は真に選ばれた存在であったと。 アルゼオが、何者かによる「策略」がすでにダバランを蝕んでいたという事実に愕然とする中、ダバランは安心しろとでもいうかのように、余裕を持った笑みであることを続けて語った。 まず、シャルリシア寮生達には、かつての自分へのような策略は仕掛けられていないということ。そして、今の自分には例えば、これ以上の危害をアルゼオへ加えるつもりもなければ、この学園や、あるいは世界を乱そうというような気持ちもないということを。 しかし、証明はしなければならない、とダバランは宣言する。それは 力も魔力も技もないと言われていた自分が、真に選ばれるべき存在であったことにより、得た力が、それにすがらない才能ある人々…… すなわち、シャルリシア寮生達の力を束にしたとして、絶対的なものであることを。 ダバランは、シャルリシア寮生達の強さに、ずっと憧れつづけ、内心嫉妬し続けていたのだ。 そんなダバランを正気に戻そうと、アルゼオは懸命に呼びかけたが、ダバランはそれに構うことなく、危害は加えないが、シャルリシア寮生を呼び出すため利用はさせてもらうと、いかなる手段でかアルゼオを「入り口」の中へとふき飛ばした。 後に残ったダバランの、自分が強者になったことに対する空しい高笑いを聞くものは、誰もいなかった。 --時戻り。 シャルリシア寮生とダバランの姿を見つけたアルゼオは大声でダバランの名を叫び、「やめろ」と訴えかける。 しかし、そんな訴えをあざ笑うかのように、不意を打たれたはずの敵モンスター達は、むしろシャルリシア寮生達が出てきた瞬間に、間髪入れず攻撃を叩きこんできた。……奇襲されたのは、シャルリシア寮生の方だったのだ。 気づけば、敵の攻撃が飛んできた瞬間、ダバランはいなくなっている。幸い敵の攻撃自体は先の者達どうようそこまで苛烈でもなく、ミトの立ち回りもあって比較的軽症ですませることができたが、全ての攻撃を耐えしのいだ後、場に笑い声がこだました、ダバランのものだ。 もう一度姿を現した彼は、攻撃をしてきたモンスター達の中心に立っていた。その両手には、謎の長剣が左右それぞれ一本ずつ。 手荒い歓迎をしてすまなかったな、とまずダバランはいいながら、まるで闘気を凝縮させるかのような構えを取り、その動きの鋭さを大きく増す。 ダバランの裏切りに戸惑うシャルリシア寮生達に対し、ダバランは、ミト、ジャック、そしてミルカへと続けて語る。 かつて、自分がその3名に言葉を求めたこと。それは、自分の中にある禍々しいものを、鎮めようとしたから。 だが、それに至ることはなかった。なぜなら、どのようなことを言っても、実際に力のある彼らの言葉が、自分を救うことはないからだ。 自分を真に救うものは、自分が求めてやまなかったものに他ならない。 それはすなわち力だけなのだ、と宣言したダバランの周囲に、尋常ならざる闘気が吹き荒れる。明らかに、さっきまでシャルリシア寮生達の隣にいたダバランと同じものではない。すでに、人知を超えた力であることを、いやがおうにも予感させる。 その闘気に思わず身構える一同に対し、ダバランは何も知らないまま、そして、自身の「いたずら心」のせいとはいえ傷ついた状態にあるシャルリシア寮生達を蹂躙するのは自分の目的に反する、といいつつ、一同へあえて回復や散会の時間を与えつつ、いくつかのことをさらに語り始めた。 まず、アルゼオをさらったのは自分であり、目的は、シャルリシア寮生達をここへおびき出すためであったこと。しかし、そうでありながら今自分たちのいるこの空間自体はダバランによるものではなく、この空間もそして今までのあの「影」も、その「資格」を持つもの、この世界と異なるものの因子を持つ自分達だけに共通して示されているものであることを伝える。 そして、自分はシャルリシア寮生達に先んじてその「資格」を受け入れ、それによって力を手に入れた、とも。 ジャックやミトはダバランがかつて本当になりたかった存在、戦士としての優れた才能と能力を持つ者であり、ミルカはダバランの渇望した、敵を撃ち倒す魔術に天賦の才を持つ者であった。そしてそれだけではない。 クレハも、レシィも、ラピスも。シャルリシア寮生達6人は「運命の加護」を持って生れて来た。だから、「なりたい自分」へなっていく……生まれて、成長していくことができた。そして、ダバランにはそれができなかった。 だが、今はもう違う。自分は真に選ばれていたものであり、その戦闘力はシャルリシア寮生達のそれを遥かに凌駕すると断言する。 だから、もう憧れ渇望するのは自分の方ではない、今度はシャルリシア寮生達の方が、今の自分の力を渇望する番だと、ダバランは叫んだ。 そしてついに歩を前へ進めたダバランに対し、アルゼオは魔力の牢の中より、ミルカ、ミト、クレハ、レシィ、ジャック、ラピスの、全員の名を叫んだ。 何があっても、お前たちだけは、堕ちてはいけない、と。それを信じさせてほしい。 そうでなければ、自分達がかけてきた、希望が、と。 そのアルゼオの言葉の意味を解する間もなく、不意にダバランの周りにいたはずのモンスター達の姿は消え、謎の像がダバランのはるか後方に現れる。 その像は、運命の力によって引き寄せられるもの……つまり奇跡を封じると、ダバランは言う。 奇跡などない。ただ絶対的な力の前に絶望しろという言葉と共に、ついにダバランの刃は振り下ろされ、戦いは、始まった。 今のダバランに彼の言葉通り、圧倒的な力があることを予見しつつも、その能力の分析が求められる。人から裏切られることについて心的な備えのできていなかったラピスは戸惑いつつも、仲間のためにとダバランの力を分析したが、ダバランは今の自分の力を隠すつもりはなかったようで、ラピスは容易にその実力を察することはできた。 しかし、その力はまさに絶望的なものであった。人間を越えた行動に加え、何より絶望的だったのは、その双剣による防御術と回避力だ。 学生レベルとはもはや言えないほどにまで成長したはずのシャルリシア寮生達ですら、今のダバランの技と動きには全くついていくことができない。それは、彼らのチームとしての全力や、ラピスによる大幅な技量強化を含めてもですら。 奇跡がなければ勝てない。一同はそう判断したようだ。だが、まず像の破壊を狙うことはダバランにとっても理解できていたことのようで、彼は戦闘が始まるや否や、ジャック、ミルカ、ミトの3名に対して、攻撃の際像ではなくダバランをほぼ強制的に攻撃することになる呪のようなものをかけた。これにより、ジャックとミルカの強大な破壊力を像へ向けることがほぼ不可能となる。 だが、その呪いが使えるのは3名に対してまでであり、ダバランはなぜかもう一人の攻撃役であるクレハをその呪いで指名しなかった。……おそらく、彼がジャック、ミト、ミルカの3名に特に憧れと嫉妬を持っていたからだろう。一同はそこで、戦闘の鍵をクレハのナイフへ託し、その攻撃が象を打ち壊してくれる事を信じると決めたようだった。 ゆえに、ダバランに圧倒的な回避力があることを知りつつ、ラピスはジャックの技へのフォローでなく、クレハとのコンボ攻撃へと向かうことを決めた。そしてまず動き出したのは圧倒的な行動力を持つダバランであり、一度の動きはクレハが止めるも、さらに間を入れぬ勢いで繰り出された連撃はさすがに止め切れず、絶対的な制度でミトやジャックを襲う。行動一回における打撃力は、耐えることすらできない、という水準でこそなかったものの、その確定力と行動回数は脅威であり、決して放置はできない。 像を壊すことを優先する作戦は必然的に長期戦だ。その間少しでも長く仲間のために立つ覚悟を決めつつ、まず、クレハの持つ精霊のナイフの真価を発揮させるための理力符を使用するため、一番最初に動こうとしたのはミトである。しかし、その瞬間、何かがミトへと語りかけてきていた。 いや、ミトにだけではなかった。そこにいたシャルリシア寮生達、6人全員へ、謎の声がささやきかける。 後になってわかることではあるが、それは、ダバランの深層心理に住みつき、彼を堕とした魔族の声だった。その魔族は、今の現状の絶望さ、そして6人それぞれの持ちえない能力を示し、無力さをあおったうえで、今のダバランのように、さらなる力を得ることへと6人それぞれの心理を誘導しようとしている。アルゼオは、そんな言葉から必死で、彼らを守ろうとするが、そこに飛ばせるのは言葉だけだ。 しかし、彼女達は、その誘惑に屈することはなかった。彼女達はアルゼオに叫びかけられるまでもなく、その誘惑が悪しき者からの誘導であることに気づいており、それに手を差し出すことこそ、真の敗北につながることをわかっていた。 ダバランに裏切られたことにより、ただでさえ最近かき乱されていた心がさらに摩耗させられたラピスは一度、思わずその力へ手を伸ばしてしまおうとするも、ラピスの力を今自分が求めていること、そして、それが意味のあることであるはずだと強く叫んだクレハにより踏みとどまり、彼女たちは全員魔の誘惑を跳ね除けていた。アルゼオは、シャルリシア寮生達が真に正しき信念を持てていたということに安堵し、感謝の言葉を6人それぞれへ送っている。 そんなシャルリシア寮生達の姿。彼らが一人、続いて一人と力への誘惑を跳ね除けるの姿を見るたび、ダバランは叫び、憤りをあらわにしていた。ダバランは、これだけの戦力差を見せつけられてもなお、自分と同じように「力」を求めない彼女たちの姿に対して怒っている。 しかし、それはつまり、かたくなに自分の心の強さを保持し続ける、あるいはダバランと違い、仲間の存在から最後の一歩を踏み止まった彼女たちの姿が、まるでダバランが弱かったと言っているように彼が思ったことによることであり、ダバランは言葉とは裏腹に、「心の強さ」を捨てきれていないことを露呈していたともいえる。 さらに、クレハの全力を発揮させるため、あえてラピスがジャックを強化しなかったことにより、ジャックの攻撃を届かせることは全くできなかったものの、一方ミルカの攻撃は彼らの持つ運命の力を結集することでダバランの驚異的な回避力をとらえることが可能なレベルとなっており、実際に、彼女の魔法は見事ダバランに命中し、痛烈なダメージを刻む。さすがに一撃で大きな損傷となるほどダバランの耐久力は低くはなかったが、ダバランは受けたダメージ以上に、奇跡を封じられてなお、自分に正面から攻撃を当てたことへの驚きを感じ、一瞬ではあるが動揺していた。 ラピスとのコンボ攻撃で放たれるクレハの連撃は、レシィやミトによる支援が集中したこともあり大きな威力となって像を襲う。しかし、それでも像はわずかにしか崩れない。そして、彼らがチームとしての結束力を最大限に発揮した動きを発揮しようとするも、それはダバランの行動によって封印されてしまう。 続いてダバランは再度圧倒的な攻撃を繰り返してくるも、レシィによって力を取り戻したクレハの妨害や、ミトの奮闘やジャックの耐久力、そしてレシィによる厚い防護が、何とか一同を全員倒れさせずに場を保つ。そして一同はクレハとミトによる、超人的な行動を人に可能にさせる秘儀となる踊りを用いてすら、像の破壊を目指すが、それでも像は壊れなかった。ミルカとジャックの攻撃も、ミルカの攻撃は再度命中し、もう一度ダバランを心身ともにゆるがせたものの、ジャックの攻撃はやはり、ダバランにはとどかなかった。 像に対する手ごたえはある。しかし、このままで本当に破壊することができるのか?……いや、たとえ破壊できたとして、結局は奇跡頼りとなるだけだ。 クレハの妨害術も、レシィの歌も、クレハとミトの秘儀の踊りも、すでに使い尽くした。この状態で、これからあと何度、ダバランの攻撃を耐えなければならず、また攻撃を当てていかなければいけないのだろう? シャルリシア寮生達にはまだ運命の力があったとはいえ、そういった不安、あるいは焦りが彼女たちの中にあったことに、間違いは無いはずだ。 しかし、それでも彼女たちは、一人も諦め、地に膝をつこうとはしなかった。ミトは満身創痍に近い身体にレシィの回復魔法を受けつつ、歯を食いしばって立ち上がり、レシィはそんなミトや仲間たちを全力でサポートする。クレハはただひたすらに像を壊すことに全能力を傾け、ラピスもそんなクレハの熱意を標にするかのように、コンボを狙う。ジャックはまるでかなわないはずの相手に対し、それでも目の前に立ちふさがって戦うことをあきらめず、そしてミルカは、ダバランに杖を向け、強く見据えていた。 誰も諦めていない。そして、先の力を再度望むようなものもいなかった。このまま戦って勝ち目があるというのは、まさに奇跡を望むという、傍目から見ても希望的な観測に過ぎない。それでも彼女たちは、今自分のできる全てを、やりきることを選択したのだ。 そんなシャルリシア寮生達の姿に、ダバランはまずます憤りを強めていった。いや、動揺を強めたと言ってもいいのだろう。 だが、それでもダバランの攻撃は休まらない。そんな彼女たちの想いを無残に粉砕することを、ダバランは望んだ。 ……しかし。 また少し時は戻り。「外」つまり学園内にある「入り口」の近くに、ある4人がやってきていた。 それは、特別教導実践部の4人である。彼らも闘技大会を終えたあと、シャルリシア寮生達を見送った者達から事情を聞き、いてもたってもいられずにやってきたのだ。 その「入り口」はシャルリシア寮生達以外には見えない、という情報ももちろん彼らは聞いていた。しかし、それでもただ待っているよりも、せめて一度現場を確認しようというつもりだったのだ。……だが。 イッシーの驚愕が通路にこだまする。なんと、彼らには「入り口」が見えていたのだ。シャルリシア寮生達やダバランと同じように。 4人全員にそれが見えていること、そして、その中に入っていけそうに思えることをチーフが確認すると、4人はその現象を不可思議に思いつつも、ある決断をしつつあった。すなわち、シャルリシア寮生達の後を追うことである。 何故他の誰にも見えなかったと言われているものが、自分達には見えるのかはわからない。そして、この入口が、はたしてどれほど危険な物かも。 だが、そのことはシャルリシア寮生達にとっても同じだったはず。アルゼオを助けるため、自分達にしかできないことならば、たとえ危険があるとしても向かっていくという勇気を、シャルリシア寮生達は示したはずだ。 そんなシャルリシア寮生達を、自分達も助けなければならない、とチーフは言った。イッシーも、フェイエンも、エンジェも、それに賛成する。 そして、チーフの号令の元、特別教導実践部は、その入り口の中へと駆け込んでいくのだった。 全力の行動をもってしても像を打ち壊せなかったシャルリシア寮生達に対し、ダバランは笑みを浮かべる心の余裕を取り戻していた。 こうして力の差を見せつけられ続ければ……一人、また一人と仲間が倒れて行けば。結局は自身の無力さを痛感し、最後には「自分と同じように」絶大な力へ手を伸ばすに違いない。 だから、自分とシャルリシア寮生達は一緒なのだ、とダバランは高笑いをあげた。……しかし、それはもはや、自分が強くなったことへの賛辞ではなく。 まるで、誘惑に屈した自分の弱さをごまかすかのような言葉だった。 そして、それに反論したのは……シャルリシア寮生ではない。 機械的ながらもよく通った、理性を感じられる声……チーフの言葉が、そのダバランの言葉を否定して見せる。 同時に、イッシー、フェイエン、エンジェの3名も続いて現れ、特別教導実践部は、シャルリシア寮生の救援に到着したのだった。 誰もが予想しなかった増援であったが、一番驚いていたのはダバランである。ダバランは驚きのまま、この世界には「異なる世界の因子」を持つ者にしか入ってこれないはずだということをもう一度口にしたが、チーフはそれに構うことはなく、今なぜダバランがシャルリシア寮生達に攻撃を加えていたのか、そしてなぜアルゼオは囚われているのかを聞き出そうとしたが、アルゼオがダバランは操られている状態にあると解説したことで、まずはダバランと戦うしかないことを説いた。 そして、今クレハ達が決死の思いで壊そうとしていた像に対して、特別教導実践部の4人でさらに攻撃してもらうことをアルゼオは提案し、さらに彼らの実力を見抜いていたアルゼオは、この4人なら像を破壊できるはずと言うのであった。 4人はアルゼオの提案を了承し、まずはダバランを倒すこと、そしてそのために、像を破壊することを引き受けた。 そしてダバランも、特別教導実践部の参戦の驚きから徐々に回復し、シャルリシア寮生達を圧倒する自分の力ならば、例え像を壊されたとしても運命力を持たない特別教導実践部の4人を相手にしたとして軽く打ち倒すことができると判断したようで、改めてすべてを打ち倒す決意を固める。そして、チーフの号令の元、特別教導実践部は動き出す。 彼らのチームとしての完成度はシャルリシア寮以上であり、すでに多くを消耗したシャルリシア寮生達に比べ、当然ながら切り札といえる技能の多くを残している。 そして、アルゼオの見こんだ通り、その実力も確かだ。まずチーフがすばやく魔導銃を抜き、像の構造上の弱点を突いた的確な射撃によって2連続で撃ち抜き、脆くさせたところを、イッシーが放つ、圧倒的な強靭さを誇る身体の、秘めたる力を爆発させるかの如くの3連撃が打ち据え、もはや悪魔的な威力を持って像を吹き飛ばしていく。クレハによって大きく崩されていた像には、この二人の追撃のみで十分であった。 そして像は破壊される。これで、この場には奇跡の可能性が残された。 しかし、それはダバランにとって、あくまで奇跡の介在する余地のない絶対的な実力を見せつけようとしていただけのことであって、そうなっても決して自分の不利とまで形成が傾くことはないという認識であり、特別教導実践部の参戦にいらだちこそすれ、それでも有利は確信していた。 実際、今までシャルリシア寮生が身を持って体験した今のダバランの能力を聞けば、特別教導実践部が加わったとはいえ有利とまでいくことはないだろう。だが、彼らもまた、ダバランに立ち向かうことをやめなかった。チーフは、力は意思を示すための絶対条件ではなく、ゆえに力及ばぬとしても、自分達は最後まで立ち上がり続けることを宣言した。他の3人も、同様だ。 シャルリシア寮生だけではない、この4人にもそういった姿を見せられたことで、ダバランはまたも怒りをあらわにする。 だが、黙れと言いつつ、彼の様子は先ほど以上に動揺を押し隠すかのようなものとなっている。そんな状態でひたすらに力の絶対性を唱え続ける彼の姿は、むしろ哀れにすら見えた。 そしてその瞬間、一同の脳裏に、突如ある光景が浮かび上がる。 ……それは、キャンプ実習の時。レイスがそれを追いかけたユエルと共に森の中へ消えてしまい、皆がそれを更に追いかけようとしていた時の事(第七話参照)。 ダバランはその時、一人で森に向かっていた。もちろん、目的はレイスとユエルの捜索である。 彼がそれをしていた時間はごくわずかで、もちろん、その間にレイス達を見つけることはできなかった。しかし、そこで彼はそもそも、なぜ自分が一人で探そうとしていたのかをふと考える。 自分一人に、危機的状況を打開するような力はない。もし本当に、レイスやユエルに何か危機があって戻ってこれないのだとすれば、むしろ自分という被害者を増やすだけになる可能性も十分にある。そもそも、自分能力は人を指揮することなのだ。ならば、捜索に向かうチームを指揮する役に回ったほうが、はるかに効率的だったはず。 それを内心わかっていながら、一人で出てきてしまった理由。それは、おそらくは嫉妬にあると、ダバランは自分で分析していた。 最近活躍目覚ましいシャルリシア寮生達が、自らの危険を顧みず彼女たちの窮地を救おうとしていたのに対して、自分にだってそういったことができるという安い対抗心のようなものが、自分の中にあったのだと。 それを自覚して、ダバランは己の愚かさをかみしめ、やりきれない感情は内にとどめつつも、今からでも戻ろうとした。しかしその時、木の陰から何者かの気配を感じ、ダバランはそれを見逃さなかった。 そして、木の陰から出て来たののは、異形の人型。ダバランは一目見てそれを魔族と判断し、自身の危機を感じる。 だが、ダバランを見るなり、魔族は突如叫んだ。間違いない、こいつはあの6人と同じく、「あの方」の依代だ、と。 自分の方も妨害されてしまい、全てがうまくいかぬところだったが、最後で運が向いてきたと笑う魔族に対し、ダバランは逃げる隙をうかがいつつも、会話を試みたが、魔族は今名乗る必要はない、と答える。 その次の瞬間、いずれわかることだという言葉と共に、魔族は一瞬でダバランの胸元まで手を伸ばした。ダバランはそれに反応しきれず、心臓の部分にその腕が触れることを許してしまう。 触れられただけであって、傷つけられたわけではない。しかし、ダバランの身体には大きな衝撃があった、まるで、自分の中にある何かが急激に巨大化したかのような。 そんなダバランの様子を見つつ、魔族はその行為によって何かに気づいたかのように、これは好都合、とまたにやりと笑う。 自分に何をしたのか、とダバランが問いかけるも、魔族は自分はダバランへ害を与えることはしておらず、むしろ救済を与えようとしているのだと言った。その言葉に疑問を持つダバランに、魔族は、ダバランのある深層欲求を自分が読んだことを伝える。それはすなわち、ダバランの力に対する欲求だ。 ダバラン自身に敵を撃ち倒せるような、一人で戦い抜くような力が備わっていないこと、そして、その自身にない能力へのあこがれを持ちながら、今も生き続けてしまっていること。そのことを魔族は指摘し、さらに、他者にすがる力しか持たない今のダバランのことなど、ダバランが仲間と思っている存在もちょっとしたきかっけで裏切りかねず、そしてその裏切りはたやすく「力のない者」ダバランを踏みにじることが可能だと笑うのだった。 冷静に考えれば……魔族がダバランの内面を知ったというのであればなおさら。それは魔族がダバランの奥底にある不安や心の問題を煽るために表現したことにすぎず、実際、ダバランはその段階では決して、その魔族の言うことに大きく取り乱すようなことはないようにしていた。 だが、一方で全く振り切ることもできなかった。魔族の言うことは、確かに自身の心の奥底で抱えていたことでもあったからだ。そんなダバランへ、魔族はさらに続ける。 だが安心しろ、お前は本当は、選ばれている。と。 今のダバランは、ダバラン自身が望んでいた才覚は得ることがなく生まれてしまった。それは事実だろう。しかし、本当は、ダバランは「あるもの」に魅入られた存在であり、それは全ての可能性を持つ資格であると魔族は言う。そして、そのための方法を、先ほどの行為によってダバランの中へ残したのだと。 その、ダバランに眠っているという、「大いなる存在」へとその望みを伝えれば、その存在は必ずやダバランの願いをかなえるだけの力を与えてくれる。それはまさに、今ダバランの中に憧れや嫉妬の象徴としてそびえる、シャルリシア寮の者達ですら、同じ「資格」をなしにはダバランにかなわなくなるほどに、と。 魔族は、如何なる手段によってか、ダバランの心の中をすべて覗いていたと言っていいようだ。その情報を元に、魔族はダバランの心の弱点とでもいうべき「力への憧れ」を武器にし、彼を追い詰めようとしている。 だが、ここでダバランは、明確にその策略を跳ね除けようとした。 確かに、今まで魔族の言ってきたことは、自分の中に存在する不安であり、弱さだ。それを指摘されて、自分にその気持ちがないとしらばっくれることはできない。 それでも、魔族は自分の心を覗いたかも知れないが、理解したわけではない。何故なら、今の自分にはアルゼオやマルティン、そして生徒や教師の皆がダバランへとかけてくれている信頼の重さを知らないから。 その重さを無視し、一方的にうすっぺらなものとして扱っている魔族の論調は、所詮魔族にとって都合のいい方向へ自分をコントロールするための方便にすぎないということをダバランは確信しており、そして明確に宣言した。 もし、自分の中に本来自分が望んでいたような力があったのだとしても、それを得ることがアルゼオたちからの信頼に背くようなことなら、自分は決してそれを得ようとは思わない。 かつて、自分がこの学園でも臨んだ能力を得ることができないことに絶望し、そしてそこを、アルゼオに救い上げてもらったこと。そして、アルゼオやマルティンたちの協力を受けて進み続けて来た日々が、自分は信じるものになると誓わせてくれた。それが、自分にあるべき本当の力だと。 このダバランの言葉は、本心である。その時、彼にはその言葉に殉ずるほどの覚悟があった。 しかし、それを聞いた魔族は、予想外にダバランの心の根が強いこと、そして頭脳が回ることに驚いたかのようではあったが、全く焦っているようなことはなかった。 なぜなら、魔族にとって、すでにダバランを陥落する方式は完成していたのだ。 死をも覚悟したダバランに対してそれはできないことだと否定した魔族は、だが、「話し合い」は続けようという。それが意味するのは。 ここで自分と出会ったこと、そしてその内容を、ダバランの深層心理の中に仕舞いこむことが、魔族には可能だという。そうすることで、今日のこのことを、表面上おっぼ得ていることはできなくなるというのだ。 しかし、それはすなわち、ダバランの中に常に今日の選択が、そして魔族が存在し、彼へ囁きかけていることに等しい。 今日は信頼の重さでそれを拒むことができたとしても、力への渇望というダバランの奥底に未だある感情を刺激され続ける以上、それは表面上ではダバランも気づかぬままにして、内面において常にダバランを蝕み続けるのだ。それはまるで、目が覚めれば記憶から消える悪夢のように。 内面世界で、常に魔族から監視され、そして魔族からささやかれる。その日々を過ごせば、ダバランはきっと「選ぶべき道」に自ら手を伸ばすことになると、魔族は確信していた。 その言葉へ反論しようとしたダバランの意識が、その後突如途絶えた。 ……そして、その後目を覚ましたダバランは、魔族の言葉通りその時のことは覚えておらず、ひとまず今自分がするべきこととして、キャンプ場の管理人への説明にへと走って行った。 だが、その中では、すでに魔族の策略は根付いてしまっているのだ。 それからダバランは、今日にいたるまで日々を過ごしてきた。 表面上は問題なく、皆から頼られるプリフェクトとして、振る舞い続けていた。 だが、その内では、彼自身がその変化の要因に気づけぬまま、自身の持つ力への渇望が強まっていく。 何故なら魔族は、内面の彼へと常に囁いていたからだ。 信じるという気持ちには疑惑を、そして、力への欲求にはその絶対性を-- ミトと話したとき……ダバランは、そのまっすぐな心に敬服したのだ。 例え一度大きくその道を変えても、今の自分が、確かに人々にとって必要な存在であり、そして自分が皆を守っていくのだということを、ミトは全く疑っていなかった。 だから自分も、そうであるべきだと感じた。ミトのように自分の前に示された道が、真に自分と周囲の人のためになることなのだと信じ、研鑽していこうと思えた。 ……そんなダバランの想いに、魔族は囁く。 あいつの言うことをなぜ信じられる?あれはただ、『神の意思』と名前を付ければすべてに納得ができる都合のいい頭をしているだけではないのか? それに、結局はあいつに、強敵を前にしても引かないだけの強力な防御能力があるからがゆえのいきがりではないのか?もしあいつにそれだけの能力がなく、お前のように打たれれば倒れるだけの存在だったなら、あのように堂々とはせず、怯えていたのではないか? うらやましいよなぁ。ダバラン。あいつのような敵を前に正面から立ち向かえる力が、もしお前にあいつのような力があれば、あいつのように堂々と、その力を信じて生きていけるだろうに。 ジャックと話したとき……ダバランは、彼の気高さに感心していた。 その気になれば多くのものをねじ伏せられるだろう圧倒的力を持ちながら……ジャックはそんな自身が認める相手を、力だけの相手ではないと言ってくれた。だからきっと、彼がアルゼオさんに示す敬意の姿も、真実なのだ、自分と同じように。 それなら、彼はきっと、自分の事も認めてくれるはずだ。自分に、真の志さえ備わるなら。 たとえ自分に力がなくとも、彼ほどの存在が私の力になってくれるというのなら……恐れることはない。 ……そんなダバランの想いに、魔族は囁く。 もしあいつがその気になったなら・・・いや、あいつだけではない、シャルリシア寮生達はアルゼオを一撃で仕留めることすら苦ではないだろう。それこそが力というものだ。その使い方は、あくまでそれを持つ本人だけしか御し得ない。 それに、仮に奴がアルゼオヤミルカのことは認めていたとして……お前を認める根拠がどこにある?もし奴が心の強い存在を認めるというのなら、生まれてからずっと、延々と悩み続けているお前のどこが心の強い存在だ? うらやましいよなぁ。ダバラン。あいつのような敵を撃ち倒す圧倒的な力が、もしお前にあいつのような力があれば、何も疑うことなく生きていけたのだろうに。 ミルカと話したとき……ダバランは、彼女の心の中にある、信じるということの強さが忘れられなくなった。 自分とは比べ物にならない強力な魔力の持ち主とはいえ……魔術師の性として、彼女もまた耐久力は低い。もし自分に攻撃が来れば。もしジャックやクレハといった者達に裏切られたら。そうしたら、成す術もないはずだ。 だけどミルカは、全く恐れていなかった。そんな自分が仲間をとりまとめていく存在であることに、全く引け目など感じていなかった。彼女は、その理由を信じているからだ、と言ってくれた。 自分にできることを。誰かにしてもらわなければいけないことを。そして何よりも。 自分の仲間達が、確かな信念を持ち、共に歩んでくれる存在だということを。 今ならわかる。アルゼオさんもきっと、そう信じていたのだ。 私がアルゼオさんに教えてもらったことを、ミルカは誰に教わるでもなく、知っていた。 本心から、彼女を見習いたいと思った。 自分のあるべき姿を、もう一度、教えてくれた気がしたから。 ……そんなダバランの想いに、魔族は囁く。 打たれればひとたまりもないとはいえ……あいつはお前とは違う。あいつは、その気になれば周囲の仲間など一度に吹き飛ばすことができる。それだけの力を持つ存在だ。 不穏な気配を感じないうちは仲間として動くが……自身の心にかなわぬ存在なら、やられる前に消し飛ばしてしまえばいい。あいつがそのつもりではないとなぜお前に言える? それに……お前がそのようにありたいと思ったというあいつの考え方は、すでにお前がアルゼオから聞かされていたはずのものだろう。それを信じ切れずに今このようになっているお前に、今さらどんな意味があるというのだ? うらやましいよなぁ。ダバラン。あいつのような多くの敵すらまとめて打ち倒す魔力が。もしお前にあいつのような力があれば、どんな軍勢にも屈することはないだろうに。 その声はいつも、一方的だった。 一方的に、ダバランの信じるべきもの、信じたいと思うものを踏みにじり、ただ疑惑という火を絶やさないことに専念していた。 ダバランは、想いを否定され続けた。そして、それを誰にも救ってもらえない。 --それは言う。 奴らには力がある。だから、あのようにいられるのだ。 --それは言う。 お前にはそれは無い。だから今こうして悩んでいるのだ。 --それは言う。 アルゼオ達には力への渇望がない。そうするに至る経験が。 --それは言う。 お前にはそれがある。だからお前の欲求は間違っていない。 --ダバランは、言う。 やめてくれ……やめろ…… 私は、私は彼らを裏切らない……裏切れない 絶対に……絶対に…… その問答が幾度繰り返されることなのか。それは、数えきれぬほどだ。 ……そして、やがては。 ……ここでは、自分はあの影の正体を知っている。あれは、「奴」が自分の体を通じて、この世界に近づいていることの証だ。しかし、それを外に伝えることはできない。表面上では、自分は何も覚えてはいないのだから。 ……エルクレスト祭が終わる。今ダバランは、シャルリシア寮生達のアトラクションや劇のことを考えていた。 彼女たちの行動は、いつも誰かを動かし、そして共感させていた。今回もそんな彼女たちの性質が、いかんなく発揮されていたと言えるだろう。 ……彼女達はいつでも、揺るぎない心の中にいるように思う。 そしてそんな彼女達の周りに、何人もの仲間が集まっていく。 彼女達には心の強さがあり……そして力がある。それがきっと、今の彼女達の現状を作り出した。 自分は、どうなんだ? 自分には力はない。そんな私に対してアルゼオさんは……心の強さ、信じることを説いてくれた。それに従うことで、私も、仲間を……他人に支えられた力を、手にしたのだと感じていた。 しかし、今の自分はずっと、迷い続けている。 表面上ははねつけられているように思えても……心のどこかで、相手の言うことを認めてしまっている。だから、自分はまだ解放されていないのではないか。 こんな自分の心が強いと言えるのか……?結局自分には、力の強さも、心の強さもなかったのではないか。 そんな自分に、どんな人たちが力を貸してくれるというのだろう? アルゼオさんに力がなくても、あのような存在でいられるのは……自分のように、奥底にある力への欲求がないから。 自分にない力にずっと憧れつづけてしまっているようでは……心の強さも身に付けることなどできない。 ……いや、そうでない、と言ってほしい。 それでも私の事を信じてくれると、誰かに言ってほしいとは思っている。 だが、ここには他の誰の声も届かないのだ。 届くのは、ただ。 「もういいだろう?」 やめてくれ 「人の中に積もり積もったものを、消し去ることはできない。お前の中に最初からあったものを無視することはできなかった」 ちがう 「それにもかかわらず、お前はこれだけの長い時間、義理を果たし続けた」 そんなことに 「もう苦しむことはない。お前の世界は変わる」 変わる…… 「お前には力だけが必要であり、そしてそれだけが手に入らなかった。それは全て偽りの世界だ。お前の真の姿は、その先にある」 私の、真の 「お前は全てを手に入れる。もう、お前を悩ませるものはどこにもない」 悩まなくて、いい 「お前は全てを越えていくことができる。今、お前が憧れることしかできていないものですら」 私の憧れ 「ミルカを、ジャックを、ミトを。シャルリシア寮を・・・お前は超える」 あの人たちを……超える 「そして、それまでの惨めな姿など、もう思い出すこともなくなる」 ……… ………… …………… ……ください。 私に、私に力を下さい。 私がずっと、追い求めていたものを私に下さい。 それまでの自分すら、払拭することのできる権利を下さい。 そのためなら、私は もう、どうなっても、いい。 「よくぞ言った……」 その瞬間、ダバランの心の中から、何かが這い上がってくる。 それは圧倒的な力を持っていることを感じた。そして、それに身をゆだねれば、自分とそれと同化できるに違いないということも。 ……いや、もうこうなってしまった以上、もはや身をゆだねるしかないのだ。 今まで憧れていたどころか、想像したことすらなかったほどの力が体へ流れ込み、ダバランは、己の心が満ち足りていくのを感じていた。……はずだった。 しかし、その間際、彼の心は泣いていた。そして、呟いた言葉は。 「助けて……くれ」 その時のその声を、今ようやく、この場にいる誰もが聞くことができた。 ダバランは確かに、屈したのだといえるだろう。そして、今のダバランもそう言う。まやかしである、と。 自分がこの道を選んだのは力への渇望故。それ以外には何の意味もない。そして、お前たちはその前に倒れるのだ、と。 しかし、その今のダバランの言葉を信じる者は、この場にいなかった。 ダバランは、魔族による卑劣な策略によってずっと追いつめられていた。ずっと、一人で戦い続けていた。 あの像は、そうしたダバランの心をも封じこめる役割があったようだ。だから、それを壊した今、ダバランの本当の心を、自分達は知ることができたのだと、一同は考えている。……さらに、先ほどまで魔人と称するにふさわしい人間離れした動きを誇っていたダバランのそれが、明らかに鈍っている。それも、おそらくは彼の中にある「本来の心」が今の自分に抵抗しているからなのではないかと、思わせるものだ。 そして、そんな一同の心を代弁するかのように、アルゼオは言う。 ダバランは助けを求めていた。しかし、魔族の策略により、それを誰かへ伝えることはできなかった。 だが、それはたった今、届いたのだ。ここにいる全員へと。 それに応えてやってほしい。そうすればこの戦い……そこまでいいかけて、アルゼオは首を振り、言いなおした。 それが自分の、そして自分を含んだ、ダバランと関わってきた者達全ての願いのはずだから、と。 そのために、自身の心の強さを、それぞれがもう一度教えてやって欲しい、と。 全員がそれに頷き、もう一度立ち向かった。 一人の人間の救いの声に……いまこそ、応えるために。 ……だが、アルゼオはその内心で、このときあることを考えてもいた。 もしここでダバランを止めることができたとしても、一度堕ちてしまった彼の心を救えるのだろうか、ということを。 しかし、そこでアルゼオは、救って見せる、ということを決意した。 何故なら、自分の願いも、エンザ先生と同じく。 「彼ら」にもう一度、すこやかな日々を送ってもらうことだから。 そこから、戦闘内容は終始、シャルリシア寮生と特別教導実践部の有利であった。 特別教導実践部は攻撃手段をそれぞれが持つチームであるばかりか、当初のシャルリシア寮生と同じく余力を十分に残しての参戦であったため、チームの連携を駆使した戦法は非常に多才であったこと、またチーフの魔導銃、イッシーによるカバーという防御手段も増したこと、そして何より、おそらく内面で心の葛藤が起きているダバランの動きが、先ほどに比べて大きく鈍っていたことにより、戦場のイニシアチブは明らかにシャルリシア寮生と特別教導実践部にあった。 フェイエンの魔法によってさらにその動きを鈍くしたところにミルカからの追撃を受けたばかりか、ダバランの動きの不調に追い打ちをかけるかのように、満を持して唱えられたラピスの技量強化魔法がクレハ、ジャック、チーフ、イッシーへとかけられたことによって、彼らの攻撃はたやすく今のダバランを打ち崩していく。先ほどの石像破壊の際にも見せたチーフの射撃がダバランの防御力を削っていたこともあり、特についに怒りの攻撃を炸裂させたジャックと、究極的な肉体から繰り出された連撃を打ち付けるイッシーの攻撃は想像を絶する威力で、ついに、ダバランの体を崩れさせたのだった。 自分の身体がついに動かなくなった現実に愕然としつつ、ダバランはなお、こんなはずはない、と叫び続けている。 自分にはこの力をふるう権利があり、すでに悩んでなどいないということを主張し続けるダバラン。これほどまでに傷ついても、一度堕ちてしまった彼の心は、今だに正気が確かに戻ってくる気配はなかった。 その時、突然、アルゼオが飛び出してくる。どうやらダバランが弱ったことにより、檻はすでに中から破れるほどのものとなっていたようだ。 突然のアルゼオの行動に一同が反応しそびれている間に、アルゼオはダバランへと組み付く。その様に、今のダバランすら困惑していた。 だが、その驚きの声に答えぬまま、アルゼオは、「お前を連れて行かせはしない」と宣言した。 そしてアルゼオは続ける。「お前たちが生きていく権利は当たり前のものであり、それを信じる自分たちの想いを、奪わせることもしない」と。 そんなアルゼオへ、ダバランは思わず、なぜ裏切った自分を救おうというのか、と口にした。そして、アルゼオはダバランの瞳をまっすぐに認め、答えた。 「立ち上がる。そしてまた、歩みだす。信じるという道はもし一度揺らいだとしても、それで崩れたりはしない」 そう、ダバランへかつて教えたはずだ、と。 シャルリシア寮生達が知る由は無いことではあったが、その言葉は、かつて使徒学部の戦闘科を望むも、適性のなさに打ちひしがれたダバランに新たな道を示すきっかけの一つとなった言葉だった。ダバラン同様、自分一人で戦う力を持たないフォーキャスターという能力を持つアルゼオが、なぜ他者の持つ力をそこまで信用し、そして自分の力としていけるのかというダバランの問いかけに答えた時のものである。自分が、人を信頼したい、信頼できると本当に思えたなら、もしその結果仮に裏切られるようなこと、信頼に応えてもらえないようなことがあったとしても、それが全てを否定することにはならない。なぜ自分がその相手を信じようかと思ったのかを見失うことがなければ、もう一度、人を信じて歩みだせるということだ。 だから、もしそれが困難な道でも、決して逃げようとはしない。アルゼオは、ダバランを信じていた。……いや、信じているから。 ダバランがそのことを信じられなかったというなら、もう一度教えていくまで。例え、それが苦痛や困難を自身へ伴うとしても。 その言葉に、ダバランは一瞬、戦意を失ったかのようなつぶやきを漏らしたが、しかしすぐに、それでも、今アルゼオにできることなどないと、アルゼオを否定しようとする。 この会話中というわずかな時間の間に、ダバランの力は回復しつつあることをその時一同は感じていた。やはり一度完膚なきまでに倒すしかない、一同がそう思いかけた矢先、アルゼオはダバランの否定を声で覆い隠すかのように、「して見せる」と叫んだ。 アルゼオは突然、懐から謎の玉のようなものを取り出すと、それを自身とダバランの間に掲げた。その正体を知るものは誰もいない。ダバランを含め、アルゼオの行動に全員が再度驚く中、アルゼオはシャルリシア寮生の6人へと振り返る。 ジャック、ミルカ、ミト、クレハ、レシィ、ラピス。 シャルリシア寮生達の名前を一人ずつ呼ぶアルゼオの表情は、緊迫した雰囲気を残しつつも、なぜか、どこか安らかなように見える。 そしてアルゼオは続ける。「事態は動いてしまった」と。そして、これからシャルリシア寮生達は、「あること」を知らなければいけないだろうと。 この空間から学園に戻ったら、まず教師に起こったことを話すべきだというアルゼオ、そして。 これからシャルリシア寮生達は、苦難の道を進まなければならない、とアルゼオは言う。そして、しかし本当は、自分達はシャルリシア寮生達とダバランが、その道を行かずに済めば何よりだと思っていたことも。 アルゼオのかざした玉の光が、だんだん強くなっていく。アルゼオはその光景を前に、まるで最後だとばかりにもう1つ、シャルリシア寮生へ語り掛ける。 だけど、約束してくれ。 必ず、生きると。そして、自身にはそれが望まれていることを信じると。 そうすれば、きっと大丈夫。お前たちなら。 その言葉に答える間もなく、光はさらに強くなる。そしてアルゼオは、しばし、お別れだ、と言葉を告げ。 その直後、光が全てを覆い尽くすのと同時に、ダバランの苦しそうな叫びが響き渡る。 それはすぐに収まったが、すると一同の目の前には、倒れ伏して動かなくなったアルゼオとダバランがいた。ダバランからはまだ少し、先ほどまでにあった圧倒的な力オーラが立ち上っていたが、それでも先ほどまでにくらべるとかなり収まっているように見え、また、両者とも全く動かないが、心臓は動いていたのだ。どうやら、命を失ったわけではないらしい。 今ここで起こったあらゆることが、残された今の一同にとっては理解し得ないことであった。しかし、今このような状態になってしまったアルゼオが最後にシャルリシア寮生へと言い残したことにどのような意味があるのか、少なくとも、それが軽いものとは思えない。 いずれにせよまずは戻るしかない。動かなくなった二人を運びつつも、アルゼオの言葉の意味について考える一同。その中で、特別教導実践部の4人は、ただとにかく、少なくとも自分たちは、シャルリシア寮生達それぞれの身の平穏を願っており、また力になれることがあるなら、これからも協力は惜しまないと伝えたのだった。 謎の空間の詳細については分からずじまいであったが、来た時同様、戻ることにもとくに問題はないようだ。シャルリシア寮生達と特別教導実践部が、意識を取り戻さないままのダバランとアルゼオを運びつつ「入り口」から出てエルクレスト・カレッジの中に戻ってきたとき、そこには多くの生徒達がいた。どうやら、シャルリシア寮生達を心配して、結局集まってきてしまったらしい。 彼らは無事に戻ってきた一同の姿を見て、それぞれ名を叫びながら快哉をあげていたが、その一方、全く動かないアルゼオとダバランを見ると、一体何があったのかという疑問、そして不安に顔を曇らせる。特に、この時その場にやってきていたマルティンはアルゼオ、ダバラン共に深い親交のあった人物であり、彼らが目を覚まさないことにもっとも衝撃を受けている。しかし、そんな彼に何を言うべきなのかもわからないままであったシャルリシア寮生。……そしてそこへ、エルクレスト・カレッジ学長、エルヴィラがちょうどあらわれる。 エルヴィラは、シャルリシア寮生達の姿と、アルゼオとダバランの様子を見て、何かを察したような様子を見せていた。そして、そんなエルヴィラへ、ミルカはシャルリシア寮生を代表して口を開いた。 ミルカは中で何があったのかを簡潔、端的に伝えると同時に、アルゼオがこのようになってしまう直前に、これからのことを教師に相談するべきというようなことを自分たちに伝えていたことを話した。そして、それを聞いたエルヴィラは、悲しみをたたえた表情であったが、やがて意を決したように、表情を引き締めていた。 そしてエルヴィラは、アルゼオとダバランは自分が預かり、最善を尽くす。だから、シャルリシア寮生達は今は寮に戻っていてほしいと言った。 もうすぐにエンザが戻ってくるはずであり、彼の口から、そのすべてを語るだろう、と。 しかし、それは。 それを知ことはきっと、シャルリシア寮生達にとって辛いことになる。 だから、心の準備をして、待っていてほしい。エルヴィラはエルクレスト・カレッジの長にふさわしい毅然とした態度でそう伝えつつも、彼女の心の中にある悲しみを覗かせながらそういったのだ。そしてそれは、アルゼオも言っていたことだ。 一体何が起こっているのか。そして、それは何を導くのか。 それを知る時は近づいている。シャルリシア寮生達はその時を、まだ待つしかないようだった。 ……そしてシャルリシア寮生達が寮へ戻ろうとしたところ、ミトの傍らにメギアムがやってくる。 彼はまず、自分がミトに、そしてシャルリシア寮生に災いが降りかかることの無いよう、ミトから相談を受けて以来調査は続けていたものの、今何が起ころうとしているかすらを計れない現状を詫びた。当然、ミトがそんなメギアムを責めることなどあるはずもなかったが、しかし、気になっていることはあるとメギアムはつづけた。 今、エルクレストにとてつもない力量の魔術師が来ている。 その男は妹と共にエルクレスト祭に来ていたということらしいが、妹の方はともかくとして、その男が本当にエルクレスト祭を楽しみに来たようには、メギアムには思えなかった。なんらかの、別の目的があってここに来ているようにしか思えなかったというのだ。 だから、その動向を詳しく調査する必要がある、とメギアムは判断していた。そんなことしかできなくてすまないとメギアムはミトに再度謝罪したが、ミトはそんなメギアムに首を振り、感謝の言葉を伝える。そして、しかし無理はしてはいけない、とも。 そのミトの言葉に活力をもらったかのように表情を明るくしたメギアムは、シャルリシア寮生達のところにエンザが戻ってくるころまでには、一度切り上げて戻ってくるといい、そして、そこで聞いたことを、自分にも教えてほしいと言った。 たとえ何があっても、自分は、ミトの味方だから、と。 そして、メギアムは学園の外へと消えていったのだった。 その後、シャルリシア寮の6人は、エルヴィラの言葉通り、シャルリシア寮の談話室でエンザの帰りを待っていた。 かねてより感じていた「違和感」はむしろ今が最高潮といってよく、視界の端に常に映り込むかのような謎の存在に神経を摩耗させつつあった6人。そしてその扉がノックされ、一同は扉を開いて迎え入れた……が、そこにいたのはエンザではなかった。リュミルである。 彼女は扉を開けると、シャルリシア寮生達がそろっていることに感激したかのような声をあげつつ、手にした菓子折りのようなものを掲げて、エルクレストで楽しませてもらったお礼を持ってきたのだと言った。……しかし、寮内に流れる雰囲気が妙に重い物であったことに気づき、場違いだったのではないかと不安そうな表情をリュミルは浮かべたが、そこであえて陽気に見えるよう努めたクレハのフォローなどにより背を押され、かわいらしく満たされている笑みを浮かべて寮内へと入ってきた。 リュミルは菓子折りを一同の中心となる机に置きつつ、その説明をし始めた。そこから少しの間リュミルはシャルリシア寮生(主にはクレハ)との談笑をしていたのだが、そこで再度、シャルリシア寮生達の中で何かあったのだろうかという話題になる。もっとも、自分達ですら今何が起きているのかを知る由もない今のシャルリシア寮生達が、そのことに明確に応えられるはずもなかったゆえか、彼らはそれを明かさず、、リュミルに対してはそこまで大きなこととは思われないよう振る舞っていた感はある。 しかし、リュミルはそんなシャルリシア寮生達に対して、告げた。 「一つ、聞かせていただけませんか?」と。 一方そのころ。「謎の強力な魔術師」……ザムトの動向を調べていたメギアムは、彼がエルクレストの宿に戻ったのを確認していたところだった。 結局、メギアムがそうして監視している間、ザムトは特に不審な行動はとらなかった。 もともと、ザムトが何か、ミト達に今起こっていることに対する関与があるかどうかについての確証があって監視をしていたわけではない。ただ、ミト達の身に明らかに何か、危機が迫ってきているというこの現状で、何もできずにいることがもどかしくてたまらなかったのだ。 しかし、ここまで監視して何も手がかりがないとなれば、今は戻るしかないとメギアムは考えた。そしてザムトを追って来た時同様、人目につかないルートを選択して駆けるメギアム。 しかし、その道中、メギアムは驚きに目を見開いて立ち止まる。その目の前には、先ほど宿の中に消えたはずのザムトがいた。 なぜザムトがここにいたのか、おそらく転移魔術であることははっきりしている。 しかし、あそこからここまでの転移魔術となると、あらかじめのマーキングが必要となるはず。 つまり、ザムトは気づいていたのだ。少なくとも、自分をこのルートから監視している何かがいることには。 そのことをメギアムが理解し、さらにこの後取るべき行動について瞬時に模索しようとするその間に、ザムトは言葉を発した。 悪いが、君の目的を看過するわけにはいかない。と。 「計画」はすでにほぼ成功しているとはいえ、できる限り不安要素を排除することが自分の仕事であるとザムトはいい、それを聞いたメギアムは、それがどうやってかはともかく、自分の目的がミトを、そしてシャルリシア寮生達を守ることであると気づかれているのだとすれば、やはりザムト「達」の目的は、シャルリシア寮生に何か危害を加えることにあるのだろうかと思いを巡らせた。 しかしザムトは、そんなメギアムの思考を理解しているかのごとく、「自分ではなく、世界が、彼女達を排斥する」という言葉を投げかけ、さらにメギアムを動揺させた。そしてザムトは、メギアムがそれ以上を知る必要はないとも告げる。何故なら、すでにどうしようもないことなのだからと。 ザムトはまるで、メギアムの考えていることをすべてあらかじめ知っているかのようだった。そして、ミトに言っていた通り、ザムトの実力がおそらく自分を大きく超えるほどの強大さであることは、すでに確信に近い予測として存在している。 だが、メギアムははっきりとザムトに対し、「そこをどけ」と宣言した。 相手が自分にとってどれだけ絶対的な存在であったとしても、心に決めた何よりも大切な人、ミトを救うためなら、必ずここを切り抜けて見せる。その決心がメギアムにはあったから。 しかし、そんなメギアムへ、ザムトは全く怒るでもなく、なぜか突如、メギアのことを「優れたヒューリン」と評し始めた。 そして、ザムトはメギアムが「人の子のために、その身をささげるに足る覚悟」を得るための力と心の強さがあり、だから、自分はメギアムの命を奪うわけにはいかない、という。 その言葉の真意が何であるのか、メギアムには計りようもない。しかし、この状況下ではミト達にさらに深刻に、危機は迫っていると見て間違いはないはず。ならば、とメギアムがさらに一歩を踏み出す決意を固める。 だが、ザムトはそこで一言、「すまないな」と口にした。 「今の君の、その気持ちを踏みにじる」 その言葉が紡がれた直後、先ほどまでの予測を圧倒的に超えるほどの魔力が吹き荒れた。しばし、眠ってもらうというザムトの宣告を受けつつ、メギアムはその瞬間、ミトの無事を祈っていた…… 「今まで考えたこと、ありました?」 シャルリシア寮内。そこで、リュミルはシャルリシア寮生6人を前にして、質問を続けていた。 「自分が、死ななきゃならない存在だってこと」 かわいらしく、愛らしい少女から突然飛び出て来たその言葉に、即座に反応できたものは誰もいなかった。シャルリシア寮生の瞳が思わず一斉にリュミルへと強く注目するも、そこに移る少女の姿に変わりはなく、声も、まるで鈴を鳴らすかのような可憐さだ。 「考えたこと、ありました?」 だが、その表情は、 「自分の持っているものが、全て捨てなければならないものだってこと」 その笑顔は、まるで救いようのない道化を見下すかのような冷たいもので。 「ないですよね?だって、お前たちはみんなクズだもの」 そして、徐々に声音も変化し始めてくる。その後ろに、確かな怒りを感じるような激しさを感じさせる。 「世界のために自分自身すら捨てきることのできない弱者……クズ共!」 「今までにどれだけ他人を救った気になっていようが関係ない……あんたたちは死ななきゃいけないんだ!」 リュミルは、それをもう一度宣言する。 どうして、言葉が追いつかないのか、そう言いたげなクレハに対し、リュミルは、自分が世界の敵にそれを教えなければいけない理由は何一つないとあざ笑いつつ、だけど光栄に思え、という。 シャルリシア寮生達に直接手を下すのは、この世界で最も神に近い偉大なる存在である、と。 いつのまにか、リュミルの手には何やら石……転送石のようなものが取りされている。極められたシーフ特有の予備動作のない行動の中で取り出されたそれに対して、先ほどのダバラン戦で消耗していることもあり、シャルリシア寮生に反応できるものはいない。 そして石が輝きだす。しかし、その輝きは通常の転送石よりはるかに強いものであり、また、その魔力も比較にならない。 「さあ!その身を人の子の平穏のために捧げるんだよぉ!」 リュミルがそう叫んだ瞬間、圧倒的な光がシャルリシア寮生達を残らず包み込む。そして、その光が消えたあとには、シャルリシア寮生は誰も残っていなかった。残されたのは、リュミルだけだ。 リュミルは誰もいないシャルリシア寮の中で満足そうにしつつ、任務完了とつぶやき、そしてさらに、他に誰かが来る前に撤退するということと、「あの二人」が使えないせいで余計な手間だったということを独り言ちて、その場を素早く去って行った。 ちょうどその時、エンザはエルクレスト・カレッジに帰ってきていた。 校門でエルヴィラに出迎えられ、今何が起きているのかを聞かされたエンザは血相を変え、そしてすぐに何かを覚悟するかのような表情となっていたが、その瞬間、シャルリシア寮のある方角から謎の光の柱が立ち上ったのだ。そして、エンザとエルヴィラは2も3もなくすぐさまシャルリシア寮へと駆け寄り中を確認するが、そこはシャルリシア寮生達はもちろん、すでにリュミルも完全に姿をくらませたあとであった。 シャルリシア寮生一人一人の名を叫びつつエンザが探し回る一方で、エルヴィラは、ついさっき立ち上っていた光が、転送石などを媒体とした転送魔術の類によるものであることを分析していた。 しかし、エルクレスト・カレッジは学園中から学園外、そして学園外から学園中となるような転送魔術を阻害する結界が張り巡らされているはずである。しかし、とエルヴィラはいい、ちょうどさっきの光に沿ったかのような形で、その結界に穴が開き破壊されているようであること。それともう一つ、転送石によって行われる転移魔術、即ち《テレポート》は、移動の際その移動対象の同意が必要となるものだ。そして当然だが、この状況下で、シャルリシア寮生達が自主的に、自分達への連絡もなく転移で消えるなどということはあり得ない。 あの光から感じた魔術反応は転移魔術に酷似している。しかし、この2点をうち貫く、規格外の強大さを持つなど一体、どのようにして可能にしたのか。エルヴィラはそのことを考えていた。 しかし、その時、エンザはあることに思いを巡らせていた。そして、エルヴィラがかつて見たこともないほど、その表情は冷たく固まっている。 心なしか震える声で、エンザはエルヴィラに、「規格外の強大さをもつ転送魔術」であったのではないかということを確認し、エルヴィラはそんなエンザに戸惑いつつ頷いた。そしてエンザは、そのことを確信したかのように、つづけた。 内部からとはいえ結界すら打ち破り、対象を無理やり転送に引き込むことすら可能にする規格外の転送……神聖魔術。そんなことが可能な存在がいるとすれば、それは一人しかいない、とエンザは言う。一番、恐れていたことが起きた、とも。 奴が、来たのだ。 バウラス・ジーク・スヴァルエルトが、動いたのだ! そしてその時、シャルリシア寮生の一同は、気が付けばある牢屋にまとめて閉じ込められていた。 武器や装備は奪われておらず、どうやらそのままここに飛ばされてきたようだが、牢や壁は彼らの強力な攻撃をもってしてもまるでビクともせず、そしてラピス得意の転移魔法もマーキングを消されてしまっているようで、また、牢屋の牢に対しても、この建物の壁に対しても、転移魔術ですりぬけるようなことはできなかった。 何故自分たちは囚われているのか、なぜリュミルは本性を隠していて、そして今露わにしたのか。 ただでさえわからないことだらけだったというのに、さらなる謎が増えてしまった。もはや今何をすればいいのかすら、謎という霧の中にあると言っても過言ではないシャルリシア寮生達であったが、牢を閉ざす錠の鍵穴を見たジャックは、ふと、あの時ナタフより受け取った鍵とその形状が一致するのではないかということに思い当たり、試しにと差し込んでみたところ、錠はいともたやすくその口を開け、一同は牢の外へ出られるようになった。 そうすると今度はなぜナタフが、しかもあらかじめその鍵をジャックに渡していたのかということが疑問となる。ナタフがこの状況に何らかの形で関わっているのは間違いないことといってもよさそうだが、その一方で彼の真意は計りかねるところがあった。例えば、こうして脱出させることも何かの罠かもしれない。 だが、ナタフより直接鍵を手渡された張本人であるジャックは、その可能性は考えつつも、どちらかといえば、ナタフが自分達を捕えた目的のある集団と同じ存在ではあるとしても、その志が異なろうとしてきているのではないかということを思い当たったようだ。……それに、罠かもしれないからとはいえ、そのまま牢に留まることが最善というのも考えにくい。一同はまず外をめざし、牢のあった部屋から駆け上っていく。 移動中、この建物には窓すらなく、ここがどこであるのか、外の風景を眺めることすらできなかった。だが、多くの階段を駆け上がりつつ、風の気配のする方へと向かっていくたび、だんだんと外は近くなってきているのを感じさせる。また、自分達を牢に捕えておきながら、追っ手や警備などは全く存在を感じさせないままだった。 そしてしばらく進んだ時。不意に、大きく開けた部屋が一同を迎えた。そして、その部屋の壁、とある一面には大きな板のようなものがかけられていた。 その板の一番上には「邪悪を払う者、ヒューリンの使命を受け」と書かれており、そしてその下に、何十人もの、名前のような言葉がつづられている。さらに、そのすべての傍に、「我が身我が心、人の子の平穏のために捧げる」という、まるで誓文のようなものが、それぞれの字体で書かれている。 ……だが、そのほとんど全ての名前が、年月日を表すかのような数字と共に、「真の志を持つ汝、天に登り人の世の礎とならん」という言葉を添えられている。その一文のない名前はわずか4つ。ザムト・アンリ・ゲスト、ナタフ、リュミル、シズナ・ミナモリという名前だけ……いや。 それらの名前の上に一番大きく書かれている、「バウラス・ジーク・スヴァルエルト」を入れて、5つである。 そこに書かれていた名前に、思わず立ち止まり、それぞれ考えを巡らせたシャルリシア寮生達。しかし、さらに少し調べると、この部屋を越えた先に外につながる出口はあるようだとわかり、一同はひとまず考えを止め、そちらへ向かおうとした。……しかし。 その出口の傍には、上階より降りてくる階段も存在していた。一同が出口をまだ目視でしか捉えられていない時、その階段から、こつん、こつんと静かな、しかし厳かな音を立て、誰かが、やってきていることを一同は感じる。 そして、そこから姿を現したのは、中年から壮年になりかけている、といった歳の、一人のヒューリンの男だ。体には、聖なる紋章が描かれた鎧。そして、打撃具のような武具を装備していた。 この時、もともと敵の力量を見切ることにたけていたラピスのみならず、そこにいた6人全員が、あることに気づいた。 次元が違う。と。 学生である自分達とは……いや、少なくともこの地上にいる者にとっては、全く力の次元が異なるとすら思えるほどの力を、目の前の男は持っている。以前(第八話参照)ハルファスやディアロに感じた……いや、それ以上かもしれない。 目の前に立たれたというだけで、もうその先に行ける気がしなくなる。それほどの圧倒感を携えつつ、男は、口を開いた。 ……この世界に、本来は存在しなかったはずの邪悪なる存在が、生まれようとしている、と。 それは、数名の少年少女の心の中に隠れ、いずれやってくる復活の時を待ち続けている。 「お前たちはそれに、選ばれてしまった」 ゆえに、あらゆる人の子の安寧のため、ここで死ななければならない。 「お前たちだけではなく、今は眠るもう一人も、そして、そのまた十数年後も」 「その存在」を世に放たぬため、永遠に繰り返され続ける。 そして、男はついに、名乗った。 我は、バウラス・ジーク・スヴァルエルト。 神より使命を受け、人の子の平穏を、守り続ける者。 「お前たちを。消去する」 そう言った後、ゆっくりと、しかし確実にバウラスは進んでくる。圧倒的な力の差を感じつつも、それでもシャルリシア寮生達は抗おうとして、それぞれの武器を手に取り、バウラスの進路をふさごうとする。しかし、武具は構えた瞬間、バウラスがその方向へ視線を向けただけでなぜか弾き飛ばされてしまう。何度拾い上げても、それは同じ。戦闘態勢を取ることすら許されていない。 ラピスはとっさに、部屋の影、バウラスにとって死角となる位置に他の5人を転移魔法で送り、隠そうとしたが、バウラスが目を伏せて腕を中空に一振りすると、ついさっき消えたはずの5人が全て元の位置、ラピスの至近に送り返されている。ラピスは自分のできること、自分にできて、他の人の命を繋げうることを涙ながらに必死に試みるが、バウラスはその度に、ラピスの努力を無に帰した。 抵抗すら許されない中、ついにその身を呈し、他の者達を少しでも守ろうとする者が出てくる。しかし、そこで。 新たに、現れる者が、いた。 少しずつ近づいてくるバウラスとシャルリシア寮生達の距離が、ついに数mといったものになろうとしたとき、一人の人影がさっそうと現れ、シャルリシア寮生の誰よりもさらに前へと出た。それは、エンザだ。 突然やってきたエンザに驚きの声をあげるシャルリシア寮生達。しかし、エンザはバウラスの姿を凝視しつつ、シャルリシア寮生達が、バウラスに何を聞かされたかということを確認しようとし、そのことにも戸惑いつつ、一同は先ほどバウラスが語ったことをそのままエンザに伝える。……すると、エンザの表情が、少しの間、とても悲しそうなものになる。だが、あの時のエルヴィラのように、すぐに意を決したように表情を引き締めたエンザは、「それは本当だ」と一同へ伝えた。 エンザは続ける。シャルリシア寮生達、そしてダバラン達の体……いや、心の中に、本来この世界に存在しないはずの存在、「心の魔」とでも形容すべきものが潜んでいる、と。 「心の魔」は、普段はこの世界に姿を現さない。しかし、その存在は、複数の人間の中に分かれて、確かに存在しているという。 そして、一定の時期を迎えた時、自分が住みついている人間それぞれの身と心を、やがて乗っ取ろうとし始める。しかし、その時までには、まだ時間はあるはずだった。 だから、エンザ達はそれを知りながら、該当者であるミルカ達をできるだけひとところに集め、そして、それに対抗するための対抗策を……希望を、伝えていこうと考えていたのだと。 それはまるで、エンザ達がシャルリシア寮生達へ伝えようとした「希望」が間に合わなかったかと思わせるような言葉で、実際、シャルリシア寮生のうち誰もが、そのようなことに心当たりはない。だが、エンザは「安心しろ」というのだった。すでに、その希望を、シャルリシア寮生達は手にしている、だから、今バウラスがしているように、シャルリシア寮生達ごと「心の魔」の現出を阻止せずとも、方法はあるのだと。 ……しかし、そんなエンザの言葉に、バウラスが耳を貸す様子はない。その間も近づき、次の瞬間にも襲ってくるかもしれないほどの威圧感を、その場所よりいまだ放っている。 そして、エンザはもう一度バウラスを見つつ、だが、その希望を活かすために、まずは、目の前の存在を切り抜けなければならないと語った。だから、とエンザは言う。「ここは、俺に任せておけ」と。 エンザの実力は、確かに現時点でのシャルリシア寮生個人の能力は超えるものであったかも知れない。しかし、以前(第八話EX参照)の時からわかるように、少なくとも今のバウラスのような、全く次元の違う力を持っている存在ではないはずだった。 いったいどんな手段を用いようとしているのか、そのことをシャルリシア寮生達は全く予測はできない。だが、どうやらバウラスと顔見知りであるらしいエンザの振舞に任せるほかなかった。 エンザはよりバウラスの前に立ちふさがるかのように一歩足を進め、バウラスの名を呼ぶ。そんなエンザへ、バウラスは全く興味のなさそうな瞳を向けていた。……いや、厳密に言えば、エンザを無視し、自分の滅ぼすべき相手……シャルリシア寮生達をその向こうに収めていたのだろう。 だが、エンザはなお語りかける。お前、この子たちを殺す気か、と。自分があずかったと言ったはずだ、と。 それを聞き、バウラスは初めて、エンザへと返答をする。復活の予兆があるまでは手を出すつもりはなかった。だが、時が過ぎるにつれてその予兆と懸念は大きくなり、ついに看過できる一線を越えたのだ、と。 エンザはそこで、なぜバウラスにそれがわかるかのか、と疑問を持った。どのようにシャルリシア寮生とダバラン達が日々を過ごしてきたのか、そして何があったのか、それらをバウラスはみてはいないはず。そして、バウラスはそれにも答える。 いずれ、エルクレスト・カレッジにミルカ達計7人が集められることを知っていたバウラスは、かねてよりバウラスは手を打っていた。つまり、内情を観察する人員を、エルクレスト・カレッジへ派遣していたというのだ。 そして、その者達より、今回の事件のことを聞いた。それだけでもう手を下す理由として十分と、バウラスは言った。この時、そのバウラスにとっての「監視員」が誰であったのか、それを察していたかもしれないが、エンザはその事実に驚かされている。 今度はバウラスが続ける。自分とて、何も知らぬままに命を奪おうとすることはなく、自分が殺すのは、「滅ぼすべきと判断できた相手のみ」だと。そのバウラスの言葉に、突如エンザは、「お前のその判断は、いつだって早すぎる」と、何かをかみしめているかのように強く吠えた。 そしてエンザはそのまま、言う。「お前に、もうあんなことはさせない」と。 「あんな悲しい殺しは、もうやらなくていい」 その言葉の意味するところがなんだったのか、それがバウラスに伝わっていたかは定かではない。しかし、バウラスはそのエンザの理屈や言葉に付き合うつもりはない、と跳ね除けたのは現実だった。しかし、エンザは、いや、付き合ってもらう、と宣言し、ここで初めて、バウラスの動きが少し、止まった。 エンザは言う。 まだ、全てが終わってはいない。可能性は残っている。 そのために自分はシャルリシア寮を設立し、そしてそこでミルカ達6人の成長を促してきた。このことは、きっとダバランも知っているはず、だから、監視を付けたのだろうから。 ……しかしバウラスは、その今残されている希望、可能性とはとは、あまりに細く、儚いものだということ、そしてさらに、もしその希望が適わなかった時の災いは、後の人々により降りかかっていく可能性もあるというものであることを指摘し、エンザはそれを根元から否定することはできず、その側面を理解していることに頷く。 だが、それでも。 シャルリシア寮生達が培ってきた信頼の絆は、バウラスが報告で聞いたというようなことで、簡単に計り知れるようなものであることはあり得ない。そして、それこそが真に全ての人を救うための道への鍵であることをエンザは説く。エンザはバウラスへ、バウラスが真に全てを救う道の鍵から目を背けていると言ったのだ。 この時、バウラスはわずかに沈黙した。しかしすぐに、そのような希望論で人への脅威を増すわけにはいかないと再度エンザを否定し、さらにシャルリシア寮生へ近づこうとした。しかし、その前にはやはりエンザが立ちはだかる。 エンザは、バウラスがシャルリシア寮生達を信じられないのは、シャルリシア寮生達がどのような存在であるかをその眼で見てきたわけではないからだとし、そして、ならば。 かつてバウラスと共にいた、自分のことを、信じてもらうと言った。だがそれでも、バウラスはまだ、関係ない、とエンザの言葉を聞き入れようとはしていない。 しかし、その時のエンザの表情は、そんなバウラスの拒絶にまったく動じていなかった。……それはまるで、ある大きな覚悟を決めた者のような、迷いなく、重いものだ。 バウラスがシャルリシア寮生達やバウラスを殺すというのは、シャルリシア寮生達の身に、バウラスの陥落をはじめとした策略が降りかかったから。 しかし、エンザは先ほどバウラスにも言ったように、シャルリシア寮生達が健やかに日々を過ごせるよう、「希望」を円熟できるよう、責任を持って預かるといったことを心に課していた。例え何が原因であったとして、このような結果が起こったのは、ならば自分の責任だとエンザは主張した。 そして言う。迷いない瞳で。 「シャルリシア寮生達を討つというのなら、その代わりに自分を殺せ」と。 その瞬間、この空間の時が止まったかと思うほどの静寂がその場を支配した。もう全くエンザを気に掛ける様子のなかったはずのバウラスの瞳がその時、明確にエンザの姿へと注がれていた。 その場の全ての人の想いが動く中、エンザはだが、とつづけ、その責任を命で償ったなら、「ここまで」の責任を、それで終わらせてもらうと宣言する。そして、「これから」シャルリシア寮生達に何ができるのか、それはまだ、だれにも判断する権利、裁く権利はないと。 そして、もう一度と、エンザはバウラスに、告げた。 「お前に、あんなことはもうさせない。絶対に」 「お前は、もうあんなことをしなくていい」 「……信じろ、お前にそうさせるため、俺は今、命をかける」 時間にしてわずか数秒。しかしその空気の重さは、まるで十分以上の静寂が貫かれたかのようなものに思える。 その間、エンザ以外の誰もが、言葉を発することはできなかった。しかし。 同じく何も音をたてないままだったバウラスの足が下がり……そして、武器を収めたのだ。 その行動に、エンザは誰に聞こえるとでもないほどの小さな声で、「ありがとう」とつぶやいていた。 そして、後ろに下がったバウラスに対して、少し、時間をくれとエンザは言う。 これでも教師だ。だから、その役目を今少し、果たさせてくれと。……バウラスは引き続き無言のままであったが、どうやらその要求も呑んだらしく、さらに下がり、出口の傍にと立ったのだった。 エンザは下がったバウラスに対し……これから自分の命を奪いに来るだろう相手に対し、なぜか、感謝するかのような表情をそのままにしていた。 だが、シャルリシア寮生達にとっては、もはやそのことに気を向けている場合ではない。エンザの、まるで自分たちのかわりにエンザの命を犠牲にするかのような言葉を聞かされてしまっては。 ……しかし、もはや理不尽なほどの悲しみと戸惑い、あるいは絶望に襲われているシャルリシア寮生達に対し、エンザは、そんな顔をするな、といった。 自分のことを思ってくれているなら嬉しい。だが、自分は、シャルリシア寮生達にそんな表情をさせるために来たのではない。……すなわち、希望を繋げるために来たのだ。 今、シャルリシア寮生達が自分に聞きたいと思っているだろう多くのことを語る時間は、もうないだろう。 だが、大丈夫だ。そうエンザは言う。 さっきも言った通り、シャルリシア寮生達はすでに希望を手にしており、そのための道は今、もう一度つながった。そして、それからのことは、心配はいらないと信じている。 だから、今は。 今は、お前たちのことを、話させてほしい。 そして、エンザはまず、ミトの名を呼んだ。 エンザは、ミトの語った夢、「より立派な王女になる」ということについてを語った。 いつだって、今よりももっといい自分になれると信じろ。 そうすればミトの大切な人も、仲間も。誰もがずっと、ミトのことを認めて、信頼してくれる。 ミトが立ち上がることで、人々の心が集まる。ミトの意思が、多くの勇気を生む。そういう存在を、きっと王女と呼ぶのだと。エンザは、ミトの未来を保証した。 しかし、今のミトにとって今語るべきこととはそこではない。 ミトはかつて言った。自分達は一人もかけてはならない。自分が王女として、皆を守っていく、と。 そして、ミトにとってその対象には、エンザも当然入っていた。 だから、ここでエンザが死ぬというなら、そんなことを認めるわけにはいかない。 ……しかし、それを語るミトの姿は、普段の明るく、どこまでも自信にあふれていたようなものとは違った。 それは、バウラスとの力量差を感じたが故か、……あるいは、エンザの自分の命をかけるという発言が、決して軽いものでないことを察していたからか。 そんなミトに対して、エンザはまず、あくまで優しく、「俺のことは気にしなくてもいい」といった。自分はすでに、十分恵まれていた。それだけの人生を歩んでこれたのだと。だが、それでミトが納得するはずもない。 そこでエンザは突如、バウラスはエンザにとって、救いが必要な人間であり、そして、それができるのはおそらく自分しかいないということを語った。 それが何故なのか、それがミトにわかるはずはない。だが、そう語るエンザの瞳は、決してごまかそうとするようなものではなく、真剣だった。バウラスを救うため、ここでエンザが立たなければならないのだということは、少なくともエンザは本気で思っている。そう感じさせた。 それに、とエンザは続ける。もちろん、自分とて生き延びることを考えている。と。 だから、ここは自分に任せてくれ。そう再度口にしたエンザに、ミトはついに、歩を引いた。 しかし、ミトはエンザと約束を結ぶ。必ず、生きて会うことを。 エンザはその約束に応じ、笑って見せた。 その笑顔は、どこか儚いものであったかも、しれない。 レシィ、とエンザが名前を呼ぶ。しかし、レシィはそれに答えることができなかった。彼は、泣いていた。 顔一面を涙で濡らし、恥も外面もなく鳴き声を漏らしていた。エンザはそんなレシィに近づき、優しく、しかし力強く言った。 泣くな、お前は、強くなれたから。と。 しかし、先生、とか細い声でエンザを呼ぶレシィの瞳から涙が止まることはなかった。もはや、何を言うべきなのかすら上手くいえていないようで。 エンザは、今度はレシィを抱きしめる。服や体がレシィの涙で濡れることに構わず、エンザは続けて語る。 お前も信じろ。お前の生きる道を閉ざす権利なんて、誰も持っていないのだから、と。 そして、恐れることもない。もう、レシィは行くべき先を、共に歩んでいくべき存在を見失って、迷子になっていた弱虫の少年ではない。 行くべき道をレシィがちゃんと歩んできた結果として、レシィには、共に歩んでくれる無数の人がいる。 だから、レシィは何も間違ってなんていない。それは確かな事なのだ。 それを信じて……胸を張って……いつだって今日を、そして明日を生きる。 その積み重ねが、レシィを「本当に立派な人」にしてくれる。誰も、それを否定できないのだ。 レシィ、そうだな、と問いかけるエンザに、レシィは涙を流したままに頷いた。そんなレシィをエンザが最後に優しく撫で、離れる。 エンザは、レシィの夢、「より立派な人間なる」ことの道筋の正しさを保証してくれた。 ……それでも、レシィがずっと泣いていたのは、やはりそこでエンザを引きとめる術が、なかったからだろうか。 クレハ、と名を呼ばれた時、クレハは、愕然としていたと言っていいのかもしれない。 ……しかし、クレハはそのエンザの声に確かに答えた。そして、涙も流さなかった。……それを、おしとどめていたのかもしれない。エンザが、自身の命をかけたこの時に語ってくれることを、確かに聞き届けるべく。 お前の夢、越えるべき目標を越えていくこと。お前はまだ、その途中だとエンザはクレハに語る。 そしてエンザは、クレハに、胸を張れるか、と聞いた。クレハの持つその夢に、大きな意味があるということを。クレハは、それに強くうなずいて見せる。そして、エンザは笑みを浮かべ、なら、大丈夫だといった。わかるだろう、クレハ、と。 クレハの持つものは、クレハの抱えるものは。たいしたことのないことなんかではない。 誰にだって、意味のあることだ。だから、クレハのまわりにいるひとたちは、クレハの抱えるもの、背負うものを知ろうとする。 ……そんな立派な想いを持つクレハを、少しでも助けたいから。 エンザの言ったこの言葉は、クレハの内面にある、自分すら気づかぬまま、自分が犠牲になる形を取ろうとしてしまう心に向けられたものだった。 クレハがそう考えるのは、クレハ自身が、自分の抱えているものを、他者の抱えるものとくらべて軽視しすぎてしまうからだ。 しかし、エンザはクレハの持つ想いが、大きな意味を持っていることを。他者に対して、ちっぽけなことなどではなく、一様に価値のあることだと伝えたかった。 そして、エンザは言った。それさえわかってくれるなら、クレハはきっと、本物の英雄になれるはずだ、と。 エンザがここであえて使用した「英雄」という言葉の意味は、ひとえにクレハの過去にある。 英雄とよばれた母の息子であることに耐え切れず、家を出た。しかし、そんななかで生きつつも、どこかで、自分を成長させる機会を探していた。 エンザはそんなクレハの過去を知っていた。だからエンザは、クレハのいう始めの「越えたい人」は……「英雄」である母の事なのではないかと思ったのだろう。 自分だけが業や悲しみを背負う。それも確かに英雄の姿かもしれない。しかし、その存在は、最終的にはむしろ人々に悲しみを与えてしまうのではないかとエンザは思っていた。 自分の感謝している人に、尊敬している人に、差し伸べた手を受け取ってもらえないこと。それはきっと、悲しいことだと言っていい。 エンザはクレハの、そのことが心配だった。だが、クレハはエンザの言葉に頷いてくれた。 残された会話の時間は短く、本当にエンザの言葉の中の意図が、クレハに伝わってくれたのかを、エンザが確かに知る方法はない。 だが、クレハはエンザの、自分の想いを誇ってほしいということ、そして、本物の英雄になるということに、力強くうなずいてくれた。 だから、きっと大丈夫と信じられた。もう、不安はなかった。だから改めて、こう言えたのだ。 「クレハ。みんなを助けてくれ。頼んだぞ」 と。 クレハは再度頷き、そして、エンザも必ず、生きて帰ってくることをミト同様約束させる。……エンザはそれにも頷いたが、やはり、その笑顔は儚いものではあった。 そして、次にジャックの名をエンザは呼ぶ。 ジャックは、ただ押し黙っていた。ただじっと、エンザを見つめている。 だから、始まりは、エンザが語りかけるものとなる。 すまなかったな、とエンザはまず誤った。結局自分はジャックにとって、良くない教師のままだった、と。 しかし、自分はそれでもよかった。とエンザは言う。なぜなら、あの時言ったように。 ジャックの考えていること、ジャックの心が誤った道に進まない、強く気高いものだということは、言葉に出して語り合わなくても、わかることができると思っていたから。……だが。 ……自分がもっとうまくやっていれば。ジャックに、認めてもらえるようにできていれば。 ジャックに、シャルリシア寮生としてもっと楽しい思いをさせたやれていたのかもしれない。そう思うと、エンザは、気がかりにしていたようだ。 そして言う。ジャック。生きろ。お前の夢はこれからだ、と。 ジャックはすでに、かつて自分のいるべき居場所をなくし、退廃的に今を生きた人間ではなくなった。自分がどうしていきたいか決められる場所を、ジャックはすでに手に入れたのだから。 ……そこで、ジャックはようやく、エンザへ口を開く。 自分のいるべき場所がどこなのか、それはあくまで自分の決めること。いずれ、さらに別の場所に行くこともあるだろう。 ……だが、少なくとも確かに今は、ここでしなければいけないことがある。と。 ……そのしなければいけないことが何か、ジャックは語らなかったし、そしてエンザも聞くことはなかった。エンザにとっては、聞かなくてもきっと、ジャックが今目指してくれているものは、自分の望みと同じであると信じられたから。 ……ジャックはさらに、もう一つ続ける。 自分は、エンザのことは確かに個人的に好きではなかった。 だけど、それは性格面などの事であって、教師として……自分達という学生を導いていこうとする者としては、一定の評価はしていたと。 そして、もちろん今この時。ジャックは、エンザのことを認めていると言ったのだ。 エンザは、嬉しかった。本当は、ジャックに認めてもらえていないのではないかと、ずっと気になっていた。 でもここで、そうではなかったとわかった。自分がジャック達へ向けて来た願いと熱意は、ちゃんと伝わっていたのだと。 ジャックの強さと、そして自分への意思を確認できたエンザは、もう悩むことはない、とばかりである。 ジャックへ微笑みつつ、「お前の力でみんなの道を切り開いてくれ。頼んだぞ」と残し、ジャックはそれに無言の肯定を返していた。 ラピス。と、名前を呼んだ時、エンザの表情はこの時一番、心配そうなものになっていた。 そのエンザの心配通りというべきか……ラピスは嗚咽を混じらせ、表情を伏せ、泣いていた。しかし、ラピスの内面の問題は、同じように泣き出してしまったレシィよりも深刻であることを、エンザはわかっていた。 ラピスは限界だった。ダバランのことは魔族の策略であったとはいえ、手を差し伸べるべき仲間と思っていた人に裏切られ、そして自分達に対して好意的なような姿を見せていたリュミルにも裏切られた。人の役に立とうと言う考えを持ち始めて以来、初めてといえる苦難を経験したのだ。 そして、こうして今、自分の力で何も守ることができないというあらがいようのない絶望を前にし……エンザが、ラピス達の身代わりになろうとしている。 ラピスは泣いた、泣きながら語った。 なぜ自分でなく、先生が死ななければならないのだと。 エンザは答える。ここで立つのが、自分のしたいことをし続けてやってきた、恵まれた人生を長く生きた自分の役割であり、これからそれを体験していくため、ラピス達は生きるのだと。 ラピスは納得できなかった。自分に価値があるということを考えなかった。自分は寿命も短く、かつて、他者全てに対してひどい考えを持ち、そう振る舞っていたのだ。 そして叫ぶ、私が死ねば、と。いつも飄々としていた姿からは考えられない、せっぱつまった、悲しい叫びだ。 そしてエンザは、ラピスをできるだけ安心させるようにそっと抱き、語りかける。 大丈夫だ。と。 難しいことではない。みんな、たった1つのことを、ラピスにわかってほしいと思っているだけなのだ。 ……それは、ラピスに、生きていてほしいと思っているということ。それだけの、こと。 寿命が短いということも、かつてひどい考えを持ち、人につらく当たっていたということも……その想いには関係ない。たとえ他人よりも限られている中であったとしても、その中を精一杯に、自分の価値を信じて生きてもらいたい。多くの人が、そう思っている。 エンザは、ラピスのおかげで、いろんな人があることに気づいたんだのだと言った。 自分の思いに。自分がその想いを抱えて生きることに、価値があるということ。 ラピスの行動が、それに気づかせてくれたから。みんな、ラピスに恩返しをしたいのだ。 ラピスにも、それを知ってほしい、と。 今の自分たちにとって、そのことは途方もなく、価値のあることだから。 その上で、かつての「長く生きる」という夢をかなえてほしい。 「お前は儚くなんかない。一人の人間だ。だから生きろ、ラピス」 エンザはそう言ってもう一度、優しくラピスを抱きしめたが、それでもラピスは首を縦には振れず、自分が生き延び、エンザを死地に残すことを承諾できなかった。。それだけ、彼女が受けた心のダメージは深い。 自身の言葉が届かないことを寂しく思いつつも、エンザはラピスの視線をバウラスの方へとむけさせ、突如、バウラスがどのような人間に見えるか、と聞いた。 ラピスはその質問の真意を計りかねるまま、とても強そうであるという感想を嗚咽交じりに伝えたが、エンザはそこで、バウラスは「誰よりも孤独な存在」であると言った。 誰も理解できなかった。誰も寄せ付けなかった。誰も必要としていなかった。 バウラスの心と力は、あまりに世間とかけ離れており、誰もその傍に寄り添える者はいなかった。 しかし、エンザは自分なら、そんなバウラスを「救える」可能性があると、ミトに対してと同じことをラピスへ語った。自分がここでやらなければ、バウラスは永遠に、一人なのだと。 ミト同様、エンザのその発言の根拠が何にあるのか、ラピスが知っていたはずはない。 しかし、かつて常に孤独であり……そしておそらくは、今も心の底に触れられるのを恐れてしまっているラピスにとって、その孤独という言葉は大きな意味を持っているものだ。 そして、ラピスはバウラスをもう一度見る。その時、エンザの言葉、バウラスが誰よりも孤独な存在であるということ、そして、そんなバウラスを命を懸けて……あるいは命を失っててでも、救わなければいけないと決めているエンザの心を、理解してしまったのかもしれない。 力なくラピスの腕がエンザから離れる。エンザはそんなラピスにまるで謝罪するかのように目を伏せつつ、最後にドゥさんへと、シャルリシア寮のエンザの自室の砂肝を食べていい、と言ったが、そんな冗談めいたエンザの言葉に対し、ドゥさんは「砂肝はみんなで食べた方がおいしいものだ」と、普段のキャラ作りを行うそぶりなく答えたが、エンザは、帰るころには悪くなってるから、と返すのだった。 ミルカ。 シャルリシア寮生最後の一人。そのプリフェクトの名を呼んだエンザの顔は、少しだけ曇っていた。 あの時、ミルカに夢を聞いたときは、エンザはすでに、安心していた。 心をまっすぐに、自分の想いを貫ける。 他者を思いやり、他者の想いを信じられる。 自分の力を信じ、そして他人の力を求められる。 その心を持ったミルカが、みんなを率いてくれることに、安堵していたのだ。 しかし、ここでエンザが言った言葉は、人は、どこにだっていける。ということだった。 生きていれば、それを求める気持ちさえあれば。どこにだっていける。 あの時ミルカは、自分が知らない物に触れていくこともすぐ叶うかもしれないと言っていた。そのことを、エンザは確かにそうだと感じた。 人は生きていく限り、新しい何かに触れていく。だから、今の時点で知らないことでも、その時になればなんでもなくわかってしまうかもしれない。 ……だがそれでも、ミルカはより多くのものを見、知りたいという夢を語った。 常に自分から知りたいと思うミルカの夢は、『進む』という、大切なことを、ずっと見失っていない事の証なのではないかと、エンザは思った。 ……だが、ミルカの夢がそれだとするなら。 ミルカ自身のため……シャルリシア寮のために、エンザ達が託した「希望」を成就させてもらうことは、その願いに反するのではないかと、エンザは不安だったのだ。 もしいつか、ミルカがこの学園の外、更に広い世界に行きたいと思っているのだとしたら、これからの時間が、ミルカにとってそれを妨げるものになるかもしれない。 でも、それでも、エンザはミルカに頼んだ。 そのお前の自由を、もう少しだけ、みんなにくれ、と。 ミルカの力が、心が。 「希望」のために。何より、シャルリシア寮生のために、必要だから。 お前なら任せられる。 誰かを信じ、誰かかから信じられる。その力を、束ねてくれ。 エンザは、ミルカにそう願った。 ……ミルカは、頷く。 そして言った。自分の自由は、束縛などされてはいないと。 どんな状態でも、回りにいるべき人々と共に生きていく。その日々こそが、今自分で選択した、進むべき道。 ミルカがはっきりとそう答えた時、エンザは、今までない、晴れやかな顔を浮かべた。 ミルカは、エンザの思っていた以上に、エンザにとって信頼できる人だったから。 その顔を見ていれば、エンザがこれから死地に赴くなどと言うようには、思えなく見えたのではないだろうか。そのせい、というわけではないが、ミルカもまたエンザに、必ず生きてまた会うという約束をとりつけ、エンザは……それに頷く。 そして最後にもう一度、頼んだぞ。という言葉をトッポにも投げかけた。 時間はどれほどたっただろうか。エンザがシャルリシア寮生6人とそれぞれ会話を終えたあと、バウラスが一歩進みでる。 同時に、エンザがシャルリシア寮生達から、心なしか離れた。 「……お前たち全員に、言っておく」 「気にするな。俺はずっと幸せだった。俺は、俺の夢をずっと追っていられた」 「誰もそれを反対しなかった。多くの人が支えてくれた。俺は胸を張って、生きていられた」 「時にはくじけそうになることもあった。でも、自分の力と傍にいてくれる人の力で、立ち上がれた」 「俺の人生はずっとそうだった。だから幸せなんだ」 「お前らには、これからその夢を追うためにできることが、いくらだってある」 「だけど、このままじゃそれすら許されない。お前たちは夢を追う権利を奪われてしまうかもしれない」 「俺は、絶対にそんなのは嫌だ」 「いずれ死ぬために生まれてくるなんて、そんな寂しいことがあっていいはずはない」 この言葉を、エンザははっきりと、シャルリシア寮生達の印象に残るほどの真摯さで言い遂げる。その時、すでにエンザとバウラスの距離は近づいていた。 「お前たちが生まれたのは紛れもなく生きるためだ。そして、自分の信じる夢をかなえていくためだ」 「それを信じろ。……大丈夫、お前たちは一人じゃない」 「みんながいる。例え、俺が今いなくなっても」 「お前たちは、それだけのものを手に入れている」 「……わかったか?」 もうここまで来て、エンザの行動を取りやめさせることなどできない。 シャルリシア寮生達は、それぞれの想いを胸にしたまま、頷いた。 エンザはそこで、もう一度にかりと笑う。 「よし。戻ったら、まずエルヴィラ学長に会え。そして……エーエルに会う方法を聞くんだ」 「あいつなら……これからお前たちが取るべき方法について知っているはずだ。……簡単には、教えてもらえないかもしれないけどな」 「それと……もう一つ。チーフ達だ」 ここで突然チーフ達特別教導実践部の話題が出てきたことに一同は少し驚いただろうが、エンザの残す言葉を聞き届ける。 「あの4人に助けられたんだってな。なんであいつらがお前たちしか入れないはずのところに来れたのか……それは誰もわからねえみたいだったが」 「……実は、あいつらも、俺がある基準で集めたんだ。結果、俺が本当に探してたのはお前たちの方だったが……あいつらが集められたのも、単なる偶然じゃないのかもしれない」 「……だから、あいつらもお前らに助けてもらわなきゃならない時が、くるかもしれない。その時は……ちゃんと、力になってやってくれ」 偶然ではない。ならば、それはつまり、あの場に特別教導実践部の4人が現れたことはやはり何か特別の意味があるのか。 しかし、その「ある基準」について聞ける時間ももうないのだ。……すでに、バウラスとエンザの距離はほぼ接敵状態に近い。 だから、シャルリシア寮生達は、それもただ聞いているほかなかった。 「……生きろよ!」 エンザがそう叫んだのを合図に、シャルリシア寮生達の6人は、エンザの背に守られるような形で一斉に建物の外へと走って行った。 その気になればその瞬間にでも、バウラスが6人を滅ぼせたであろうことはそこにいる全ての者がわかっていた。しかし、バウラスはシャルリシア寮生には手を出さなかった。 ……その代わりに、ただ、目の前のエンザに刺すような視線を送っていた。 そしてバウラスと二人になったエンザは、それまで構えていたナイフを、床に、捨てた。 シャルリシア寮生達に生きて帰るといったにもかかわらず、エンザはその行為を取った。 そもそも、エンザが武器を持ったところで、ヴェンガルド峡谷での時のように、傷一つ付けられないのだ。この行為が勝敗に影響を及ぼすかといえば、その実はない、というのが、無慈悲にも現実の考えではある。 だが、それでもエンザは、ミトやクレハやミルカとの、シャルリシア寮生との約束を守るために、抵抗をやめるようなことなどはするべきでもない、それを承知で、行ったこの行為には当然理由がある。 まず、エンザがまぎれもなく自身の命を捧げるほど、シャルリシア寮生達に価値があることをバウラスに少しでも納得させること。……ここでのエンザとバウラスの間に交わされる「契約」を、バウラスにとって少しでも重いものにすること。そしてそれともう一つ、何よりも。 今のエンザの人生の、もう一つの目的を果たすための意味が、エンザの中にはあったのだ。 武器を捨てる、という行為をしたエンザを無言で見つめていたバウラスへ、エンザは突然、ありがとうと言葉を贈った。当然、バウラスにはそれも理解しかねる。 それを疑問の言葉にしたバウラスへ、エンザは久しぶりにあったとはいえ、短い付き合いではなかったのだから。バウラスのことは、良く知っているという。 人情や、可能性や、希望……そういったものに、エンザの知るバウラスは動かされようとはしてこなかった。 しかし今、エンザが自分の命を張ると言ったことで、バウラスはそれに、納得してくれたのだとエンザは考えていた。 ここで自分の命を失ってもいいと思えるほど、シャルリシア寮生達には希望が残されていることに。 それにバウラスは答えなかったが、続けてエンザは、自分はシャルリシア寮生達と、バウラスを、救いたかった。のだと語る。バウラスは当然、この状況下で発せられた「バウラスを救う」という発言に更なる疑問を持ったが、それに答えるエンザの瞳はどこまでも真摯であった。 この世界で、バウラスに触れられるものは誰もいなかった。でも、エンザはそれであきらめたくなかったのだ。 エンザには……彼には、夢があるから。 その夢のために、バウラスに、自分が生きている価値があったことをわからせる。 必ず、と言うエンザへ、バウラスは、感想などは答えず、エンザがこれから死する存在であることを宣告した。エンザは、それをわかっているというように頷く。 バウラスはそこで聞いた。それでどうやって、その夢を遂げるというのだと。エンザは、それにも答える。 エンザはこの世界で、夢をかなえるためにたくさんのことができた。それは自分のおかげであり……そして、強大な力を貸してくれた仲間、つまりバウラスたちのおかげでもあった。 エンザ自身の人生は意味のあるものだった。それを見つけた幸せを、エンザは長い間感じていた。この権利は、全ての人にあるものだと信じられた。 シャルリシア寮生は大丈夫だろう。全く不安がないとはいえないが、6人それぞれが互いに生きることさえ信じ続けてくれれば、それを見つけられるはず。 それだけの環境を、シャルリシア寮生達は自分で作り出したのだから。 しかし、バウラスはそうはいかないと、エンザは考えていた。バウラスとたかだか十数年仲間でいたくらいで、その「環境」を整えてあげることなどできなかった。 だから。 お前の中に、俺の命をかけさせてもらう。 それが、俺の夢……最後の方法だ。エンザは、そう言った。 それが語る意味が何なのか、もはや、バウラスは問い返さない。 バウラスは手を広げ、無言のままその手をエンザの心臓へとかざす。エンザは、抵抗しなかった。 その手が心臓の表面、胸の部分に触れた時、エンザはバウラス、と名を呼び。 「またな」 そしてその直後、何かが潰される音と共に、鮮血が部屋へ飛び散った。 それは、ある屋敷にて。 神や神聖さに通じる意匠をところどころにちりばめた部屋の中、一人のまだ幼児と言っていいほどの少年が人々に囲まれている。 素晴らしい。と、少年を囲んだうちの一人が叫んでいた。位の高そうな包囲を纏った、初老の男だ。 男は言う。その少年が、まるで神の力をそのまま受け継いで生まれたような子である、と。 その力を持ち、将来は必ずや、歴史に名を残す偉人となる。 それを聞き、高貴さを感じさせる服をきていた一人の女性が、感極まったとばかりに手を組んだ。それは、少年の母親である。 母は、我がスヴァルエルト家にかけられた神の寵愛が、今まさに真の姿を現したのだ、とむせび泣かんばかりに喜んでいた。そして少年はそんな人々の姿を、ただ無言で眺めていた。 バウラス。その名前が呼ばれ、少年は……バウラスは視線を、最初の初老の男へと向けた。 お主はこの力を将来、どのように使う? そう聞かれた時、バウラスが答えることは決まっていた。 「……人の世の平穏のために」 「私はいつでも……この力を、そのために振るいます」 まだあまりに年若いはずのバウラスの発した、その確かな答えに、人々は沸き立った。 素晴らしい。 これで、スヴァルエルト家は安泰だ。と家族は喜んだ。 ……バウラスは、そんな歓声に答えようとは思わなかった。 自分のするべきこととは、見返りを求めるものでなく、つねに神の元に決まっていることを知っていたからだ。……おそらく、生まれた時から、すでに。 自身へ向けられた期待の歓声に、バウラスは触れようとは思わなかった。 少しの時が立ち、バウラスは少年と呼べるほどには成長していた。 だが、その時にはバウラスは、すでに戦場に立っていた。 その力はすでにとてもではないが少年とは思えないほどであり、多くの魔との戦いを勝利に導いたとされている。 ……だが。 駄目だ……もう駄目だ。 一人の青年がそう叫んでいた。あたりには積み重なる屍。そこには人のものの魔のものも多くあったが、すでに青年達に残された戦力は少ない。ゆえに、青年は撤退を扇動しようとする。 だが、そこに一人の少年が現れた。バウラス・ジーク・スヴァルエルトである。 ……だが、青年はその登場に感謝するような表情はしていなかった。何故なら、バウラスが「なぜ逃げるのか」と問いかけたからだ。 敵は目の前にいる。戦おう。そういったバウラスに、青年は思わず反論する。馬鹿なことを言うな、と。 これ以上戦ったら、みんな死ぬ。そう、いくらバウラスであろうが。 そう思えるほどに、その場の状況は絶望的だった。しかし。 「なぜ恐れる」 バウラスはただ一言、そう問い返した。その表情には、恐怖の色も、悲壮の色もない。 「神のため、人のために戦うのだ。痛みも死も、おそるるにたらない」 そういったバウラスは、あまりにも平静だった。……本気なのだ。 ……本気で、バウラスは魔と戦うためなら、自分を含めた、誰が、どれだけ凄惨に命を落としても構わないと思っている。 ……それが、当然だと思っているのだ。 そのことを理解した青年は、行こう、と言うバウラスを、声を荒げて否定した。 お前と一緒にするな!と叫んだ青年の態度は、とてもではないが味方に向けるようなものではない。 自分達とは決して理解し合えない存在……すなわち、敵に対してのものであるといって、間違いはなかった。 その言葉を聞いたとき、バウラス中に悲しみや怒りはなかった。 だが、わずかな戸惑いがあった。……バウラスは思っていたのだ。 この戦いに赴いた人々とは皆、自身の命を魔の撲滅のため捧げたものであるはず、と。だから、それに殉ずることをいとわず戦うという自分の意見が、その中の一人に否定されたことが謎だった。 だからバウラスは、自分たちの志は等しいのではないのか、とさらに青年へ問いかけた。しかし、当然、青年はそんなバウラスを否定し、必死に叫ぶ。 等しくなんかない。自分達は人間だ! みんな大切な物を抱えて生きている。それをこんなむちゃくちゃな形でむざむざ死にたくなんてない。 その言葉を、バウラスはただ聞いていた。そこで、反論しようとは思っていない。そんなバウラスに、青年はもはや、一方的に言葉を投げつけている。 お前に、大切なものなんてないんだろう。青年はそういった。 それぞれ大切なものを持っているから戦い、そして生きたいと思う。それが人だ。 しかし、バウラスが戦うのは、「神からの使命」があるからだ。バウラスが人の世界を守るために戦うのは、彼の感情的なところからくる行動ではない。 そして、青年はその上、バウラスの持つ大きすぎる力にも言及する。そんな化け物めいた力を持つバウラスと自分達が、一緒なわけがない、と。 ……だから、青年は言った。 「お前は人間じゃない」と。 だから、勝手に戦って死んでくれ。 バウラスは、化け物は……人の仲間じゃないのだから。 そう言いながら去っていく青年を呼び止める理由は、バウラスにはなかった。 バウラスはこの時、自身に罵詈雑言を浴びせられたという自覚すらなかった。彼は、自分のために悲しんだり気にやんだりする心など、持っていないから。 だが、バウラスは、一つの事実を感じていた。 自分が、それで当然と思ってしていることは、少なくともあの青年の許せる範囲からは外にあること。 ……そしてそれが、本当に他の大多数の人間にとってもそうだとするなら…… 自分のしていくことを、人々は認めないのかもしれない。 でも、それでも、バウラスは生き方を変えていくことはできない。 ……生まれた時から。少なくとも、彼が意志を持ったその時から。 彼の生き方は、すでに決定されていたのだから。 バウラスは、その戦いでも生き残った。 当然、無傷ではなかった。むしろ重症だったと言っていい。 だが、バウラスはその治癒力……いや、再生力も尋常ではなかった。しかし、どんなむごたらしい傷があろうと、戦うことさえできれば、彼は戦場に戻り続けた。 あらゆるものを犠牲にし、それでもなお魔を、敵を滅ぼすための戦いをつづけるバウラスの姿を見るにつれ、すでに彼を、英雄と手放しで称賛する人はいなくなっていた。 ……それは、バウラスにとって近しいはずの、者ですら。 ある日、バウラスは生家にいた。もともと、戦いのない時はここにとどまっているのである。 だが、それはわずかな期間だ。彼の力を求め、多くの依頼がこの家に集まってきており、バウラスはそれを確認して、自身の判断で今一番に向かうべきだと判断したところへ、すぐ向かってしまうから。 だから、ある時を境に、この家でゆっくりと休みを取ったり、家族と話しあったりするようなことは、めっきりなくなった。……いや、最初から、なかったのかもしれない。 しかし、その時はバウラスへ何の依頼や連絡もなかった。……「ないことになっていた」 そしてバウラスは、母の元へ向かう。 バウラスはそのことを考えもしていなかったが、バウラスが母の元に……いや、家族の元に自分から向かったのは、この時が初めてだった。 始めてバウラスから自分の元へと訪れられた母親は、思わず驚きの声をあげつつ、何の用事かを聞こうとしたが、バウラスがいくつもの書簡を手にしているのを見て、顔色が変わっていた。 その内容は、いつも通り、魔族などを討伐するための援軍要請。それはやはり、この家にと届けられていたのだ。 しかし、それはなぜかバウラスには知らされなかった。「今は何もない」とバウラスは言われたのだ。 その理由をバウラスは母へ聞いた。すると、母は、「忘れていた」と答える。 だが、その内容もさることながら、瞳も言葉もあまりに震えており、それが事実などではないことは誰が見ても明らかだ。……そう、バウラスが見ても。 しかし、バウラスはそんな母を責めることも、追及することもしない。ただ、今後は自分が直接書簡を確認する。といっただけだ。 バウラスが今こうして母親の元にやってきたのは、あくまで何か、致命的な問題があるのかどうかを確認しにきただけであって。 ……そうでない、と母が言うならば、それが真実でも偽りでも、バウラスには全く関係はなかったのだ。 そして、バウラスがその書簡から一つを取り出し、すぐに向かうと宣言すると、母はその行先を確認し、思わず聞き返してしまった。それは、馬車だって5日はかかるような道のりであり、それではすでに作戦の開始日に間に合わないから。 だが、バウラスは答えた。「不眠不休で聖魔術を使えば、2日でたどり着く」と。 何も問題はない。一点の曇りもなくそう言い切ったバウラス。そして、その時ついに。 母親の感情が、爆発してしまった。 母は、やめて、とまず一言発した。 もう、あなたは戦わないで、と続く。 その言葉に、バウラスは振り返った。しかし、その瞳は決して、突然の母の言葉に、心配しているようなものではない。 あくまで、自分に対して語りかけられているようなので、それを聞くために振り返った。バウラスにとってそれだけのことなのだろうと、母親である彼女にはよくわかってしまう。 そして、堰を切ったかのように、母は一気に嘆きだした。 バウラスは、誰とも心を通わせない。誰も認めない。誰も、バウラスについてこれる人はいない。 そんなバウラスが戦えば戦うほど。家族である自分達もまた、全ての人から置き去りにされてしまう。 そう語った彼女の言葉は、事実だ。 もうすでに、実際にバウラスを見た多くの人々は、彼を英雄とは思っていない。 あまりに洗練されすぎている神の道具は、すでに人の手に扱いきれるものではない。そう語りつつ、人々は、バウラスを物と思うしかなかった。 バウラスは、そんな扱いにすら何の異も唱えない。そんな存在が生まれた場所だということに……帰ってくる場所だということに……人々は、スヴァルエルト家を気味悪がるようになってしまい、距離を置いてしまう。 だから母は、バウラスへとついに言った。 「もうこれ以上、私達を苦しめないで」と。 しかし、バウラスは全く表情を変えていない。 怒りも悲しみもなく、謝りもしない、そんなままに、バウラスはただ、「なぜですか」と聞く。 自分が戦うことで、より早く確実に、人の安寧は保たれる。自分に戦うなというなら、それを拒否することとなる。 そう問われ、母はバウラスの瞳を正面から見れなかった。顔を伏せ、もはや涙すら流しつつ、自分達は、自分たちの家族を、とつぶやく。 きっとその言葉は、自分達のいる、スヴァルエルト家の名誉を、地位を。……あるいは、バウラスという強すぎる存在が狂わせてしまった人々の心を、守りたいということだったはずだろう。 しかし、バウラスはその言葉にすら、全く心を動かさない。そして、言った。 「仮にこの家が滅びようと、人の安寧を保つことこそ我々に課せられた使命です」と。 この時。 確かに自分が生み、この家で育ったはずである存在のバウラスから その価値を、全く特別に感じていないと言われてしまったことで。 バウラスの母親の中で……最後の、何かが切れてしまった。 彼女は叫ぶ。 「お前は……お前は私の子じゃない!」 もう、何も彼女を抑えることはできない。 自分の考えが何一つ及ばない存在を、彼女はもう自分の息子とは思えない。 母は言う。バウラスは、生まれてからずっとそうだった。 親である自分や兄弟たちにすら……誰に対してもずっとその、全く関心に思っていない眼を向けていた。 まるで路傍の虫に死を宣告するかのような冷たさと言っていい。そんな眼を親に向ける子など、いていいはずがない。 そして、母は恐らく護身用とされていたのだろうナイフを手に掴み、彼女の全力でバウラスへと振り下ろす。 だが、バウラスの肌にその刃が振れることはない。彼の周囲に展開された魔力の障壁が、その一撃をやすやすと弾き返す。 しかしそれでも、母はナイフを振り下ろすことをやめなかった。 お前が、お前が、お前が。 お前が笑わないから。 お前が誰も理解しないから。 お前が強すぎるから。 お前が家族すら邪険にするから。 アーケンラーヴ様も、アエマ様も、グランアイン様も、ゴヴァノン様も、ダグデモア様も、ダナン様も、ブリガンディア様も。 もしバウラスが神の力を受けた子だと……そういった正しき神達によって導かれた子だというのなら、このような人を踏み外した存在が生まれるはずはない。 そう言った一言一言と共に、母はナイフを打ち付けつづけたが、それは障壁を削ることすらできていない。ついに腕が消耗しきり、母はナイフをその手から話してしまったが、それでも、その視線はバウラスを非難するように向けられ続けている。 「お前は、正しい存在ではない!」 バウラスはしばらくの間、母の途切れることない呪いの言葉を、表情を変えることもなく聞き続けていた。 更に後に……バウラスは、ディアスロンドにいた。家にいることもできなくなった彼は、やがてディアスロンドの神聖騎士団……神の意を代行するという、神の存在と威光を盲信する組織に入団したのだ。 だが、そこですら、すでに人をやめていると言われるバウラスの存在は異端だった。人々はバウラスを「神の武具」という異名で呼び、その戦いや考えに付き従えば逆に死ぬ確率が上がるとまで言われ、バウラスはただ避けられ続けていた。 そして、ある日、その神聖騎士団すら追い出されることになる。 神聖騎士団の団長……誰よりもその理念を体現した者といわれる存在、クリュー・ラスタリートによって、バウラスは詰問されたのだ。 クリューは、バウラスが7大神、及びそれに準じた小神による正しき神の啓示をうけていないと断言したのだ。 本来、神から使命を受けた存在には、それにより信仰するべき神と、その使命が存在しているはず。だが、バウラスは自分へ使命を与えた神の名をかたることができず、またその使命も、「人の世の安寧を守る」という漠然としたものだ。 神聖騎士団に所属するものは、その実力だけでなく、神に課せられた使命の正しさと重さを理解していなければならないとクリューは語った。バウラス以外が知りえない「神」を根拠に活動するバウラスのことを、認められないというのである。 最終的には邪神の類がバウラスにからんでいるのではないかという嫌疑までかけられそうになったバウラスだったが、クリューのその理論はもとより、神殿騎士団の仲間といえるはずの人々ですら、皆がバウラスがすでに人とは異なる存在であると認識しており、そんな中で、バウラスがそのまま神聖騎士団に残っていることができる理由などあるはずもなかった。 ……バウラスがエンザの胸に当てていた手を引くと、支えを失い、ドサリと音を立ててエンザの体は倒れた。 その胸の部分よりまき散らされた血液は周囲の床やバウラスを濡らし、凄惨な光景を映している。 ……しかし、エンザの顔は苦痛にゆがんだものでなかった。 まるで目を閉じて祈るような……静かなものだ。 そんなエンザの顔を、バウラスは眺めていた。 そこがどこだったのか、バウラスははっきり覚えていない。 居場所を追われ続けていたのだから、何でもないようなところであったのは確かだろう。 もとより、居場所を求めていたわけではなかった。彼が己の中にある使命にそって戦うことは、特定の場所でなければできないことではない。 だが、そうしているうちにたどり着く場所全てで、バウラスは否定された。誰も、バウラスと共にいることを肯定したがらなかった。 だから、その時のバウラスは、ただ自分のできる範囲のことをしていたはずだ。 その時、エンザとバウラスは、初めて会った。 今から20年近く前。 そのヴァーナの男……エンザはは、バウラスを見かけると、バウラス・ジーク・スヴァルエルトではないのかと声をかけて来た。それにそうだと答えると、男は自分の予想が当たったことを喜びつつ、しかしなぜ強者として有名なバウラスがこんなところにいるのか、と聞いてくる。 バウラスは、特に深い理由は答えなかった。彼自身、語って聞かせるような深さを感じていなかったのもある。 結果、ただ今はできる範囲でできることをしているだけだ、というような答え方となってしまった。そしてエンザはそれを聞くと、なら、自分と一緒に来ないかと誘い掛けたのだ。 エンザは自分の夢を「自分の人生を諦めなきゃいけないと思ってるやつを一人でも多く救うこと」だと語った。そのために世界中旅してるのだと。 その夢が、バウラスを相手にしても誇れるものだと信じているとエンザは胸を張り、だから、そのために手を貸すことは、バウラスにとっても意味のあることのはずだと言った。 エンザの語っている夢が本当か、エンザを信用するべきなのかどうか、ということを深くバウラスは考えなかった。 滅ぼさなければならない時には、何のためらないもなく排除できるのだから。 だから、バウラスは一時、エンザに力を貸し、共に旅に出ることにしたのだ。 その後、旅の間、バウラスはエンザを殺そうと思ったり、手を切ろうと思うことはなかった。 エンザはかつて自分に語った夢に対して確かに実直であり、また悩み困る人々を放っておけないお人よしでもあった。その旅についていくことで、バウラスにとって滅ぼすべき相手である存在とも会敵する機会や、人を救う機会は多かったからだ。 旅の途中、バウラスの存在に何やら興味を示したらしく出会うこととなったハルファスとエーエルという、人としては強力すぎる力を持った存在を、エンザが何故か仲間に加えることに成功したこともあって、旅路は順調であった。 ある時、エンザはバウラスに語っていた。エンザの目的の一つ、「邪神の祝福」に侵された人を救うということに対して、エーエルが邪悪化について研究している魔術師、ク・バルカンを参考人として教えたあとのこと。 そこから手がかりを見つけ、いつかもう、邪神の祝福に侵されてるから殺さなきゃならない、といったような、そんな悲しすぎることをなくしてみせると語り、だから、もう少し力を貸してほしいとエンザは言った。バウラスに、それを断る理由は特にない。 だが、それを語っていた時のエンザの様子が、まるでバウラスにも何かを言い聞かせたいかのようなものだったことについて、バウラスは気にしていなかった。 ……そして、その時。今より十年ほど前(第十一話冒頭参照)。 エンザとバウラスは邪神の祝福より人を救うための薬を持ち、邪神の祝福に侵されたことで隔離して住まうことを避けられなかったヴァーナ達が住むという隠れ里のある、ヴェンガルド峡谷に向かった。そして、一部の人々にはその薬を服用してもらえたのだ。 だが、残りの一部、自分達が邪神の祝福を抱えることで迫害され続けたことに心をゆがませた人々はただ融和することを拒み、その薬を受け入れなかった。エンザとその人々は口論になり……その中で、バウラスがそのような考えを持つに至ったヴァーナ達は、全て滅ぼすべきと判断してしまう。 その結果…… 小屋が一つ、ぐしゃぐしゃにつぶされている。つい先ほどまで、エンザとバウラス、その他十名弱ほどのヴァーナ達がいたところだ。……そこにいたもので生き残っているのは、エンザとバウラスしかいない。 その前で地面にうずくまり、涙を流しつつ、エンザは、バウラス、と名前を呼び続けた。その言葉の中に、怒りと悲しみ……そして、なぜか憐みのようなものを込めて。 バウラスは、少しの沈黙の後、するべきことを行ったと語った。エンザは小屋の中の時同様、もっと時間をかけて話すべきだったのだ、と言ったが、バウラスは再度それを跳ね除けた。そんなバウラスに、エンザは、バウラスが人にあきらめをつけるのが早すぎると慟哭する。 こんなことはあってはならないはず。 それぞれの未来があるはずの人間が、生まれてきたときの勝手な理由のせいで、その生き方、そして死に場所を定められてしまう。 そんなこと、辞めさせようと思わなきゃならないのではないか、とエンザは強く叫んだ。 バウラスは答えない。そのエンザの主張自体は同意できても、ここでしたことは確かに自分の意思で判断したことだから。 エンザがさらにバウラスへ言葉を投げかけようとしたとき、第三者の声が突如聞こえた。 やってきていたのは、猫族の少女だ。その表情は蒼白である。 少女は、見るも無残な惨状に、兄とその周囲にいたはずの者達の名前を呼んだ。……少女は、あの時エンザと舌戦をしていたヴァーナ達のリーダーらしき猫族の青年にどことなく似ており、その妹であることを、エンザは知っていた。 少女はしばらく小屋のところをさまよっていたが、しばらくすると、エンザではなく、バウラスをまっさきに、憎々しげににらみつけていた。 実は、少女はエンザと出会い、その薬を飲んだことによって邪神の祝福から逃れつつあり、それによって、エンザのことは信用していたからだ……だから、それをしたのがバウラスであろうと、すぐに察したらしい。 お前がこんなことをしたのか、バウラスに対して、正面からそう言った少女に、バウラスはただ頷いた。 人殺し。あらゆる憎しみの感情を持ってそう吐きつけた少女の視線を受けつつ、バウラスは去って行こうとする。正しい行為をした以上、償いなどないのだから。 しかし、そこでエンザが突然、その少女を抱きしめていた。そして、すまない、と繰り返す 自分を救ってくれたエンザの突然の行動に少女は驚いたが、エンザは、悪かったのは自分だ、と泣きながら言った。 あのような状況になってしまえば、バウラスがああしてしまうのは、長年共に旅をしてきた自分にとって分かっていた事のはずだった。だから、自分が何とかしなければいけなかった。 自分の心を折ったから、バウラスにあんなことをさせてしまった。だからエンザは、自分が、少女の兄たちを殺したのだと。 だから、といっていいようなことではない、だがそれでも。 エンザは、一生をかけて今日のことを償っていくと少女に誓った。 まるでバウラスの所業をかばうかのようなエンザの行動に、バウラスが疑問を感じていなかったわけではない。 しかし、そこで少女とエンザの間に割って入ることをバウラスは選択しなかった。 そして……そのエンザの言葉に、少女は少し黙り……答えた。 私は、エンザに感謝している、と。 自分の邪神の祝福が治ったらどれだけいいんだろうって、ずっと思っていた。エンザは、それを叶えてくれた エンザの、自分達を治したいって気持ちだって、本物だったって信じられる。それは、今だってそうだ。 「だから」 その時ふと、バウラスは振り返った。 「私は、お兄さんを恨んでなんて、いないから……」 そう語る少女の表情はひどく、異質だった。 笑顔を作ろうとしているのかもしれない。しかし、実際には顔はそのように動いてはおらず、むしろ、少女の中の悲しみや怒り、あらゆる荒れ狂うものを無理やりに押し込めているかのような、やけに深い瞳だけが印象に残る。少女はそれでも、自分は笑顔を向けられていると思っているのか、言葉だけは優しく、エンザを許していた。 そんな少女を見て、エンザもまたさらに涙をあふれさせ、すまない、と繰り返していた。もう今は、それしか思い浮かばなかったのだろう。 エンザは言う。もうこんなことはおこさない。 俺の命を懸けて、みんなを救うから。 俺は、そのために生きるから。 だから。と。 そこでバウラスは向き直り、今度こそ振り返らずに去って行った。 しかし、その時のエンザの言葉は、なぜか、バウラスの耳にはよく届いていた。 ……それが、その時のエンザの言葉は、少女や集落の他の人にだけでなく、自分にも向けられていたからなのではないかと、バウラスは今になって気づいた。 今。 バウラスはエンザの絶命を確認すると、自分の手を覗いた。その掌はエンザの血液で余すことなく濡れ、真紅に染まっている。 バウラスはそれをぬぐわなかった。そしてそのまま建物の外に出て、天を見上げたのだ。 そしてふと、バウラスは自分が今まで殺してきた「人」の事を思い返していた。 それは、バウラスが、エンザがかねてから自分へと向けていた言葉を。 「もうあんなことはさせない」ということの意味を、考えていたからなのだろう。 バウラスは長い間、そのまま動かず、シャルリシア寮生達を追いかけようとは、しなかった。 その理由を知っていたのは、誰なのだろうか。 ……一方。 謎の光にざわめきたっていたエルクレスト・カレッジを、その混乱に紛れる形でなんなく抜け出したリュミルは、そのままエルクレストの街も脱出しようとしていた。しかし、そこで突然彼女の名が呼ばれ、リュミルはそちらへ振り返った。そこにいたのは、ナタフとシズナだ。 二人を確認すると、リュミルはあからさまに二人を……特にナタフを見下しているかのような態度になり、ろくに使命も果たせなかった学園生活は楽しかったか、と言った。シズナは全くの無言だったが、ナタフは今はそんなことに答えている場合ではないとリュミルに詰め寄り、なぜ勝手に行動したのか、と問い詰めた。ナタフ達には、リュミルがバウラスからの力を得た転送石を使用し、シャルリシア寮生達をまとめて転送したのだということがわかっていたのだ。 しかし、リュミルは全くその不遜な態度を崩さない。そして、知らなかったのはナタフだけである、と答えた。 シズナを通じて、リュミル達はナタフの様子が最近になるほどおかしくなってきているということを聞いており、そんな今のナタフに、作戦を知らせる必要はないと判断したのだという。 そういわれたナタフであったが、彼はそこで、自身が信頼されなくなっていることについて追及はしなかった。だが、シャルリシア寮生達をどこに送ったのか、なぜそんなことをしたのかはさらに問いただそうとする。そんなナタフに呆れるかのように、リュミルは答える必要はない、と突き放そうとしたが、そこでリュミルの代わりに、ナタフの問いに答える者がやってきた。ザムトである。 ザムトからシャルリシア寮生達がバウラスの元へ送られたということをナタフが知ると、もはや隠す意味がなくなったと思ったのか、リュミルはあからさまに不機嫌になりながら、乱暴な口調でその理由も説明した。 ダバランの一件があったらしいことをリュミルやシズナから聞いたバウラスが、ついにシャルリシア寮生達を、生かしておけばより人の世に混乱をもたらす者達であると判断し、その処刑のため例の転送石を使用して自分の元へまずシャルリシア寮生達を送るよう、リュミルへ指令を下した。残りの一人、今はエルヴィラの元で意識不明となっているダバランに関しては、機会を見て同じく処刑することを、ダバランは考えているという。 疑わしい奴なんて、すべて殺してしまった方がスムーズでいい。そう語った後、リュミルは突如会話に割り込んできたザムトに不満を漏らしつつ、ザムトが予定より遅れてきたことの理由を聞くと、ザムトは「殺すわけにはいかなかったため、加減に苦労した」というようなことを答える。 だが、ナタフにとってはそれどころではない。バウラスがシャルリシア寮生達を処刑することを決め、そしてすでにシャルリシア寮生達はバウラスの元に送られたという情報を聞いた彼は、言葉を発することもできないほどに愕然としていた。 だが、そこで今度は、シズナが口を開く。そこで彼女が言った言葉は、「なら、ミルカ達は死んだのだろう」ということであり、冷たい表情のまま放たれたその言葉に、ナタフは思わず食って掛かる。 バウラスの強さは、ここにいる4人は誰もがよく知っている。いかに学生ならざるレベルの力と、それを活かす連携力を持つシャルリシア寮生達とはいえ、天地がひっくり返ったとして、生まれた時よりあらゆる魔を討つ力と使命を負っていたと言われる、「神の武具」バウラスにかなうはずはない。 だから、シズナのその感想は至極当然と言えば当然ではある。だが、それでもナタフは、シズナにそれでいいのか、と問い詰めずにはいられなかった。 だが、シズナはそんなナタフの鬼気迫る表情にも全く動じない。感情を全て沈めたのような無機質で冷たい瞳でナタフを見返し、すでにミルカだけでなく、ジャックとラピスのことも確認しているといい、ゆえにもはや、何のためらいもないと言い切った。 人の世の安寧のため、それを乱しうるものは全て捨て去る。それこそが正しき判断だとナタフの情を切り捨てるシズナ。しかしナタフは、さらになお、シズナへシャルリシア寮生達には可能性があったはず、と説こうとしたが、そこで、疑念の瞳を向けるリュミルに介入される。 かつてリュミルが知っているナタフは、今のようなことを言いだす人間ではなかったはず。 自分で、自分のことをゴミだと思っていた。だから、何にも興味を持たず、ただ正義の力としてそこにあるだけだった。それこそが、リュミルにとっても、他の者にとっても好ましいナタフの姿であったはず。 一年くらいの学生生活で、一体何があったというのか、という疑念をリュミルはナタフに向ける。しかし、それに無言となったナタフに対し、ザムトがフォローするかのように割り入り、これ以上そういった問答は無用だろうとリュミルを窘めた。 もはや、この世に残る同志は、バウラスをのぞけば自分達4人しかいない。その4人の中で仲たがいばかり起こしたところで仕方ないとザムトは言うが、リュミルはそれはあくまで今の事であり、バウラスが呼び集めればまた増えるはずだ、とザムトへ反論するも、今バウラスはそれをしないということが、その判断であるとザムトも返答する。リュミルはまた少し不機嫌そうになりながらも、まあそれでも、入る先から死んでいくやつばかりでうんざりしていたところだと言い、あくまでバウラスの方針に異を唱えるつもりはないようだった。 シズナがそのザムトとリュミルの会話の中、バウラスが追加の人員を集めようとしていないことについてを確認したが、その時ナタフは、「それは恐らく……」と、何か思い当たることがあるかのような発言をした。それをまたもリュミルが聞きつけまだ何かあるのか、と聞き返したのだが、ナタフは首を横に振り、今は、バウラスに会いに行こうと言った。 もともと、バウラスからの指令であったため、作戦が終了後は特定のポイントで待機していれば、バウラスから連絡を取ってくれるということになっていたとザムトはいい、それをザムトに勝手にナタフ達へ伝えられる形となったリュミルは露骨に舌打ちしつつも、さすがに仲間である二人の同行の拒否まではするつもりはないらしく(ただし、結局一番働いたのは、自分なのだから、横からしゃしゃり出るなとはいっていたが)4人はエルクレストを抜け移動していく。 そして、その移動中、ナタフは脳裏に、シャルリシア寮生達のことを思い描いていた。 もし本当に、バウラスが直接シャルリシア寮生達へ手を下したとするなら、どう考えても勝てる可能性は0であり、切り抜けられる可能性すら、わずかだろうと存在しているのかすら疑わしい。 ……ならば、ジャック達は。 シャルリシア寮生達は、本当に死んでしまったというのか。 彼らにかけていた人々の想いは、無駄だったのだろうか?ナタフは、そう思わずにはいられない。 だが、そこで彼は一度、その絶望を振り払った。 まだ。 まだ、全てが終わったと、本当に分かったわけではないのだ。 例え今これほどの……全く未来が見えない場面であったとしても、「その瞬間」が確かに訪れる最後の時まで、希望は持ち続ける。 ナタフは、そのことを、エルクレスト・カレッジに……シャルリシア寮生達に、教えてもらったと思っているから。 だから。 どうか、生きていてくれ。 シャルリシア寮……! その時は、来た。 君たちは自身が世界の脅威となりうる存在であることを知り、そして、その根絶を狙う者、その成就を狙う者達が一斉に動き出す。 そして、その結果、君達を導く一つの命は、消え去った。 この物語の終わりはどこにあるだろう。 死こそが全ての終焉であり、それはすぐそばのものだろうか。 君たちの道は暗く閉ざされ、一歩先ですら奈落に落ちる回廊のように思える。 もし、この道を進む方法があるとすれば。 それは自身の、あるいは他者の持つ「信頼」という灯のみなのかもしれない。 その灯を、確かなものとして保つことができるかどうか。 人の想いを、つなげられるかどうか。 君たちの物語はまだ、続いている。 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 PC達がこのシナリオで出会ったキャラクターまとめ 共通 ダバラン・テレミナス アルゼオ・ヴェルダース 「歌歌い」ウィルテール 「赤い服の」マリー チーフ イッシー・ハッター フェイエン エンジェ・ウィラン ガイブ サイオウ・アマガシ 部長 ドゥーラ シズナ・ミナモリ マゼット ナタフ セイ メギアム アーゼス・ジェセン マルティン・カナール エルヴィラ・アルディリケ リュミル ザムト・アンリ・ゲスト※(名前だけ) エンザ・ノヅキ バウラス・ジーク・スヴァルエルト
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第十弐話 三成不敵 <塔内> スタート地点は 赤扉は→■ ■ こんなの ■ ■ 1 ×ボタンを押して2階へ。ロベルトで扉を開けて赤の機械壊す 2 はしご上って3階へ。アイテムとったら、真ん中に戻る 3 レバー1回倒し、次の扉へ。地下扉の紋章 緑をとったら戻る。 4 レバー1回倒し、ロベルトでドア開け、緑の機械壊す 5 はしごを降りて緑の紋章を使い中へ。紫の紋章ゲット 6 真ん中へ戻り、レバーを倒し、×ボタンを押し1階へ 7 緑の扉に入り、お初で向こう岸へ (このときくぼみの下のはしごを上ってお初でアイテムが取れる) 8 ロベルトに戻し、はしごを上って3階の黄色い機械壊す 9 2階に戻り鉄の扉をロベルトであける 10 ×ボタンを押して2階へ。扉に入らず、レバーを倒す 11 鉄の扉をロベルトであけて、はしごで下に。 12 紫の紋章を使って、扉を開け、弐号制御器扉の鍵を入手 13 真ん中に戻り、レバーを倒し×ボタンで下に。 14 緑の扉を入って凹くぼみを渡り、鉄の扉をあけ真ん中に戻る 15 水色の扉を開けて、はしごで上に向かう。 16 水色の機械を壊す。13の地点まで逆走して赤扉に入って終了。 *ただのメモなので間違ってたらごめんなさい*参考に ■アイテム 堺・豊国幻学舎地図 ???(文書) 術士の指輪 力石 鬼札 地下扉の紋章 緑 兵法書 沢庵日誌 八 秘薬(全) 地下扉の紋章 紫 発明書 弐号制御器扉の鍵 友情の襟巻き 鹿の角(お初) 心薬(全)(お初) 心石 大勲功の宝珠 鬼眼護法の首飾 鬼石 秘薬(中) ■カラクリ <その1> ・3×3 残手数4 孔雀の指輪 *回す4つの玉の中心を 12 34 とすると →3221の順 <その2> ・5×3 残手数4 零式の手甲 *回す4つの玉の中心を 12 34 56 78 とすると →7524の順 <その3> ・4×4 残手数5 巌 *回す4つの玉の中心を 123 456 789 とすると →61248の順 ■鬼武侠 <その1> 目標:金剛×6 制限時間 2 00 金 オルトリンデ 銀 胴 ■ボス 三成(クローディアス) 邪気は×ボタンでちゃんと吸収すること。
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【作品名】コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー 【ジャンル】漫画 【共通設定】 ギアス・ユーザー……エデンバイタルにアクセスすることで使用できる宇宙の理を捩じ曲げる力の使い手。 作中で判明しているのはギアスは契約によって得る、特殊な改造によって人工的に得る(イレギュラーズ)、生まれながらにして得る(ワイアード・ギアス)、の三つの方法がある。 イレギュラーズのような例はあるもののそれ以外は反作用はないとされている。 ちなみにギアスは基本的にはロボ戦で使用して戦っているが、生身でも使える。 ワイアード・ギアス……ワイアード(つながりし者)。契約無しにエデンバイタルにアクセスする事ができる。 ワイアードの使うギアスは「ワイアード・ギアス」として区別され、契約に基づくギアス能力と併存可能で、反作用もない。 ギアスの中でもワイアード・ギアスは特別で契約に縛られるギアスとは違い、 ワイアードと呼ばれる者は神(エデンバイタル)に匹敵する力を持つ設定とされている。 イレギュラーズ……特殊名誉外人部隊の名称。この部隊に所属している者は全員ギアス能力の使い手。 基本的にはエデンバイタルとの契約者又はワイアードのみがギアスを使用できるが、 C.C.についての研究成果を基にC.C.の細胞を埋め込まれ人工的に能力を植え付けていることによってギアスを行使している。 ギアスの行使は人間ひとりで許容できるものではなく、特殊な方法でギアス能力を得ているイレギュラーズのみ反作用がある。 短時間で身体を蝕むので「C.C.細胞抑制剤」を定期的に投与しなければならない。 が、それも気休めで体を蝕んでいずれ魔女の細胞に取り殺される。要はまがいもの。 KMF……ナイトメアフレームの略で基本的なタイプは4m程度のあまり巨大とはいえない搭乗型ロボット。 普通の兵器の砲撃ではダメージを与えられないくらい頑丈。 中には量子シフトで形成されているKMFもいる。初めからKMFに搭乗してる状態でエントリー。 【備考】環境ルールにより、作中世界と同条件の環境下で参戦しているものとする。 【名前】アリス&ネモwithコードギアス(正式名称不明) 【属性】元特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)所属員のナイトメア・オブ・ナナリー(ナナリー姫の騎士)withアリス・ザ・コードギアス 【大きさ】アリスは女子中学生並み&ネモは魔道具の状態の姿なので数十cmwith4m 【攻撃力】反物質攻撃が可能。質量とエネルギーの対消滅を起こして250mの規模で消し飛ばした。 【防御力】並みのKMFよりは防御力高いか 【素早さ】特殊能力を使う前からロロやそのロロと戦えるキャラクターとも互角に戦えるので無限速反応。素の戦闘速度も無限速。 ただし素の移動速度は機体の大きさ相応。 【特殊能力】元イレギュラーズだがネモとの契約によりギアス能力の反作用がなくなった。 エデンバイタルの高次元にアクセスして事象の本質を認識する。これにより、相手の能力を一瞬で見破り、理解。 ザ・スピード……加速する能力。加重力で相対的に超高速を得る能力。こちらは特筆すべきことはないので省略。 ザ・コードギアス ゴットスピード……加速を無限大に増幅させる。 時間を限りなく無(ゼロ)にして時間停止させるロロの能力でテリトリー内でも 時間が完全に停止してるわけではないので加速を無限にすることにより停まらずに戦闘可能。つまり時間停止能力耐性有り。 無限速反応の相手が全く反応できずに圧倒できる戦闘速度。移動速度も無限速。反作用がないので長時間この能力を使用可能(つまり、長距離移動速度も無限速だと思われる)。 量子シフトによってコードギアスは離れた場所からでも召喚可能。 【長所】無限大に加速できる能力のおかげで最強、実際劇中でも負けなしだった 【短所】作中では一度だけしか戦闘しなかったのでろくに描写がない、あと属性がやたら長い 【備考】アリス・ザ・コードギアスに搭乗した状態で参戦 【参考】 【名前】ロロ・ヴィ・ブリタニアwithヴィンセント 【属性】エデンバイタル教団枢機卿異端審問官withギアス伝導回路搭載型KMF 【大きさ】男子高校生並みwith4.5m 【攻撃力】KMFの両肩にハドロン砲(粒子兵器)装備。一発だけでもKMF1騎を破壊可能。 数十発連射可能でちょっとした規模(20mくらい?)の爆発を起こしてKMFを破壊した。射程100m。 腕の部分にもライフルが装備されており数発撃ち込むことでアリス&ネモwithコードギアスの外骨格のみを破壊した。射程16m。 剣も装備している。 【防御力】アリス&ネモwithコードギアスの対消滅を一発撃たれただけなら片腕が切断される程度で済む。(連撃で数発撃たれたらやられた) 【素早さ】能力により、戦闘中に無限に加速したことによって動いているアリスwithコードギアスの動きを認識できたり、 無限に加速した動きによって喋れている口上の途中で割り込んで話したりしているので無限速反応。 また、この反応で何人かのキャラクターと互角に戦える戦闘速度。移動速度は機体の大きさ相応。 【特殊能力】ジ・アイス……テリトリー内の対象の森羅万象の運動を一定時間停止させ、時をも止める。 事象の世界線を微分し、時間を限りなく無(ゼロ)にする能力。時間停止中でも本人や搭乗ナイトメアは動くことができる。 なので完全に時間が停止しているわけではないが時間を無限小にまで無にしているので時間停止の描写は他の作品のキャラクターのそれと全く変わらない。 さらにすべての運動を停止させることにより、周囲を対象を急激に冷やして氷結させることもできる。 弱点は効果範囲が限られていること。テリトリーの範囲は30m程度。 量子シフトによってヴィンセントは離れた場所からでも召喚可能。 【長所】強力な時間停止の氷結のコンボ 【短所】たしかキングゲイナーにもこんな感じの能力あったよね vol.4 299 :格無しさん:2011/08/04(木) 05 43 31.20 ID 1ZJqc15c アリスwithコードギアス 同じ無限速のティエラから下がっていく ×ティエラ 確率操作負け △シビル 攻撃効かない当たらない 以下、惑星破壊直下まで分け続き(セツコ・オハラに負けるか?) ○聖柱ゼレーニン 攻撃範囲が相手の8分の1くらいなので削り勝ちできるだろう △源静香 でかすぎ分け ×*2赤木カツミ>アヤネ 常時能力負け △極上のサルバトーレ 勝てない負けない ○チルノ 攻撃し続けて勝ち これ以下には負けないだろう 極上のサルバトーレ=アリスwithコードギアス>チルノ あと聖柱ゼレーニンは考察してないだけで直上の鴇羽舞衣に勝てると思う
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\\ \ヽ _ -----、 \\ \ // / `ヽ、 \\ /フ/ ., ' } \ \ヽ / /{ / l ヽ、 | } // l l f / / イ | | . // l { |ヽ / // { | | . // l ! l、 \ / /ノ r-‐イ } | l/ | | !ヽ `ー―r―´ r‐ニ-´ / / / |{ l l 、」 ヾー┐ } 「 ノ / / ll 〉l \ l { // // --// ヾ ヽヽ \_-、 \ / ,.‐ ´ ∠--´.// / \ ヽヽ ヾ ヽ、 ノr、 / // / \ \ヾー―――->- ゝイ7´ ∧ミ-ニ ´- ´ _ -―<― ` ヽ、 \\ rイ .i { / { ゝニ‐"-=ニ‐" -― ̄ ヽー、 \ \\ / / | Lム-ニニ´/ / / / ヽ ゝニニゝ- \ニニムト=ニニ‐ _ / _/./ / -} |\ゞ^―――― ´ /ヘ ヽー―‐  ̄ _/ / /´ | | \\ // `ヽ――  ̄ / 名前:ゼロ 性別:男 原作:コードギアス 一人称:ルルーシュと同じ 二人称:ルルーシュと同じ 口調:ルルーシュと同じ AA:コードギアス/ゼロ.mlt 「黒の騎士団」を率いる仮面の男。 ルルーシュ・ランペルージが素性を隠して活動する際の姿。 ルルーシュの変装姿、あるいは仮面の人物として用いられる。 キャラ紹介 やる夫WIki Wikipedia スパロボWiki アニヲタWiki ニコ百 ピクペ 登場作品リスト タイトル 原作 役柄 頻度 リンク 備考 正義漢天童ルルーシュ、仮面ライダー(仮)になる オリジナル仮面ライダー ルルーシュが変身した仮面ライダーゼロ 主 第1話 あんこ 戦え!聖杯戦隊サーヴァンツ!! オリジナル やらない夫の扮するシタラヴァ総帥ゼロ 主 まとめ 完結 キル夫は野生のライダーのようです 仮面ライダーアマゾン ガランダー帝国首領・ゼロ大帝役 常 まとめ エター やる夫達は鳥人戦隊のようです 鳥人戦隊ジェットマン ラディゲ役、バイラム幹部 常 まとめ 完結 CR やる俺達 オリジナル野球もの 球団『所沢猫ちゃんず』の監督。優勝のためには犠牲も厭わない 準 第1話 あんこ 完結 やる夫はポケモン世界で何かを成すようです ポケットモンスターDPt 黒の騎士団のボス 準 wiki R-18 あんこ時々安価でクトゥルフ神話TRPG クトゥルフ神話TRPG シナリオ「その腕、買います」に登場する、ゼロと名乗る初春飾利の顧問 脇 登場回 wiki R-18G 安価あんこ 異世界転移したやる夫は世界を祝福する風になるようです オリジナル 魔人 脇 スレ エター 王様自ら150Gで旅立つ大冒険 オリジナル 魔族の魔王 脇 第1話 まとめ あんこ 最終兵器ヤルオ バオー来訪者 ウォーケン役 脇 まとめ 完結 新・やる夫達は警視庁特別救急警察隊のようです メタルヒーローシリーズ等 ネロテーラ首領ゼーロ 脇 まとめ 予備 できない子はマスターソードを手にするそうです ゼルダの伝説 神々のトライフォース 司祭アグニム&ガノンドロフ役 脇 まとめ 予備 完結 ドラゴンクエストⅣできない子と導かれし者たち ドラゴンクエストIV ピサロナイト役 脇 まとめ 予備やる夫Wiki 完結 パルスィは宿を繁盛させたいようです オリジナル 山賊グループ「黒の騎士団」のリーダー 脇 まとめ 予備予備2 wiki 安価 完結 メダロットUNION メダロット やきしゃけ中学ロボトル部の部長 脇 まとめ 安価 あんこ やらない夫が『最後の竜』を狩るようです セブンスドラゴンIIIcode VFD ブラスターレイブン役 脇 まとめ エター やる夫は怪物料理の名コックのようです オリジナル 誠の側近の、吸血鬼 脇 まとめ 完結 49歳のやらない夫は妻からメカ娘を託されたようです Z.O.E Dolores, i ナフス・プレミンジャー役 脇 まとめ 完結 ヤルオとDioは逃げるようです オリジナル エッダ教国の教皇 脇 まとめ やる夫Wiki エター 短編 タイトル 原作 役柄 リンク 備考
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UNION ARENA参戦タイトル① コードギアス 反逆のルルーシュ 圧倒的な攻撃力を誇るため環境デッキが多数存在 アタック時にBP3000以下の他のカードを1枚アンタップする枢木スザクや、必要エナジーが8と高コストだが圧倒的な盤面制圧力を持っているランスロット・エアキャヴァルリー、ルルーシュ・ランペルージが場にいる事で強化される紅蓮弐式や、登場時に相手のフロントラインBP-1000し相手のBP2000以下はブロックできないガウェインなど火力重視のカードが多く存在する超攻撃型タイトルです。 各色のエース級カードを下記に紹介します。 赤 枢木スザク BP4000 必要エナジー4 AP1 レイド|〈枢木 スザク〉アクティブにし、フロントLに移動できる インパクト① アタック時|ターン1|BP3000以下の自分の場の他のキャラ1枚まで選び、アクティブにする トリガー:レイド(このカードを手札に加えるか、必要エナジーを満たしている場合、レイドさせる) 自身がインパクトを持っているため確実に相手のライフを削りつつ、場のBP3000以下1体をアクティブにする効果によりアタック回数を確実に伸ばせる点が魅力。 このカードをサポートするカードとして、レストにする事で場のBP3000以下のキャラにこのターン中BP+1000とインパクト①を付与するナナリー・ランペルージや、このターン中に場に出したキャラを1枚アクティブにするアッシュフォード学園が挙げられます。相手のライフが4以下になったらホラーハウスは相手のBP5000以下のキャラも退場できるようになるため、速攻を仕掛けることで勝ちをもぎ取る環境デッキです。 デッキ詳細は赤スザクデッキへ C.C. BP4000+ 必要エナジー4 AP2 自分の場外にある[特徴:ピザ]の枚数により、このキャラは以下の効果を全て得る ・2枚以上:このキャラはアクティブで場に登場させる ・4枚以上:インパクト① ・6枚以上:自分のターン中このキャラはBP+1000と2回アタック トリガー:ゲット(このカードを手札に加える) 自分の場外にあるピザの枚数によりインパクトや2回アタックといった強力な効果を得られる大器晩成型エース。 特徴:ピザである宅配ピザや巨大ピザをいかに速く場外に送れるかが、勝利のカギとなります。ガニメデやルルーシュ・ランペルージは登場時に山札の上から7枚をサーチしてピザを回収することができるため、積極的に出していきたいです。また、場外に3枚以上イベントカードがあれば効果が強化されるチェス勝負も相性が良いカードになります。 デッキ詳細はピザデッキへ 緑 ランスロット・エアキャヴァルリー BP5000 必要エナジー8 AP1 ダメージ② レイド|〈枢木 スザク〉アクティブにし、フロントLに移動できる インパクト① 登場時|BP5000以下の相手のフロントLのキャラを1枚まで選び、退場させる トリガー:レイド(このカードを手札に加えるか、必要エナジーを満たしている場合、レイドさせる 必要エナジーが8と出すまでに時間がかかるが、それに見合う以上の盤面をひっくり返すほどの性能を持っているカードになります。登場時に相手のフロントLのBP5000以下のキャラを1枚退場させるので、相手の邪魔なキャラを除外しつつダメージ②かインパクト①をBP5000から押し付けていけるのが強みです。 序盤はV.V.やセシル・クルーミー、ユーフェミア・ブリタニアでエナジーを貯めつつ、ロイド・アスプルンドでサーチを行います。中盤はランスロットやジェレミア・ゴットバルトで相手の勢いを止めつつ、ランスロット・エアキャヴァルリーで試合を制するのが黄金ルートとなります。 デッキ詳細はランスロットデッキへ グロースター(コーネリア機) レイド|〈コーネリア・リ・ブリタニア〉アクティブにし、フロントLに移動できる 登場時|自分の山札の上から5枚見る。その中から必要エナジーが2以下で消費APが1の緑のキャラカードを1枚まで自分の場にレストで登場させる。残りを望む順で自分の山札の下に置く トリガー:レイド(このカードを手札に加えるか、必要エナジーを満たしている場合、レイドさせる) グロースター(コーネリア機)やコーネリア・リ・ブリタニアの登場時効果でAP消費なしで次々と場にキャラを貯めていき、自分のフロントLにキャラがいるほ強化されるグロースター(親衛隊機)と組み合わせて使っていくデッキになります。他にも場の特徴:神聖ブリタニア帝国すべてのBP+1000しつつ、1枚にインパクト①を与える強力なイベントのオールハイルブリタニアをうまく使いこなす事が勝利のカギとなります。 デッキ詳細は神聖ブリタニア帝国デッキへ 紫 紅蓮弐式 レイド 〈紅月 カレン〉アクティブにし、フロントLに移動できる 登場時|自分の場にルルーシュ・ランペルージがある場合、このキャラはこのターン中、「相手はこのキャラのアタックを可能ならブロックしなければならない。」とインパクト①を得る トリガー:ゲット(このカードを手札に加える) 紅蓮弐式 レイド 〈紅月 カレン〉アクティブにし、フロントLに移動できる 登場時|BP3000以下の相手のフロントLのキャラを1枚まで選び、退場させる。このキャラはこのターン中、インパクト①を得る。 トリガー:レイド(このカードを手札に加えるか、必要エナジーを満たしている場合、レイドさせる) ガウェイン レイド|〈ルルーシュ・ランペルージ〉/〈C.C.〉アクティブにし、フロントLに移動できる このキャラはBP2000以下のキャラにブロックされない 登場時|相手のフロントLのキャラ全ては、このターン中、BP-1000 トリガー:レイド(このカードを手札に加えるか、必要エナジーを満たしている場合、レイドさせる) 2種類の強力な紅蓮弐式の登場時効果を上手に使い分けて相手のキャラを退場させつつインパクトを押し付けながら、ガウェインで相手のBPをダウンさせながら弱いカードにはブロックできないためゴリゴリとライフを削っていくデッキになります。 序盤はレイド元である紅月カレンやC.C.、ルルーシュ・ランペルージで手札と盤面とエナジーを温めつつ、中盤~後半にて紅蓮弐式とガウェインで試合の流れを引き込む形となります。また、絶対順守のギアスは相手のほとんどのキャラを場外に送ることのカードなので積極的に使っていきたいカードです。 デッキ詳細はゼロカレンデッキへ 月下(藤堂機) レイド|〈藤堂鏡志朗〉アクティブにし、フロントLに移動できる 起動メイン|フロントLにある場合|ターン1|自分の場の[特徴:四聖剣]全ては、このターン中、BP+500 アタック時|ターン1|自分の場の[特徴:四聖剣]を1枚まで選び、アクティブにする トリガー:レイド(このカードを手札に加えるか、必要エナジーを満たしている場合、レイドさせる) 藤堂鏡志朗と月下(藤堂機)の起動メインで自分の場の特徴:四聖剣を強化し、自身と味方をこのゲームの肝となるBP4000ラインに乗せて勝負するキャラになります。月下(藤堂機)のアタック時効果により、自分の場の四聖剣が二回攻撃することが可能になるので、BP2000以下にブロックされずに軽い条件でインパクト①を得られる月下(四聖剣機)を選べるとより強い状況を生み出すことができます。 デッキの詳細は四聖剣デッキへ
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『コードギアス 反逆のルルーシュ』(コードギアス はんぎゃくのルルーシュ、CODE GEASS Lelouch of the Rebellion)はサンライズ制作の日本のSFロボットアニメである。 2006年10月よりMBS制作・TBS系列(JNN)10局で放送され、2007年9月以降JNN系列16局の放送で、地上波26局のネットとなり(放送局を参照)[1]、BS-i(現・BS-TBS)でも放送されていた。 そして、2008年4月より続編となる『コードギアス 反逆のルルーシュR2』がMBS制作・TBS系列日曜夕方5時枠全国ネットで放送された。(wikipedia) ▼参戦機体 紅蓮弐式 ガウェイン
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Stage 10 紅蓮 舞う あらすじ スタッフ 脚本:大河内一楼 コンテ:谷口悟朗、須永司、村田和也 演出協力:村田和也、秋田谷典昭、三好正人、三宅和男、鳥羽聡、工藤寛顕、馬場誠 作画監督:千羽由利子、中谷誠一、佐光幸恵、山根理宏、しんぼたくろう、高瀬健一、高橋晃、坂本修司、前田清明、木村貴弘 色彩設計協力:熊谷妙子 美術ボード:菱沼由典 キャスト ルルーシュ:福山 潤 ナナリー:名塚佳織 C.C:ゆかな スザク:櫻井孝宏 皇帝:若本規夫 クロヴィス;飛田展男 コーネリア:皆川純子 カレン:小清水亜美 永田:私市淳 リヴァル:杉山紀彰 ルルーシュ(子供):大原さやか スザク(子供):渡辺明乃 隊長:堀之紀 貴族:徳丸完 泉:坂東尚樹 書記長:菅原淳一 ラズロー:川津泰彦 レビュー →トップページに戻る Stage 10「紅蓮 舞う」はおもしろかった? 選択肢 投票 ★★★★★ (28) ★★★★ (0) ★★★ (0) ★★ (0) ★ (0) コメントはこちら 名前 コメント すべてのコメントを見る -
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true tears SS第十六弾 第十二話の妄想 前編 「きれいよ、あなたの涙」「何も見てない私の瞳から…」 「キスしてもいいか?」 第十二話の予告と映像を踏まえたささやかな登場人物たちの遣り取りです。 妄想重視なので、まったく正誤は気にしておりませんが、 本編と一致する場合もあるかもしれません。 本編に出て来た伏線を回収してみたいなと思います。 石動純は登場しますが、乃絵にキス発言をします。 明るい展開を心掛けているので、良識のある登場人物ばかりになりました。 最後に今回の絵本である『雷轟丸と地べたの物語』の解釈を記述しておきました。 眞一郎は乃絵を見つける。 いつも『雷轟丸と地べたの物語』という絵本を読んでもらっている岬であり、 乃絵に別れの言葉のようなものがあった場所だ。 『あなたが飛ぶところはここじゃない』 眞一郎は乃絵に近づく。 「乃絵」 眞一郎の声に振り返ってくれる。 懐には地べたがいて、首を動かしている。 「絵本を読んで欲しい。 一応は完成したから」 眞一郎はスケッチブックを両手で手渡す。 乃絵は受け取って、声を出して読む。 「次の日は雨でした。 横で地べたが羽をバタバタと羽ばたかせていましたが、 雷轟丸は悠然としていました。 何と十メートルの丘の上に朝日を背に向けた地べたのシルエットが、 すくっと立っているではありませんか。 鶏としての最初の飛翔、その失敗による最初の栄光は地べたのものでした。 雷轟丸はただ臆病な鶏たちの中のただの一羽に過ぎませんでした。 おわり」 乃絵は深く刻むように両目を閉じている。 「これが眞一郎の答えなのね」 神妙な顔で見つめてくる。 「まだ決まっていないが、今の俺にはここまでしか書けない」 「そう。ようやく絵本が現在に追いついたのかもしれないわ」 絵本を地面に降ろしてから、乃絵は海の方を向いて地べたを掲げる。 「地べた、飛んで見せて、眞一郎に新しい展開を浮かばせるために」 乃絵は天空に向けて生贄を捧げるようだ。 眞一郎はその姿にいたたまれなくなり、乃絵にしがみ付く。 「そこまでしなくていいんだ。乃絵を追い詰めたのは俺のせいだ」 夢中で乃絵を抑えようとする。 眞一郎は乃絵がここまで悩み苦しんでいるとは思っていなかった。 乃絵と会わないでいられないことがわかっているからこそ絵本を完成させようとしていた。 全部ちゃんとするからと、比呂美に誓ってからでもだ。 乃絵は振り返って、地べたを降ろしてから眞一郎に言う。 「きれいよ、あなたの涙」 乃絵は小瓶を出してから、眞一郎の右目の涙を右の人差し指で拭う。 「大切な人とは俺のことなのか……?」 乃絵に何もしてあげられていない自分が選ばれるとは思っていなかった。 「そうね。でも泣けないわ、私」 まだ不満げな眼差しをしている。 「どうすれば泣けるようになるのだろうな」 泣けなくなった天使にすがってみた。 眞一郎の絵本から出てきたような乃絵に救いを求めた。 「何も見ていない私の瞳から…」 乃絵は心の底から震える声を発した。 通常の会話では用いられないような詩的な表現だ。 何も見ていないとは、いつもは何かを見ていた。 眞一郎と付き合っているので、見ていたのは眞一郎。 それなのに見ようとしないならば……。 もしかして見たくはないものかもしれない。 乃絵が目を逸らしたくなるものといえば……。 「比呂美……」 眞一郎はふと洩らしてみた。 「雷轟丸は眞一郎で、地べたは湯浅比呂美。 私は地べたになろうとしていたわ。 温めてあげたり餌をあげたりしてね。 そうすることで眞一郎の心の中に入って、絵本の中の地べたが私になるかもと思って」 乃絵の独白は淡々としていて、いつもの絵本を読んでいるようだった。 「俺は比呂美のことを描いていたのか?」 眞一郎は絵本をめくってみる。 ざっと目を通しただけでも、乃絵の解釈が一致することがわかった。 「私はふたりのことを詳しく知らないわ。 でも地べたが飛翔したがっているのはわかる。 友達のいない私でも、湯浅比呂美が仲上家を出て一人暮らしをしていることをね。 雷轟丸はまだ飛ぶのを諦めてしまってる」 神託を与えるように澄んでいて、眞一郎の身体を覆ってくれている。 「そんな絵本を乃絵に見せていた……」 眞一郎は暗い話ばかりを描いていたので、いつか明るいものを描きたかった。 二羽の鶏ならば明るく導いてくれるかもしれないと想いを込めていた。 もう一冊の絵本でも乃絵の発言の影響を受けてはいるが、 「雪の海」という比呂美の言葉から新展開をされつつある。 「楽しい日々だったわ。私と親しくしてくれたのは眞一郎だけだったから。 さっきまで飛ぼうと考えていたけど、やめるわ」 乃絵は地べたを捕まえて懐に戻した。 乃絵の飛ぶという意味を訊こうとは思ったがやめた。 不吉な予感が脳裏をかすめたからだ。 「俺のすべきことがわかった」 乃絵のところではなく、比呂美のところへ飛んで行きたい。 「帰りましょう。地べたを戻してあげないと。 迷惑を掛けてごめんなさい」 乃絵は深々と頭を下げた。 「俺が乃絵を放っていたから」 乃絵の態度が意外ではあった。 何かいつもと雰囲気が異なっていて、大人になったようだ。 無邪気な笑みが無くなったようで寂しくはある。 「少し泣けそうな気がしてきたわ」 宙を見つめる目に涙は浮かんでいない。 * 乃絵は地べたを侘びながら鶏小屋に戻した。 眞一郎と石動家に向っている。 「明日は祭りだ。乃絵も来てくれよな」 眞一郎は急に話題を振ってきた。 「行ってもいいの?」 もう別れたようなものなのに誘ってくれている。 比呂美のところに行ってから、戻って来ることはなさそうだと覚悟していた。 「せっかく今まで麦端踊りを練習してきたんだ。 乃絵にも見てもらいたい」 すがすがしくて吹っ切れたような笑顔。 あれだけうまく踊れていたのだから自信があるのだろう。 「行くよ、絶対に」 落ち込んでいた気持ちが薄らいでゆく。 家の前では純がいて待っているようだ。 先に眞一郎の携帯電話で乃絵が連絡しておいたからだ。 「すまない。乃絵がお世話になった」 深々と丁重に頭を下げていた。 「俺にも責任があるから」 「私がすべて悪いの」 乃絵はふたりの罪をなくしてあげたかった。 湯浅比呂美の真似をするかのように逃げ出してしまった。 そうすれば何かが変わるような気がしていた。 だが手ごたえはなく、地べたである比呂美のように飛翔しても墜落するだけだった。 「乃絵、何かいつもと違う気がする」 「そんなことはないよ」 「俺も変わったと思う。乃絵はだんだんと会うたびに違ってた」 純だけでなく眞一郎まで変化を評価していた。 乃絵自身にはよくわからないが、否定をしようとはしなかった。 「湯浅比呂美に別れを告げられている。後はそちらで好きにすればいい」 純の突然の告白に、眞一郎は口を開けてしまった。 「交流戦でコートに入って悪質なファールを比呂美にしていた蛍川の選手を、 叱っていたのは比呂美のためではなかったのかよ」 眞一郎が比呂美に訊こうとしていて、眞一郎の部屋の前ですれ違ってしまった。 「あいつのためでもあるが、振られたのはその後だ。 ああいうプレイは根っから嫌いでね、麦端との関係を悪くする」 純は口元を歪めていたのはプレイ内容に対してのようだ。 比呂美に振られた悔しさがあまり感じられない。 「そろそろ帰る。比呂美には俺が連絡する」 眞一郎が背を向けて去って行くのを、見えなくなるまでふたりは佇む。 「乃絵は抱き付いて来なくなったな」 純は素朴な感想を洩らした。 「そうね」 あのバイク事故のときは、抱擁していた。 近くでは眞一郎と比呂美とがだ。 「キスしてもいいか?」 純の言葉は冗談のように軽い 「やめておくわ」 昔ならしていたかもしれないが、今になってしようとは思えない。 「そうだよな……」 純は家の中に入って行く。 乃絵はその姿を目で追う。 * まだ眞一郎は比呂美に連絡をしていない。 どうすればいいか悩んでいる。 乃絵の家出を携帯で知らせてくれたときの比呂美の声は、霞んでいるようだった。 寝起きではなく、儚げで消えてゆきそうな雰囲気があった。 乃絵のほうが生気に満ちていたように思える。 いつもの笑顔になるような対処を考えねばならない。 眞一郎は仲上家の門をくぐる。 自転車置き場に向かい、ニット帽とマフラーをはずす。 右手で運転して、左手には『雷轟丸と地べたの物語』のスケッチブックを抱える。 不安定ではあるが、籠がない自転車では仕方がない。 このまま比呂美のアパートに行こう。 仲上家を出ると、長い坂がある。 速度を出さずにいるが、身体は上下してしまう。 立ち漕ぎはせずに、座っていてもだ。 スケッチブックを落としたくないし、比呂美を乗せたトラックを追ったときのように、 こけたくはない。 『全部、ちゃんとするから』 比呂美に誓った言葉がむなしく頭の中でこだまする。 あれから一週間も経過しても、何もできていないに等しい。 乃絵と会ったのはさっきのが初めてだった。 絵本が完成するまで先延ばしにするのを言い訳にしていた。 さらに別れの言葉は乃絵からで、絵本の本質を見抜かれていた。 比呂美のところへ行くようにも告げられたのも同然だ。 純に対しては比呂美が付き合っていても、 交換条件をこちらから解除を要求するつもりだった。 それなのに純のほうから比呂美を任されてしまった。 コートに入ってまで比呂美を守ろうとした純を見ていられなくて、 眞一郎は背を向けてしまった。 今後は純と対立してでも比呂美を振り向かせようと考えていた。 だが戦う準備をする前に、純のほうから撤退されてしまった。 比呂美に対しては眞一郎の理解を超えているとしか言いようがない。 一週間も経過してから比呂美のアパートを訪れた。 ベーコンエッグを食べてから、冬の海を見たいという比呂美を追い駆けた。 眞一郎が鍵を掛けることで合鍵が手元に残った。 そういう策略をしてくるとは思いもよらなかった。 海岸では比呂美がメガネを外していて、瞳を見ていた。 それから比呂美が近づいて来てキスをした。 お互いが初めてであっても、舌が絡み合った。 眞一郎母と父には、比呂美との交際を認めているかのごとく、 比呂美のことについて訊かれている。 三人での食事であっても口数が増えている。 昨年よりも酒の売り上げが良いようで上機嫌でもあるのだろう。 「すべて、俺が何もせずに与えられたものばかりだ」 ふがいない自分を見つめ直す。 感情的にはならずに冷静にだ。 比呂美のアパートに到着する。 * 比呂美は眠れない夜を過ごしている。 布団の上にいると塞ぎ込んでしまいそうなので、ロフトから降りる。 気分転換にお湯を沸かせて紅茶を飲むことにする。 マグカップを手にテーブルに行って座る。 比呂美が乃絵の家出を電話したときに、眞一郎はすぐに乃絵を探しに行った。 心優しい眞一郎の行為を認めつつも、誰にでも同じことをするのではないかと考えてしまう。 比呂美が逃避行でバイク事故が遭ったときのように、眞一郎は乃絵を抱擁するかもしれない。 嫌な予感ばかりが頭に浮かんでくる。 眞一郎母に言われて、比呂美は眞一郎の部屋に着替えを運んだ。 机の上には『雷轟丸と地べたの物語』という題の絵本があった。 あれはきっと乃絵のための絵本。 比呂美には一枚の絵だけ。 涙を拭いたいという台詞と髪の長い女性の姿から、私かもと思っているだけかもしれない。 乃絵の家出で電話したときにも、絵本を描いていたらしい。 『雷轟丸と地べたの物語』のことを訊こうとしたけれど、かすれてしまった。 「羨ましいな……」 乃絵と比呂美との格差を感じる。 比呂美は幼い頃の思い出から十年以上なのに、乃絵は四ヶ月くらいだと思う。 三十倍もの年月があっても、絵本にされる量は影響されない。 比呂美と眞一郎には夏祭りと進展しなかった仲上家での生活しかなかった。 携帯の画面にいる眞一郎の顔を見る。 今から掛けてみようかと悩む。 もう、何度もしてきた行為。 ふたりの邪魔でもしてみようかと考えてしまう。 最近は眞一郎と親しくなれた反動で嫉妬深くなっている。 もしかして連絡すらもないかもしれない。 たとえ純からであっても欲しい。 着信音が鳴ると、画面には仲上眞一郎と表示される 『比呂美、寝てたか?』 穏やかな気配りのある声。 『まだ寝ていないわ』 『話があるから、部屋に入っていいか?』 眞一郎には合鍵を渡している。 『入れるものならね』 比呂美から電話を切る。 部屋を見回して危ないものを隠す。 特に干したままの下着を仕舞い込む。 ドアを開ける音がするが、眞一郎は何も言わない。 比呂美はドアの前に行って隙間から、眞一郎の顔を覗く。 「チェーンロックをしているんだな。防犯のためだから賛成だ」 「一人暮らしは物騒だって眞一郎くんも言っていたし」 比呂美はにこやかに応じた。 「明日は祭りだから、すぐに帰る。開けて欲しい」 畏まった態度で迫ってくる。 「ちょっと待ってね」 比呂美はドアを閉めてから、チェーンロックをはずして開けてあげる。 「ありがとう」 眞一郎を部屋の中に導いてあげる。 「何か温かい飲み物を用意するわね」 「紅茶がいいな」 眞一郎はテーブルに乗っているマグカップを見ていた。 比呂美はキッチンに行って、お湯を沸かし直す。 マグカップを手にしてテーブルに着く。 「気分が落ち着いてきた」 眞一郎は冬の寒さから開放されたようだ。 眞一郎はコートも脱がずにいる。 あの『雷轟丸と地べたの物語』をテーブルの上に乗せている。 比呂美は一瞬だけ忌々しげに見つめてしまった。 「部屋に入ったときに見られたかもしれないな」 ばつが悪そうに問うた。 「気づいていたわ、中は見ていないけど」 眞一郎の足音がしたので、我に返ってしまった。 もう少し時間があればどうしていたかはわからない。 「できれば読んで欲しい」 真摯な眼差しで眞一郎は両手で手渡そうとする。 「先に石動乃絵と何があったか教えて欲しいわ」 『雷轟丸と地べたの物語』は乃絵のための絵本であるはずだ。 そんなものを比呂美に見せる眞一郎の意図がわからない。 「俺の希望だから、先に報告してもいい。でも報告なら後でもできるし」 絵本も後で読むこともできそうだが、比呂美は受け取ってスケッチブックを開く。 躍動感のある雷轟丸と地べたがいる。 本当に細かく背景までも描かれていて、心を奪われてしまう。 ラストシーンは地べたが墜落してしまうというBADEND。 何て感想を伝えればいいか迷ってしまう。 鶏だから飛ぶのは難しいのか? 絵本であっても現実を受け入れなければならないか? 乃絵はどういう印象を抱いたのだろう。 そもそも普通の感想を求めているのではない。 何か別の意味が含まれているからこそ、先に見せようとしていたはずだ。 眞一郎が身の回りのものを描こうとするのは、比呂美の一枚絵からわかる。 雷轟丸と地べたは鶏であるから物語の展開には、何らかの影響を受けるはずだ。 そう考えると雷轟丸は眞一郎なのだろう。 地べたは誰なんだろう。 乃絵なら比呂美に見せようとはしないはず。 比呂美との決別のために故意ならありえるが、眞一郎の表情からはありえない。 さっきからずっと比呂美の顔色を窺っている。 「地べたは私なのかな? 飛翔はしているけど、失敗しているようなところが」 思い当たるところはある。 引越しはしたものの、眞一郎との関係は比呂美だけが盛り上がっているようなものだ。 合鍵を渡すし、キスも強引と判断されるかもしれない。 「一回目だから、それに続きは書くつもりだ。 俺もさっき乃絵に思い知らされた。 乃絵は地べたになりたがっていたようだけど、俺は比呂美としてしか描けていなかった」 本当に描いているときは自覚がなかったのだろう。 作家よりも読者のほうが作品の本質を理解できる場合がある。 あの乃絵なら友達になりたいという比呂美の嘘を見抜いたからありうる。 「私も続きが読みたいわ。 このままだと雷轟丸も地べたも他の鶏も救われないから」 結末は無理に飛ぼうとしなくてもいい。 みんなが仲良く暮らせれば。 「祭りで何かを悟れれば描けると思う。 それと比呂美はあいつと別れたようだな。 さっき教えられた」 やはり純は乃絵を選んだようだ。 これで交換条件はなくなり、比呂美は自由になった。 眞一郎の言葉からでも乃絵とはうまくいかなかったようだ。 眞一郎が乃絵ときれいに別れられるとは、比呂美は思っていなった。 長引きそうならば、交換条件を乃絵に明かして、ふたりの仲を悪化させようと考えていた。 「私から伝えたわ。 なかなか聞き入れてもらえなかったけど」 「比呂美はうまくできたようだな」 眞一郎はマグカップに口を付ける。 「どういう意味?」 「乃絵とははっきりとした別れの言葉はなかった。 家出をした後だから、さらに追い込むことはできないし……」 苦渋を滲ませる眞一郎の気持ちはよくわかる。 明確に別れの言葉を告げられる状況ではなかったのだろう。 「眞一郎くんもちゃんとできていると思う。 絵本だってしっかりと描けているし」 眞一郎を励ましてあげたいといつも比呂美は考えていた。 あのキスも眞一郎が花形として立派にこなせるのを応援するためでもあった。 乃絵の影がちらついていても、踊りだけはしっかりとこなして欲しい。 「明日のをがんばろう」 「もう今日だけどね」 時計を見ると日付が変わっている。 「そろそろ帰る」 眞一郎は紅茶を一気に飲み干した。 それから絵本に手を置いた。 「この絵本を置いといて欲しいの。 もう一度、読んでみたいし、朝に返すから」 両手を合わせて願う。 こんな行為は今までにしたことがなかった。 漫画に出てくるようなもので、比呂美にとってはありえない動作だ。 「片手で運転するのは面倒だった。 でもこれから酒瓶を自転車で届けたりするかもしれない」 即座に了承してくれていた。 「お手伝いをする気なの?」 「花形として踊っただけで、世間は俺のことを仲上家の人間として認めてくれない。 手伝いくらいはしようと思う。 比呂美だってしているわけだし」 眞一郎の心境の変化に比呂美は反応できずにいた。 比呂美が帳簿を片手にお届け先を教える。 それを受けて眞一郎が運ぶ。 たまには一緒に届けて帰りに買い物をできればいい。 「いいかもしれない」 「比呂美に教わることが多そうだ」 「おばさんに仕込まれているから、私は」 自慢げに微笑んであげる。 以前ならあまりしたくはなくて、わざと帳簿のキータッチを遅らせていたときもあった。 「話が長くなりそうだから、帰る」 眞一郎は起き上がると、比呂美も同様にする。 「絵本は眞一郎くんの部屋に届けるから」 「俺は花形の衣装を着ていそうだ」 当日、眞一郎はまだ比呂美がどういう服装でいるのかを知らない。 眞一郎と玄関で別れることになる。 「おやすみ、比呂美」 「転ばないでね、眞一郎くん」 眞一郎は顔を歪めている。 「一生、言われそうだな」 「うん」 元気良く返事をしてあげた。 「比呂美も転んだように見えたが」 「そんなことはないわ」 比呂美の否定はむなしく響いた。 「言い忘れていたけど、比呂美が電話をくれたときに絵本を描いていたのは別なものだから」 「そうなの?」 「詳しくは今度にする」 眞一郎は扉を開けて、右手を振ると比呂美も応じる。 深夜なのでお互いに声を出さない。 それから眞一郎はゆっくりと扉を閉める。 比呂美はテーブルに戻って、もう一度だけ、『雷轟丸と地べたの物語』を読み始める。 読み終えてから、床に着こう。 乃絵に眞一郎を奪われる悪夢を見なくてもいい。 わざわざ部屋に来てくれて絵本を届けてくれたのだから。 次に繋げてくれるように書き加えてくれるし、他の絵本もある。 素敵な夢を見ながら眠れそうだ。 (後編に続く) あとがき 第十ニ話ということもあり、第十三話である最終回に、 どう繋げるかを意識しなければなりません。 このままきれいにまとめてくるのか、少しくらいは波乱を起こすのかをです。 私の場合はどちらとは断定できません。 いくつもの伏線を回収してゆく都合上、余計なものでも拾いそうです。 さて前回の第十一話では、乃絵と比呂美が朝食を取るという妄想をしてしまいました。 見事にはずしてしまい、単なる願望でしかなかったようです。 一週間を経過をしたとはいえ眞一郎は比呂美のアパートに行ってますし、 比呂美がメガネを掛けている理由も明かされていませんでした。 一致した部分では、比呂美が乃絵の家出で眞一郎が捜索するのに嫌悪感を示すことと、 雷轟丸の絵本の存在を知ってしまい苛立ってしまうことでしょう。 第十一話における比呂美の内面は取り逃してはいませんでしたが、 あれほどまでに嫉妬深くなっているとは思いもせず、 第十二話で頂点に達すると考えていました。 さて第十二話の妄想では、はっきり言って正答率は低くなるでしょう。 かなり難解で、もう一つくらいSSを再構成できそうなほどです。 前編では祭り前夜での行動を描いてきました。 公式の画像にある比呂美が頬を染めるようにするためには、 あの嫉妬深い表情を一掃しなければなりません。 まずは乃絵ですが、解釈に悩まされます。 眞一郎と別れるとまではいかなくても、距離を置かれるようにはなるでしょう。 乃絵は眞一郎の心の中に比呂美がいるのを理解していますので、 眞一郎を比呂美のところへ飛ばします。 地べたを掲げる行為やタイトルコールや予告の台詞などが複雑に絡んできています。 さらに乃絵が泣けるようになる布石も考慮せねばなります。 最大の謎は、『雷轟丸と地べたの物語』の解釈と今後です。 詳しくは後述してあります。 純についてです。 キス発言が誰にするかで悩まされます。 声が軽いので冗談のようには聞こえます。 公式のあらすじどおりだと、乃絵になるようなので合わせてみました。 キスをするほどの仲なのかはよくわかりませんし、言われた乃絵の対応も不可解です。 比呂美に対してでもありうるのですが、 邪険にされているのを自覚している純はしないかもしれません。 個人的には純が決別の意思を示すためにして欲しくはあります。 それを比呂美が受け入れて、微笑んで拒絶するという大人の対応をして欲しいのですが、 眞一郎以外の男には興味の無い比呂美には困難です。 いつか比呂美の新人戦で会話くらいはできればと期待しています。 私が乃絵にキス発言にした理由は後編で描きます。 眞一郎についてです。 第十話での自転車での疾走、第十一話での及び腰という真逆といえる行動を、 第十二話ではどうするのかは想像しにくいです。 乃絵には別れの言葉のようなことがあり、純からは比呂美を任され、 比呂美は行動力を発揮しています。 眞一郎以外の登場人物のほうが、自分自身と向き合っています。 そういう状況に追い込まれつつも、ようやく眞一郎は比呂美のために果たそうとします。 公式のあらすじの画像での眞一郎の苦渋な顔をしているのは、そのためでしょう。 注目すべきは眞一郎の姿勢です。 背中が少し見えているのは前屈みになりつつあるからでしょう。 それとニット帽とマフラーを取っているのは邪魔になるからです。 よって自転車で比呂美のアパートに向わせました。 比呂美についてです。 第十一話では積極的でしたから、第十二話の前編では報告待ちという受身です。 乃絵の家出についての眞一郎から連絡があればと考えているでしょう。 比呂美として最高の形である眞一郎の訪問と交換条件の解消でふたりが自由になること、 さらに『雷轟丸と地べたの物語』について知らされること。 それらを満たしてみました。 特に『雷轟丸と地べたの物語』では地べたが比呂美であるなら、 比呂美が読んで欲しいという願いもあり、今後のふたりのために結び付けました。 ここまでされると比呂美は祭り当日に決意をして着付けができるでしょう。 この状態から後編に続きます。 予告としましては、あの人が鍵を握っています。 そのためのフラグを立ててきたのでしょう。 でも大きくはずす妄想になりそうな気がします。 あの人の評価が急上昇か急降下かの両極端になるでしょう。 ご精読ありがとうございました。 絵本の解釈 『雷轟丸と地べたの物語』 次の日は雨でした。 何も行動ができていない日のこと。 横で地べたが羽をバタバタと羽ばたかせていましたが、 地べたである比呂美は、何かをしようと考えていた。 雷轟丸は悠然としていました。 雷轟丸である眞一郎は、兄妹疑惑が晴れて、喜んでいて、比呂美に何もしなかった。 これで比呂美との仲を深められるが、具体的な行動をしていなかった。 何と十メートルの丘の上に朝日を背に向けた地べたのシルエットが、 すくっと立っているではありませんか。 地の底が仲上家であるなら、丘はそれを越えた場所のこと。 今回は、比呂美の一人暮らしを意味している。 実際は資金が仲上家から出ており、すぐに行ける場所でもある。 鶏としての最初の飛翔、その失敗による最初の栄光は地べたのものでした。 引越しによる飛翔をしたけれど、うまくは行っているようには見えない。 純とも別れられていないし、眞一郎との繋がりも深まっていない。 合鍵やキスが強引とも言える行為であり、お互いの気持ちを確かめ合えていない。 雷轟丸はただ臆病な鶏たちの中のただの一羽に過ぎませんでした。 雷轟丸はその他の鶏のように何もできていない。 その他の鶏とは他の登場人物も含まれており、何らかの成果を挙げている者がいない。 おわり 眞一郎が考えられる物語がここまでであるということ。 絵本の展開が本編の現在に追いついたために、眞一郎には地べたの行動を予測できていない。 その後に乃絵が地べたを掲げて展開させようとする。 祭りなどのイベントで書き足すか書き直される可能性がある。 最初と書かれていて、次回が無いというのも不自然である。 絵本の解釈は人それぞれ。 雷轟丸は眞一郎というのは大半の意見だろう。 地べたが誰なのかで、複数の解釈ができる。 だが一つ一つの事象を本編に会わせてゆくと比呂美の可能性が高くなる。 今回は特に地べたが飛翔するので、乃絵では特に大きなイベントはなかった。 よって地べたは比呂美となりやすい。 そもそも眞一郎は身の回りの出来事を自分が感じたことを記述するという心象表現。 今の眞一郎の境遇では暗い話になりがちで明るくは描けない。 もう一冊の比呂美の絵本では、眞一郎の願望が混じってくるので前向きになりそう。 これから比呂美との仲を深めてゆくには必須の小道具となりうる。 やはり絵本を告白の材料にする可能性はあるが、祭りが第十三話まで入り込んで、 告白が祭りの最中というのはありうる。 いつか後日談として比呂美が自分向けの絵本を見るというイベントはあるはずだ。 第十一話での「雪の海」という比呂美の発言は、眞一郎の発想を刺激しているだろう。 比呂美からの電話のときに言っていた絵本とは、比呂美向けのほうだろう。 さすがに雷轟丸のほうだと眞一郎は隠そうとするはずである。 雷轟丸のほうは一度でも乃絵にBADENDでも見せようという発言を眞一郎はしている。 今後は書き足すか書き直すかという展開はありうる。 祭りの最中で感じた雷轟丸の眞一郎と地べたの比呂美との想いを加えるだろう。 絵本については本編では詳しく解説すらもされない。 いつか設定資料集などが発売されるのを期待する。 ここで小話を一つ。 比呂美の一人暮らしをするというのが、雑誌によるネタバレがされたときに、 地べたの比呂美が飛んで、雷轟丸の眞一郎が置いてけ堀をくらうという予想をしていた。 書き直すことも視野に入れていた。 今回の絵本は、おわりとしてあるが、続きを書く可能性はある。 このまま地べたが比呂美であるなら、後味が悪いし、最初の飛翔だからだ。 読者の想像に任せて、あのまま地べたは死亡したのか、立ち上がるのかという判断を、 委ねてくるのか、かなり興味がある。 それと眞一郎父に雷轟丸の絵本を見せるには抵抗のある態度を示していた。 比呂美のほうが書き上がっていないからという意味もあるかもしれない。 眞一郎は地べたが比呂美として描いているとは自覚していないだろう。 それでも乃絵に見せるのは、現実を受け入れさせるためである。 なかなか超えることのできない高い丘があり、飛び立つことの困難なのを表現している。 たとえ絵本の中であっても、安易に飛んで見せることは眞一郎にはできない。 ならば眞一郎が乃絵の前で踊ることで飛んでみせる必要がある。 といっても飛ぶというのは踊りを成功させることである。 だが乃絵も受身になることはなく、現実で深い繋がりを築こうとする意思が必要である。 それは乃絵が祭りに参加するときに求められてくる。 乃絵にとって飛ぶことは、今の自分が狭い世界に留まっているのではなく、 人との交流ができる広い世界に行けるようになることだろう。 その導き手は一人しかいない。 前作 true tears SS第一弾 踊り場の若人衆 ttp //www.katsakuri.sakura.ne.jp/src/up30957.txt.html true tears SS第二弾 乃絵、襲来 「やっちゃった……」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4171.txt.html true tears SS第三弾 純の真心の想像力 比呂美逃避行前編 「あんた、愛されているぜ、かなり」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4286.txt.html true tears SS第四弾 眞一郎母の戸惑い 比呂美逃避行後編 「私なら十日あれば充分」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4308.txt.html true tears SS第五弾 眞一郎父の愛娘 比呂美逃避行番外編 「それ、俺だけがやらねばならないのか?」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4336.txt.html true tears SS第六弾 比呂美の眞一郎部屋訪問 「私がそうしたいだけだから」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4366.txt.html true tears SS第七弾 比呂美の停学 前編 仲上家 「俺も決めたから」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4403.txt.html true tears SS第八弾 比呂美の停学 中編 眞一郎帰宅 「それ以上は言わないで」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4428.txt.html true tears SS第十弾 比呂美の停学 後後編 眞一郎とのすれ違い 「全部ちゃんとするから」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4464.txt.html true tears SS第十一弾 ふたりの竹林の先には 「やっと見つけてくれたね」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4523.txt.html true tears SS第十二弾 明るい場所に 「まずはメガネの話をしよう」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4585.txt.html true tears SS第十三弾 第十一話の妄想 前編 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4598.txt.html 「会わないか?」「あなたが好きなのは私じゃない」 「絶対、わざとよ、ひどいよ」 true tears SS第十四弾 第十一話の妄想 後編 「やっぱり私、お前の気持ちがわからないわ」 「うちに来ない?」(予想) ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4624.txt.html true tears SS第十五弾 眞一郎の比呂美の部屋深夜訪問 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4688.txt.html
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コードギアス亡国のアキトはコードギアス反逆のルルーシュの後継作品。こちらはOVAアニメで公開され、漫画や小説などのメディアミックス展開がされている。 物語のあらすじ 皇暦2017年、日本が神聖ブリタニア帝国に占領されてから7年が経過した。日本がブリタニアの植民地「エリア11」としてブリタニアからの圧政を受ける日々を送る中、時を同じくしてE.U.(ユーロピア共和国連合)もヨーロッパへ侵攻するユーロ・ブリタニアとの激しい攻防を繰り返す中で徐々にその力を弱めていた。そんな中、E.U.はイレヴンの少年少女たちによって構成される特殊部隊「wZERO」(ダブルゼロ)を編成する。しかし、「wZERO」の少年たちは市民の戦死を避けたいE.U.の意向により、使い捨てとして最前線に送り出される運命にあった。「wZERO」に所属する日向アキトは、守るべき国も居場所もない状況の中、生存率の低い戦いに身を投じていく。 登場人物 日向アキト レイラ・フォン・ブライスガウ 佐山リョウ 香坂アヤノ クラウス・ウォリック など アサシン・零先生の亡国のアキト アサシン・零先生の亡国のアキトはルルーシュ達、黒の騎士団とwZEROが対決できるような姿勢と立場で書いた為、OVA版より長くなったとされている。後のコードギアスルルーシュVSアキトでのバトルシーンが多くなり、レイラとルルーシュのギアス対決のシーンを作るために結構、ストーリーを変えたそうだ。